一般の人にグレゴリオ聖歌をどうやって伝える?

フォンス・フローリスの渡辺研一郎さんのグレゴリオ聖歌基礎講座を受講しています。

私は以前、ジャーナリスト・メディアのための学校に通っていて、取材して記事を書いたりビデオを作ったりしながら、一般の人にわかりやすく、かつ正確に情報を伝えることをずっと考えていました。そのことは、今の仕事(国際広報)でも重要ですし、仕事以外でも誰かにわかりやすく伝える能力は大事なことと思います。(というか、「誰も取り残されないようにしたい(=おせっかい)」という自分の性格が大きいのですが)

なので、グレゴリオ聖歌を学ぶことになったとき、「これを一般の人にどうやって伝えるのか」と1年生の時から考えていました。クリスチャンでない人がミサに行くのはかなりハードルが高いし、日本でグレゴリオ聖歌を日頃からやっている教会はあまりない。でもグレゴリオ聖歌に興味があって歌ってみたい人はたくさんいる。渡辺さんの講座は一般向けの基礎編ということもあって、「一般の人にグレゴリオ聖歌をどう教えて・伝えていくのか」のヒントになるかと思い、受講しました。

講座では「神のお告げ」の祝日の晩課で使われるアンティフォナと詩篇唱を中心に、この日に歌われる讃歌、マニフィカート(これは晩課はいつも唱える)、この祝日のミサの固有唱、通常唱などを学びます。

「神のお告げ」は受胎告知のことで、3月25日がその祝日となります。受難・復活節の頃でもあるので、もし、聖週間に3/25がある場合は復活節第2週の月曜日に移動する、3/25が日曜の場合は主日のミサを優先する(大体四旬節なので、四旬節の主日が優先される)、修道会の意向等で、必ずしも3/25にやるわけではないようです。(参考:聖パウロ女子修道会のサイト)ちなみに2024年3月24日は枝の主日、25日は聖月曜日なので、神のお告げの祝日は復活節第2週の4月8日月曜日となります。

練習法は一般的なやり方ですが、まずはラテン語で意味を確認しながら読ませ、次にネウマを意識しながら読むと、それっぽくなってきます。そしてドレミで歌わせ(一般向けなのでさすがにヘクサコルドではやらない)、歌詞をつける。ネウマも難しいものは使わず(それでも少し難しいものは出てきますが)、専門用語もなるべく使わないようにして、そしてキリスト教成分を薄めに説明されていました。(このあたり、市民講座とかだとさじ加減が大事になるだろうなと思います)

そして、賛歌のAve maris stella(めでたし、海の星)の解説を聞いたのですが、これには感動してしまいました。第1節についてほかの節で細かく説明しているなんて、しょっちゅう歌っていても全然気づかなかったです。そして、第2節の"Ave"は、「Evae をひっくり返した”Ave”をガブリエルから受けた」、という解釈でした。この第2節はいつも引っかかっていたのですが(調べるのを怠っていただけ)、講座の後、学校に行き晩課でこの賛歌を歌った時に、ようやく意味を感じながら歌うことができました(この講義があったのは10月で、ロザリオの月なので賛歌はAve maris stellaでした)。渡辺さんは「神学的なことは専門外なので」とおっしゃいますが、すごく勉強されているのが見られ、この解説を直接聞けたのは大きな収穫でした。

渡辺さんは今年(2023年)の9月にポーランドで行われた国際グレゴリオ聖歌学会に参加されました。この時のテーマが「聖務日課」で、イタリアの子供たちにどうやってグレゴリオ聖歌を教えているかの実例紹介もあったそうです。渡辺さんは大いに刺激されたそうで、いつも楽しそうに学会の様子を話してくださいます。

渡辺さんからの学びと、歌い方については櫻井元希さんからの学びと、私が学校で学んだり、毎週参加しているグレゴリオ聖歌で奉唱されるミサや聖務日課のことをまとめて、自分なりの伝え方を模索したいと思います。

フォンス・フローリスでは最後に発表会があります。この講座、実は20名近く参加者があるので、発表会では修道士のように2つに分かれて、実際の聖務日課のようにしてみようかという話も出ていて、とても楽しみです!