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Tank & The Bangas - Green Balloon:Disc Review without Preparation

タンク・アンド・ザ・バンガス『グリーン・バルーン』

Tiny Desk Concertで一気に話題になったニューオリンズ出身のバンド、タンク・アンド・ザ・バンガスの作品は、歌とラップとポエトリーを操るタリオナ・タンク・ボールを彩るファンタジーとリアリティが混在する多彩な楽曲が素晴らしい。シアトリカルなのに音楽として自然で完成度高い。

タリアナの歌を聴くと、最近だとノーネームとか、ネオソウルだとジル・スコットとかフロエトリーみたいなポエトリー経由のフィリーのボーカリストとか、いろんな人を思い浮かべるけど、共通点はありつつも彼女のスタイルは圧倒的にオリジナルだと思う。

タンク・アンド・ザ・バンガスのサウンドもネオソウルを消化しつつ、セカンドライン的なニューオーリンズぽさが顔を覗かせたり、トラップのリズムがあったりと個性的で、演奏も上手い。

楽曲の構成も変わっていて、「映画音楽」じゃなくて「映画」ぽいっていうか、「アニメ映画」ぽいっていうか。とはいえ、「映像作品のための音楽」と言うよりは、「映像の一場面」ぽい感じがある。彼らは自身の音楽に関して、ビデオゲームからの影響みたいな話もしてたけど、それもわかる気がする。音楽にヴァーチャルな感覚があり、「画面の中」感っぽい感覚がある。

タリアナのボーカリストの表現として、声色や発声もだし、ラップやポエトリーや台詞的な言葉とかも含めて、全て音楽として昇華する感じ、というか、何やっても音楽になる豪腕感さえあってほんとうに凄すぎる。ネイ・パーム的な桁違いの才能とも感じる。

この『Green Baloon』を聴いていると、ネオソウルを別次元に引き上げるというか、拡張しまくってほぼ別のジャンルにメタモルフォーゼさせたという意味では、ハイエイタス・カイヨーテの『Choose Your Weapon』が与えたヒントって想像以上に広くシェアされてるんじゃないかとも思った。タンクもハイエイタスもビデオゲームからの影響に言及しているけど、それだけじゃなくて場面を切り替えるように音楽が変わっていく感じをリズムやハーモニーなどの音楽的な変化によるフィーリングと響きの変化をうまく使ってやる感じとか、ハイエイタス・カイヨーテとの共通点はいろいろある気がする。

あと、最近、ボーカリストに関して、レイラ・ハサウェイの影響みたいなものを感じることが時々ある。レイラは技術的に雲の上感あるけど、最近のボーカリストはそこにも手をかけていて、チャレンジできるくらいスキルが上がっている感じがする。あまり顕在化してないけど、これからの予測くらいの感じで、もっと影響力が増しそう。タリオナ聴いてそんなことを思った。(2019/05/03)

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