カッパ

「遠野に行きたい」

「どこか出かけようか」と母に聞くと、そう言われた。遠野とは、岩手にある河童の伝承地である。

「なんで?」

「だってカッパ、見たいじゃない」

そんなちょっと不思議な母の希望で、遠野にあるカッパ淵へやってきた。

カッパ淵には小川が流れている。湿気を含んだひんやりとした空気が漂い、薄暗くてなんだか不気味な場所。

カッパ捕獲許可証をもらって釣りができるらしく、キュウリを付けた糸を小川に垂らす。

「釣れるわけないよね」

そう思うが、何か「出そう」な雰囲気があった。

その時

「ポチャン」

水面に浮かんでいたキュウリが大きく沈んだ。

「えっ」

慌てて水の中を覗き込むが、何もいない。

私が怖がる中、母が目を丸くしながら「カッパかな」と嬉しそうに言うので、なんだか気が抜けてしまった。

いるわけないと思いながらも、想像を膨らませてみる。

もしカッパが現れたら、何て話しかけようか?

最後まで読んでくださり、とても嬉しいです!ありがとうございます。