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不在

駅の裏手に古い文房具屋さんがありました。
こぢんまりした店内にアクリル絵の具や彫刻刀なんかも少し置いていて、かわいいえんぴつを小学生が買いに来るような店でした。

よくつぶれずに営業しているなあ、大丈夫なのかなあと勝手に心配していたのですが、先日ついに看板が外されシャッターが閉じられているのを発見しました。思いの外ショックでした。

ひいきにして通っていたお店ではなく、時々思い出したようにクロッキー帳や便せんを買うくらいのものでした。
けれどそこに「在る」ことが、知らず知らずわたしの中で大きな意味を持っていたことに気がついたのです。
店がその地から消えたことの以上に、心の中に生じたひとつの空間はすぐには埋めがたいものでした。

喪失の事実は消しようがなくとも、いつかこの空間が別のもので満たされることはあるでしょう。
閉じられたシャッターに「閉店」とは書かれていなかったから、あえてわたしは「不在」の札を思い描くことにします。
時間が経って、またあの日々のことを思い出しますように。

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