見出し画像

そいつに、何をしてほしい?(会話体験をつくる vol.3)

会話体験づくりのファーストステップは、フレーム設計。ここで、ザックリと要素の整理をしていくことになる。今回はフレーム設計の目的やポイントを紹介したい。

フレーム設計の目的

目的は、これ。

「ピントが合った会話」をするための下ごしらえ

ピントが合わない会話体験は、苦痛である。
「話を聞いていないな」「通じていないな」。
そんな印象を抱かれると、婚活は失敗だ

会話体験づくりも同じだ。「こいつ、聞いていないな」と感じさせる設計では、基本、ユーザーにモテない。

では具体的に、話聞いてない感を醸成するピントのずれた会話って、どんなものだろうか。

ピントが合う = 意図を理解する

たとえば、以下のような男がいたとする。

そうじゃない感がやばい。
女の気持ちは、たぶん、こう。

この婚活は失敗だ。

じゃあ、掃除機に置き換えてみよう。

うん……。
上記の場合、女は、こう。


ふたつの例から分かるのは、会話の「ピント」ってユーザーの意図のことだね! ってこと。

するのか? 掘るのか? 広げるのか?

では、さきの婚活会場で、なにが起きたのかを見ていこう。

会話のピント:「変な」
女:「変な夢」の話を深掘りたい
男:「夢」の話を広げた

諸悪の根源は、会話における方向性の違い。掘り下げたい部分が流され、意図しないキーワードを広げられたことで、女のフラストレーションが溜まっている。

次に掃除機の例。

会話のピント:状況への対応方法
女:汚れた寝室を綺麗にしてほしい
掃除機:汚れた寝室の話を続けた

ここで起きているのは、対応のすれ違い。
掃除機は会話をした。女と仲良くなりたかったから。だが女は会話なんて望んでいなかった。掃除をしてほしかったのだ。

そういうわけで、フレーム設計においては、以下の判断軸が指針となる。

・そもそも会話をしたいのか
・(その会話を)深掘りたいのか
・(その会話を)広げたいのか

設計のプライオリティ

会話をするか、行動をするか。ここをミスるとまじでやばい。例えば車載エージェントが、先ほどの掃除機と同じルートで会話を進めたら……。

ユーザーは死ぬ。

したがって、会話体験のフレームは以下の優先度で設計される。

1. なにをしてほしいか(会話 / 行動)ジャッジする →最優先
2. 会話をどう展開するか(深掘りする / 広げる)決定する →1のジャッジ後

フレーム設計の手法が色々登場するが、まずはここだけをおさえておきたい。そうすれば、ユーザーの死亡率はグッと下がる。まじで。

フレーム設計で決めること

フレーム設計の中身は、こんな感じ。

・体験フロー要素
・会話タイプ
・シナリオ本数
・演出タイプ

具体的に各項目を説明していくのはまたにするとして、今回はさわりだけ。

体験フロー要素の中から、「会話体験開始のトリガー」と「2回目以降の反応」について紹介しよう。

体験フロー要素

まずは、体験開始のトリガーを決める。
それから、会話の引き出しはどこで、どんな風に引っ張ってくるかを決定する。話しかける回数によって応答を変えるかどうかの設計も、ここだ。

ニュースや、リアルタイムのお天気情報と連携して「いま・ここ」に紐づいた会話ができるようにしたり、話しかける回数によって応答を変化させたり。

ユーザーの名前を覚えるかどうかも、この段階でデザインしておく必要がある。

会話体験開始のトリガー

トリガーとしてメジャーなものに、ウェイクワードがある。
「OK, Google」ってやつ。
なんでこれがあるかというと、いつでもどこでも会話に入ってこられると、ユーザーが困惑するから。
夫婦喧嘩の最中にエージェントがいきなり面白い話をはじめたりすると、ちょっと怖い。

ね。だからウェイクワードがある。

ウェイクワードをうまく利用すると、魔法っぽさも出せる。「開けゴマ」とかね。

他にも、会話体験のトリガーにはこんなものがある。

・ボタンを押して会話を開始
・センシングした情報によってユーザー状況を判断し、機械の方から話しかける(眠そう、困っている、など)
・特定のしぐさを認知して、会話を開始(指を立てる、など)

2回目以降の反応を変化させる

同じように話しかけても、毎回違う答えが返ってくる。イキイキとした会話体験をつくるとき、非常に有効な手法だ。

わかってる感を出しやすいので、フレンドリーな会話になる。

ほらね! わかってる!!

ただしこれも、ユーザーの安全と信頼が最優先。

死んじゃうよね。死んじゃったら婚活できないよ。
みんなで生き延びて、婚活を成功させようね!!!
約 束 だ よ ! ! ! !

まとめと予告

会話体験づくりのファーストステップである、フレーム設計について紹介した。

・目的は意図理解
・意図(なにをしてほしいか)でフレームが変わる
・最優先事項は「会話」か「行動」かのジャッジ
・体験フローの要素(トリガー、2回目以降の変化)

実はまだ、フレーム設計の手法、めっちゃある。

でもちょっと飽きたので、次回は、音声演出の話をしようかな。
「会話体験をつくる」記事、5/8(水)に公開予定だが、先のことはなにもわからない。ごきげんよう。

(文:岡田麻沙)

もしよかったらアレしてください。