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as mad as a hatter ハッターのように気が狂っているとは?

「不思議の国のアリス」に出て来る
帽子を被ったキャラクターをご存知でしょうか?

近年だとティム・バートン監督の2010年と16年の映画
『アリス・イン・ワンダーランド』で、ジョニー・デップが演じていたあの奇抜なキャラクターです。

アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅 2016年

この映画では、「タラント・ハイトップ」(Tarrant Hightopp) という名前で、「赤の女王」によって滅ぼされたHatter ハッターの末裔という設定に。

小説では、不思議の国を探索しているアリスが三月うさぎと眠りネズミとお茶を飲んでいるHatter ハッターに出くわします。
奇妙な言動でアリスを困惑させるあのキャラクター。
かぶっている帽子には、なぜか値札がついています。
10/6=10シリング6ペンス(1865年ごろのイギリスの通貨)

終わることのないお茶会を開いて、ハッターはアリスに答えのないなぞなぞをふっかけたり、女王から死刑宣告を受けて以来時間が止まってしまったといった話をします。

チェシャ猫から、三月ウサギとともに気が狂っていると言われているハッターは
as mad as a hatter / ハッターのように気が狂っているという、当時よく知られていた英語の言い回しをもとに創作されたキャラクターだと言われています。
なお、ハッターはしばしばマッド・ハッター ( The Mad Hatter ) 「 狂った帽子屋 」とも呼ばれますがキャロルの文中ではこの名称で呼ばれることはなかったそうです。

『 as mad as a hatter・ハッターのように気が狂っているとは? 』
《語源説-1》
19世紀の帽子工場では、フェルトファーハットの製造には「キャロット」と呼ばれるプロセスが含まれていました。
動物の毛皮、ウサギまたはビーバーを、硝酸水銀を含むオレンジ色の溶液で洗浄しました。
毛皮をキャロットすることで、帽子を作る上で2つの重要なステップが達成されます。
それは、動物の毛皮から獣毛を簡単に分離できるようにし、獣毛を収縮させ、互いに合わせ、フェルト化することです。

この硝酸水銀が、蒸気となって作業場内に排出されるため、作業者は高濃度の水銀にばく露されることになります。
「水銀蒸気」による繰り返しばく露では、中枢神経系が標的臓器と考えらえており、 振戦(手足の震え)や水銀エレチスムと呼ばれる行動・性格の変化(癇癪、いらいら、 過度の人見知り、不眠等)が症状として現れ、それらが全てハッターの職業病「 as mad as a hatterハッターのように気が狂っている」と考えられたのみたいです。

felt Hatting
毛皮から帽子の材料、帽体になり帽子になるまでの工程

おそらくルイス・キャロルは、彼の生まれ故郷のチェシャーでこれらの症状を聞いたんだと思います。
そこではフェルト帽子の製造に硝酸水銀が一般的に使用されていました。
もしくは彼は1860年代にオックスフォードの学界を通じて水銀中毒の研究がされ始めたという話を聞いていたのかもしれません。

《語源説-2》
hatterとは、アングロサクソン語の atter(=poison=毒)の変形。
atterは毒ヘビのadderと深い関係がありそのヘビにかまれると精神障害を起こす。
帽子作りの商売が始まる以前にもこの表現が使われていました。
mad はイギリスの方言で「毒のある」という意味があり、hatter は adder 「ヨーロッパ産のマムシ」の崩れた形でもあるので mad は「毒がある」ではなく「気が狂っている」ととるのが自然なので、mad hatter は as mad as a hatter の慣用句を踏まえてルイス・キャロルがこれにmad adder を掛けて作ったキャラクターとしてとらえていいのではないかと思います。

ちなみに、フランス語ではtravailler du chapeau / 帽子を加工する という慣用句があり、「気が狂っている」を意味します。19世紀は色々な国で、帽子屋が狂ってたみたいです😢


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