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能面は“のーめん”じゃない

のーめん。
ノーメン。

なんとなく聞いたことあったなぁという言葉。
無表情という意味で使われる。
寝起きのすっぴんの顔とか。

けれど、

能面は決して無表情ではない。
そんなことを今日、学校で学んだ。

能面は、たしかに目が細くて、
顔はたいてい白くて、
凹凸のないように見えて、
一見、ぬぼーっと眠そうな顔に見える。

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しかし、
よーく見てみると、
左右対称でもないし、
こっちの目尻は下がってて、
あっちの目尻はまっすぐ。
こっちの口角は上がってて、
あっちの口角はまっすぐ。

そして、
触ってみると片頰に少しのふっくらさがあり、

ちょっぴり前に傾けてみれば、
顔は曇り、悩みを抱えたような
ちょっぴり上に傾ければ、
顔は明るく、何か希望を見つけたような
表情になる。

シテの役者たちは、
この固い面を、生き返らせているんだ。

でも、能を観に来た観客にとっては、
そんなに能面の表情は
はっきりとはわからないはずだ。

左からの表情と、右からの表情は、
違うくらいはわかったとしても。

だって、固い面は、
涙も流さないし、
大きな口を開けたり、
目を細くしたりして、笑いもしないから。

それは人間のようで、
人間ではない。

抽象的だ。

始め、顔の右側を見せて橋掛かりから出てくる時は、
生きることがつらくなり、
魂も肉体も失ってしまったもの。

そして、舞台に出て、
ワキである神に供養されることにより、

顔の左側を見せて舞台から去る時は、
肉体は戻らずとも、
生きる希望を取り戻し、
魂をもう一度宿ることができたもの。

一見、無表情に見える、
あの固い面も、
舞台の上で、生きている。

あのほんとに豆粒しかない目と鼻と口の穴から、
シテの役者たちは外の世界を覗きみて、
なりきれそうでなれない、
そして、あえてなりきることのない

人間と人間ではない世界を浮遊してるのかと思うと、なんだかとても不思議な世界観であり、
改めて人間らしさは顔の表情なのかと思ったり。


なんだか、まとまらないけど、
これから人の顔の上げ方や俯き方、
光に照らされている横顔とか、
いろいろ表情というものを観察してみたいと思った。


そして、能についても
もっと知りたくなった。



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