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SUPER FORMULA Rd.7 Motegi

前回の見どころをまとめた記事が過去一ヒットしたので今回もやっちゃいます!内容は今週末の8/19-20に行われるRd.7もてぎ向けに、サーキットの紹介やセットアップの概要についてと、週末の展望なんかを書いていきます。今回も書いていたら意外と長編になってしまいましたが、最後までお付き合いください!

サーキット紹介

モビリティリゾートもてぎの特徴

最初は ツインリンクもてぎ 改め、モビリティリゾートもてぎ がどんなサーキットなのかを解説していきます。レイアウトは下図のようになっております。SFは西コースと東コースを合わせたフルコースのレイアウト(4.801km)で行われます。

公式サイトから引用

折角なので、rFactor2を使ってFT-60というF3に近い車両で走行してみたロガーとオンボード映像を載せておきます。

rFactor2 FT-60(F3相当) Motegi走行時のロガーデータ

このサーキットの特徴を一言で表現すると、ストップ&ゴー主体のサーキット。となります。というのもこのもてぎのレイアウトは短いストレートと180度近く曲がる中低速コーナーの組み合わせが大半を占めているため、そのように呼ばれています。
どのサーキットでも減速して加速するからレーシング走行していればどこでもストップ&ゴーでしょうが!!と思ったそこのアナタ! 私も同意見ですが、巷ではそう呼ばれているということで、ここは軽く流してください(笑)

冗談はさておき、ストレートと低速コーナーの組み合わせというところから必然的に車速を落とすブレーキングの時間が長くなるためブレーキへの負荷はかなり高いです。SFの場合はカーボンブレーキディスクを使用していますが、通常のダクトでは空気流入量が足りずディスクが高温になってしまうことから、このサーキットのみフロントは大型ブレーキダクトの装着が義務付けられていますので、興味のある方は比較してみてください。この大型のダクトは一目でわかるくらい大きいです。そのため後方への気流に対して悪影響ありそうな印象ですが、こればかりは冷却を優先せざるを得ませんから仕方ありませんね。

そんなモビリティリゾートもてぎですが、セクターとしては4つに分かれています。

セクター1 コントロールラインから4コーナー先ストレート中盤まで
セクター2 5コーナー手前からV字ヘアピン手前まで
セクター3 V字ヘアピンから裏ストレート後半まで
セクター4 90度コーナーからコントロールラインまで

セクター1は、1-2コーナーと3-4コーナーにストレートの組み合わせなので、ブレーキング時のスタビリティとトラクションが重要で、4コーナーをどれだけ高い速度で立ち上がれるかがタイムに大きく影響します。
セクター2では、もてぎで唯一といってよい高速コーナーのS字があるため、エアログリップ(ダウンフォース)が重要視されます。
セクター3は、V字コーナーとヘアピンというこのサーキットの中で最も車速の遅いコーナーが集まっているため、メカニカルグリップの比重が上がります。
セクター4については、90度コーナーがかなりの下り坂なのでブレーキング時のスタビリティが重要となり、最終コーナーにかけても旋回しながらブレーキを踏むことから同様にリアエンドの安定性が重要になります。このセクターで速い車両は富士のセクター3も調子が良さそうな印象があります。基本的に低速コーナーが多いのでダウンフォースレベルは異なりますが、富士で速いクルマが強そうな印象を持っています。(本当かどうかは知りません)

さて簡単に解説していきましたが、実はこのサーキット、レースでの追い抜きがSF開催サーキットの中で最も難しいと言われています。このサーキットの特徴は前述したとおり、短いストレートとコーナーの組み合わせで出来ていますが、ストレートが短いということは最高速が高くない。つまり空気抵抗の影響が小さく、後続車両はスリップストリームの恩恵を受けにくいのです。加えて後続車両は前走車両に近づいていくとダウンフォース抜けが発生しますし、後続車両としては有利になるポイントがほとんどないというのが、抜けないサーキットと言われる所以です。ダウンフォース抜け自体はSF23で減少傾向ではありますが、サーキット特性的に抜きにくいのは如何ともしがたい印象です。さて、実際はどうなることでしょうか。

車両セットアップ

サーキットの特徴を解説したところで、ここからはセットアップの傾向なんかをざっくり紹介していきます。上述した通り、このサーキットはほとんどが低速コーナーの集まりなので、重要になるのはブレーキング時の安定性と回頭性、トラクションといった基本的な性能になります。口にすると簡単そうですが、実際は難しいんですよ…(;´д`)トホホ。

エアロレベル

上述したような基本的な性能を高める要素として真っ先に挙げられるのが、エアロです。エアロによってグリップ限界を高めることで全体のレベルが上がっていくわけですが、このサーキットは、ストレートが短く最高速がそこまで高くないことからダウンフォース量多めのエアロレベルに設定するのが基本です。よくストレートが沢山あるからレスドラッグがよいのでは?と言われますが、1本1本のストレート自体はそこまで長くないのでドラッグ感度としてはそこまで高くありません。もしレースシムをプレイされる方がいたら、比較してみてください。レスドラッグ仕様だと意外とダウンフォース低下分でコーナー速度が低下してストレートでの回収分とトントンかそれ以下になったりもします。もちろん適値があるので、その通りになるとは限りませんが…

