一月 ②

十四日 ママと人生の話をした。母にとって娘の幸福は最優先事項なのだということが真っ直ぐに伝わって来る優しい声、他の人の助言とは少し視点が違って誰の言葉よりも暖かい。今思ってみるとわたしの数年先を案じる癖はママから受け継いだように思う。多分、ママは「ああしておけばよかった」という類の後悔が心底嫌いで、そう思わないための対策という対策を打っておく、そうやって生きてきて、わたしのこともそうやって育てたのだなということが何となくわかってきた。それはもう見事にわたしの人格形成に影響を与えていて、勉強や習い事で人一倍忙しい毎日についても「しょうらいのため」ということを子供ながらに受け入れていた。母の配慮が功をなしたことは数えだしたらきりがない。誰もがしなくて後悔することをしてきたのだからある意味当たり前の話で、事は以外と単純だ。毎日せっせと日焼け止めを塗ってもらっていたから、やや驚かれるくらいに肌が白いし、ずっと英語の勉強をさせてもらっていたから、今ある程度形になっている。同じものを長く使うよう教えられてきたから、6年目になるアルマーニのコートも変わらぬ品格を湛えて公の場に怯むわたしを支えてくれる。もちろん薬局で安い化粧品を買ってみたり、前髪を作ってみたり、友達と夜遅くまで遊んだり、その他数かぎりない「浅はかな行動」もたくさんしてきて、それはもう何度も怒られて、怒られて、悔しくて泣いたこともあった。母の判断は正しかったに違いないけれど、それを理解できない時期だってあったのだ。とはいえ、紆余曲折を経て、母によく似た考え方をするようになった自分を省みると、血は争えないのだなと思えて可笑しい。母は母として不完全でも、わたしにとっては結局、「完璧なママ」なのであった。

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