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謎解き・バナナフィッシュにうってつけの日09「バナナフィッシュをさがして」


dig フカボリスト。口がわるい。


e-minor 当ブログ管理人eminusの別人格。


☆☆☆☆☆☆☆


 どうもe-minorです。

 digだよ。


 いよいよシーモアとシビルが水のなかに入った。読むよ。

 2人は水がシビルの腰の高さにくるまで歩いた。若い男は彼女を抱き上げ、浮き輪のうえへ腹這いになるよう横たえてやった。

 ここね、wadeって見慣れない単語が使われてて興味深かった。「水の中を浸かりながら歩く」って動詞が英語にはあるんだね。


 日本語にも、徒渉/渡渉(としょう)するって動詞があるだろ。ふだんはめったに使わないだけで。


 そうか。世の中には知らない単語がまだまだあるな。次。

「君、水泳帽とかかぶらないの?」と彼は訊いた。
「離しちゃだめよ」とシビルは命じた。「ちゃんと押さえてて」
「ミス・カーペンター、お言葉ですが、それがし、手前の職分はしかと弁えております」若い男はいった。「とにかく君は目を開けて、バナナフィッシュがいないか見張っていてくれたまえ。今日はバナナフィッシュにうってつけの日だからね」



 シーモアは一貫して名前で呼んでもらえねえなあ。



 最後のとこは、「絶好のバナナフィッシュ日和だからね」でも「今日はバナナフィッシュにもってこいの日だからね」でもいいけどね。どれも語感としては捨てがたい。



 おれは「バナナフィッシュのためには完璧な日」っていう直訳がいちばん良いと思うぞ。唯一無二の日だってわけだろ、今日が。じっさいにシーモアにとってはそうなったわけだし。



 そう言われると少ししんみりするけどね……



 シビルが水泳帽をかぶってないのは、洗礼ってものが頭頂部を水で濡らす儀式だからだな。全身を浸さずに、頭から水を灌ぐ形式の洗礼もあるくらいだから。灌頂っていったら仏教のほうになっちまうけども。



 洋の東西で似たような宗教的儀式があるのは興味ぶかいけど、形式としては似ていても、中身っていうか、意味はずいぶん違うわけでしょ?


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全13回にて完結しています。

サリンジャーの短編「バナナフィッシュにうってつけの日」の謎を対話形式で解読。

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