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熱とじゅうたんと涙

いつもはなんとも思わない冷房が、その日に限ってものすごく寒く感じ、昼ごはんを食べて落ち着いてみたら、今度は体がふつふつと沸き立つように熱くなってきました。

人はこんな風に熱を出すのだったなあ、とぼんやりした頭で考えてみたところでどうにもならず、計ってみれば38度1分。

子どもの頃に熱を出すと、「空飛ぶじゅうたん」が好きでした。
寝たまま、布団の両端を家族に持ちあげてもらって、テレビのある居間に運ばれていくのです。風邪ひきの優越、特別感が嬉しかったなあ。

今はもう、魔法のじゅうたんに乗るには体が大きく、重くなりすぎてしまった。
体は重いが、とにかく顔を洗って、着替えて、自力で布団を持ち上げなくてはいけません。
だるさをこらえてずりずりと、ようやくひととおりを終えるとやっと安心。やっぱり布団の国はいいものです。

ちょうどその時テレビでやっていたアニメ映画は、小さい頃からよく見ていたものだったけれど、熱で煮えた頭は感傷的になるのか、なぜか涙が止まりませんでした。
当時はわからなかった登場人物の心の機微みたいなものが、わかるようになったからでしょうか。
そもそもいつのまに、わたしは彼らの年齢を超えてしまったのだったか。

ぽろぽろ泣いて、ごくごく飲んで。
繰り返すうちに寝てしまい、朝起きてみると、嘘みたいに平熱。

いつか夏風邪をひいた日の、思い出でした。

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