見出し画像

必要なこと(会話体験をつくる Vol.2)

会話体験をつくるために必要なものは、なんだろう。

まずは、言葉。
それから、言葉を伝えるための手段。喋ったり書いたりすること。
聞き取るための耳、読むための目や指。
理解するための脳。

そして、言葉以外のあれこれ。

言葉以外、って?

会話体験の非言語要素

実際の会話を想像してみよう。

あなたの友人が、「話を聞いてほしい」と声をかけてきたとする。恋愛相談のようだ。その人があなたに求めているのは、ただ単に「話を聞く」ことだけではなさそうだ。

友人の話を聞きながら、あなたは以下のように振る舞う。

・友人のほうを向く
・相槌をうつ
・目を合わせる
・微笑む
・首を傾げる
・頷く
・「あなたは悪くない」と言う
・「そんな彼なら捨てちゃえば?」と言う

ことほどさように、「話を聞く」のは忙しい行為である。表情やボディランゲージといった非言語要素は、会話の間ひっきりなしに活動している。

非言語コミュニケーションの重要性

「メラビアンの法則」という、わりによく言及される俗説がある。

ざっくり説明しよう。
メラビアンという心理学者のおっさんが以下のような疑問を抱いた。

好きとか嫌いとかの感情について、「言語情報」と「非言語情報」とで相反するメッセージを同時に発信した場合、人間はどちらの影響をより強く受けるのか?

で、実験してみた。こういう感じの実験だったらしい。

結果は以下。

55%=Visual (視覚情報:見た目・表情・しぐさ・視線)
38%=Vocal (聴覚情報:声の質・速さ・大きさ・口調)
7%=Verbal (言語情報:言葉そのものの意味)

参考:マジョリー・F・ヴァーガス『非言語コミュニケーション』
※この実験にボディランゲージは含まれていない

非言語情報、93%! 話聞いてない! 
これもう、話聞いてないよね!?

どうりで何回「好きだよ」って言っても信じてくれないはずだよ!
別のとこでジャッジしてるじゃん!!!!!

この実験結果はとてもインパクトがあったので、いろんなところで濫用されている。「人は見た目が9割」とか、「人はいつも7%しか言葉を聞いていない」とか。

メラビアンはそんなこと言ってない。
だが、こうした俗説が繁衍してしまうほど、コミュニケーションにおける非言語要素は、人間の感情に強く作用するようだ。

会話体験設計のフロー

会話体験を設計する際は、この「非言語要素がマジでやばい」ということを意識して、要素の調整をしていく。まあそうなるよね。だって言語情報だけを正確に設計しても、みんな、基本的に話聞いてないんだもんね!!! 好きだって! 言ってるのに! ばか!!!! 
(メラビアンはそんなこと言ってない)

設計のフローは、こんな感じ。

1. フレーム設計(インタラクション)
2. キャラクター設計(話し方)
3. シナリオ設計(伝え方)


ここからは、「おしゃべりロボット」と「お掃除ロボット」という二つの例を対比させながら説明しよう。

1. フレーム設計(インタラクション)

まずは、会話体験の目的に沿ったフレームを設計する。

たとえばおしゃべりロボットのフレームを設計する場合は、非言語表現を多めに配分する。
身振り手振りを交えた会話は生き生きとした印象を与えるため、雑談が活性化する。
また、広範な話題に対応できるよう設計しておくと、「この話題にも応えられるのか」という驚きが生まれやすく、ユーザーは色んなことを話しかけてくれるようになる。

お掃除ロボットである場合は、タスク実行が最優先。
いちいち掃除を中断してジェスチャーを送ってくるロボットはうざい。
こいつは、掃除に関する話題を中心に設計していく。


「恋の相談に乗ってくれる掃除機」なんて悪くない気もするが、まずは確実に掃除をしてほしい。

2. キャラクター設計(話し方)

フレームが決まったら、キャラクターを決める。
どんな話し方をする奴にするかは、目的に沿って設計される。
これが狂うとUXがやばい。

たとえば、テキパキと話す無表情の雑談ロボット。

つらい。

あるいは、過剰にフレンドリーな掃除機。

不安になる。
目的に応じたキャラ設計、とっても大切である。

3. シナリオ設計(伝え方)

フレームとキャラクターが決まったら、いよいよシナリオだ。
シナリオ設計では、目的に合わせた情報の伝え方を取捨選択する。
ここをミスると、とんでもなくポンコツな印象になる。

たとえば、クローズドクエスチョンだらけの雑談ロボット。

これはもう、裏切りである。話しかけることに恐怖を感じてしまう。

あるいは、モジモジしまくりのお掃除ロボット。


なんだろう、すごく不安……。

正確にタスクを実行できていたとしても、伝え方が曖昧だと信頼度は低くなる。タスクが明確なロボットからは、はっきりと返事をされた方が、ユーザーは安心する。

ほらね!

まとめ

以上、会話体験設計の構成要素をご紹介した。振り返るとこんな感じだ。

・非言語情報がマジでやばい
・好きだって言ってるのに!!!
・設計フロー
 →フレーム設計(インタラクション)
 →キャラクター設計(話し方)
 →シナリオ設計(伝え方)

好きだってことが! 伝わってたら! いいな!!!!!!


次回の「会話体験設計」記事は4/24(水)公開予定。
「フレーム設計」について、より詳しく書いていくつもりだが、われわれはとてもパンクな集団なので先のことは何もわからない。

ではまた。
(文:岡田 麻沙)

参考資料
▼メラビアンの公式HP。




もしよかったらアレしてください。