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恋に満たないエピソード

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引き裂かれる惑星に

一般文芸の恋愛プロット。出口は、小説として世に出すこと。

テーマは葛藤。不倫と、相手が女性であるという二重の葛藤。心の揺れ動きを描きたい。

人物
夏子。38歳。出版社の編集者。既婚で娘あり。論理的で理知的。アーティストに強い憧れ。

スグル。女性ジュエリーデザイナー。33歳。自分の気持ちに正直。好き嫌いがはっきりしていてタブーが少ない。

プロローグ
小6の夏休みに女の子としたキスの体験。夏子

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赤いくつ、赤いばら、白いばら

赤いくつ、赤いばら、白いばら

いつも白と黒のものしか身につけないことにしている(理由はまた、今度)。

でも今日は少し贅沢なお店で食事をするから、いつもより少しおしゃれに見えるよう、家を出る直前に赤いパンプスに決めた。

最近は駅までの道を自転車でなく歩くようにしており(理由はまた、今度)、見た目よりずっと歩きやすいその靴で、てくてくと歩いた。

いつもの道で、ふと左を見ると、知らない人の家の柵にたくさんの小さな赤いばら。その

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視線の交叉

お互い別のことをしているのに、
お互いが気になって、
お互いの作品がとても好きで、そこに埋もれていたいと思う。

ふたりの視線は、いつもお互いの作品を向いている。

でも、今度会うときに視線を合わせたら、
わたしたちはどんな風になるのだろう?
#今日のラブレター

あなたが読んでくれるなら

あなたが読んでくれるなら

その人の書く文章が好き。

たぶん、初めて読んだ時から好きだった。私も文章を書くから嫉妬しそうなものだけど、そんな気持ちは生まれなかった。

すべてを説明せず、写真のように一方向から切り取る。少しひねくれていて、ユーモアがあって、改行がなくて、リズミカル。

「いつも時間をかけずに書くようにしてるんだけど、もう少しちゃんと考えて書いてみようかな。でも、そんなの誰が読みたいんだろうか」

その人は言

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次に雨が降ったら

次に雨が降ったら

「濡れるのきらい?」

 そう聞かれたのは、軒のないラーメン屋の前で、席が空くのを待っているときだ。彼は傘を差しているようで、私に言わせたらちっとも差していない。傘の中棒を無造作に右肩にかけているだけで、もう片方の肩には傘をよけた雨粒が容赦なく落ちている。

 私は、できるだけ濡れないように傘をまっすぐに持ち、バッグを体の前で抱えるようにして、心なしか背中を丸めて小さくなっていた。

「うんまあ、

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「B型の人が好きなんですよ」

「B型の人が好きなんですよ」

 2年後輩の三島君は、さわやかで面白くてモテそうな青年なんだけど、入社してきたときはすでに結婚して子供も2人いた。学生結婚らしい。だから他の人たちよりずっと落ち着いて見えたし、新入社員なのに家族を養っているから、他の人みたいに自由に使えるお金がなくて、遊んでいる風もなかった。

 ほとんど一緒に働くことはなくて、というかほぼ皆無だったけど、「よくできる」といいううわさは聞いていた。ときどき、部署全

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まだ名前のない感情はたくさんある

まだ名前のない感情はたくさんある

仕事でまあまあ病んでいたときがあった(浜松からさらに電車で30分ほど行ったところに週5日常駐。プロジェクトメンバー6人。ひとりインド人、超苦手なプロマネ、などなど)。

常駐前から不思議な仲良くなりかたをした男の子(2歳年下くらいかな?)がいて、その子とときどきデートしていて、その休日もそうだった。

渋谷の書店で「そんなに辛いなら、楽しいところ行こう」ってぴあを見て、小さなサーカスが栃木でやって

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