暑い暑い夏の真っ只中。
いつもは、エアコンの効いた部屋で惰眠をむさぼる私も、
あの音を聞くとむっくりと起きだす。街にでる。
祭囃子が聞こえてくるのだ。

街は、朝から祭りの予感でそわそわしている。

商店の軒先にはビールサーバーが並び、路上の自転車は撤去され、
夕方からの車両規制の準備も着々と進んでいる。
ちいさな商店街の祭りに、電車に乗ってわざわざ訪れる人は少ないが、
近隣にはファミリー層にうってつけのマンションも多く、住民の期待は高まる。
きっと、どの家庭でも「今日はお祭りだよ。」という会話が交わされているのだ。
そして、日が暮れると子供達に浴衣を着せ街にくり出す。
「今日は、夜ごはんはお外だよ。焼きそば、たこ焼き何にしようか？」
大人たちは、焼き鳥にビールだ。

そして、祭りの幕はあく。

優美な女踊り。

躍動する男踊り。

子どもたちの視線の先には未来の自分たちがいる。

私の心も体も、ウキウキ浮き立つ。
踊り子の心底楽しそうな表情と、指先、足先まで気配りした踊り、
２拍子の祭囃子、すべてが心地よいのだ。

ああ、この暑い夏も捨てたものじゃないね。
そう笑いあって、汗でびっしょりになった体で家路についた。

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