メカニカルセットアップ

もてぎの路面は開催サーキットの中では比較的滑らか(石の粒が小さく、角が立っていない)な部類に入ります。そのためタイヤが路面に食い込みにくく、路面のグリップレベル自体は高くありません。加えて起伏自体も少なく跳ねるような箇所は少ないです。起伏が少ないということは、サスペンションセットアップを硬めに設定しても走れるということになりますので、それによってイニシャルの車高を下げて、更にエアログリップを稼いでいくのが一般的です。その際に課題となるのは、コーナーで最も速度が落ちるポイントでサスペンションが動きにくくなるのでアンダーステアが発生しやすかったり、コーナー出口のトラクションが悪くなりがちなので、そこをどう処理していくかがポイントです。今のところ私はノーアイデアなので、どなたかお助けください(笑)
あとは、多くのコーナーが180度近く回り込むため、ブレーキングしながら旋回していく時間が長めになります。そのためフロントの車高を維持しやすくする狙いで、前後サスペンションの硬さのバランスを他サーキットに比べてフロントを硬めに設定します。これもアンダーステアを発生させやすいというネガティブな部分もあるのでコンディションに合わせて調整が必要になります。

ギアレシオ

ギアレシオに関しては、供給元から購入できるレシオであれば自由に組み合わせられるのですが、このサーキットでは低速コーナーに合わせて2-3速をクロス目に設定することが多いです。2速、3速で立ち上がるコーナーでスロットルを踏んだ瞬間からトルクが出るような回転数にいられるようにすることでタイムを稼ごうとしますが、決勝に関してはパワーが出すぎるとスライドする原因にもなるので少し扱いやすいようにロング目にしたりと、その匙加減がなかなか難しいところです。今のところその日その日で、気温や路面温度、想定されるグリップレベルと相談して最終的に決定していきます。

簡単にですが、セットアップに関して紹介してみました。

Rd.7 もてぎの事前情報と展望

Rd.7もてぎの事前情報

最初に、残り3戦を残した状況でのドライバーランキングから見ていきましょう。

公式サイトから引用 >表の高さがバラバラで気になります…

ランキングトップ2人が86、85ポイントと頭一つ抜け出てますね。ただ、残り3戦で最大69ポイントありますから、ランキング7位の山下選手までチャンピオンの権利が残されています。但し、3位以下の選手は今回のイベントで優勝しないとライバルの順位に関わらず権利が狭まってしまいますから相当な気合を入れて臨んでくることでしょう。

今週末の見どころ♬

まずフリー走行ですが、前回の富士でどのように6setのタイヤを使ったかによって、持ち越しタイヤ3setの状態が各車異なります。そのため、フリー走行序盤に使うタイヤマイレージはそれなりの差がありますので、フリー走行序盤の順位はそこまで参考になりません。おそらく中盤から後半にかけて1~2set、程度の良いユーズドタイヤかニュータイヤを投入すると思うのでそこからようやく勢力図は見えてくるかなと思います。各チームSF23になってからもてぎを走らせるのは初めてですから、セットアップの調整も大掛かりなことをやるでしょうし、そういう意味でもセッション後半まで目まぐるしく順位が変わっていくことが予想されます。

予選に関しては、例年夏のもてぎだとアウトラップの次周にアタック出来るほどウォームアップが良かったりしますが、今年度はタイヤと車両パッケージが変わっているので、各車戦略が分かれてくる可能性もあります。

決勝については、天候がどうなるかわかりませんが、ドライだった場合の話をすると、例年アンダーカット組が上位に来ることが多いイメージです。というのもサーキットの特性的に低速コーナーから加速するシチュエーションの多いので、フレッシュタイヤに変えた後のタイムゲインが大きいです。そこでギャップを詰めて一時的にでも前に出られれば、抑えることは出来るだろうという考えだと思います。とはいえ、バランスさえ良ければタイム低下なく走り続けてオーバーカットする戦略もありますので、そこはセットアップの特徴と前後の状況に合わせてベストな戦略をそれぞれ選ぶことになるでしょう。
このサーキットのロスタイムはピットレーンのロスが約23~24秒程度で作業時間を含めると凡そ30秒くらいが目安です。富士に比べるとロスタイムは短めなのがレースにどう影響するのか?変わった戦略をしてくる車両があるかもしれませんね。

決勝と言えばオーバーテイクシステムが使えますが、このシステムを使ったあとに発生するチャージタイム、昨年までは全サーキットで100秒でしたが、今シーズンはサーキットによって異なる設定がされています。今回のもてぎは”120秒”になるようです。放送とかで情報が出てくるはずですが、昨年の決勝ドライのファステストが約94秒でしたから、今年のチャージタイムだと1周+Sector一つ分、使えないようになるということです。
というか、このチャージタイムが変更された情報が公開されてないことに違和感…(公開されていたらごめんなさい)
そもそもこの変更はレースを面白くするための変更だと思うので、だったら情報をアピールするべきだと思うんですが、そう考えるのは私だけなんでしょうかね?^^;
レースの開始時間も大々的にぶち上げた割にしれっと変更してるし、やってることは政治家と変わ…ゴホンゴホン。
そんなことはさておき、この変更が抜きにくいと言われているもてぎのレースにどんな効果をもたらすのか!楽しみでなりませんね^^

天気予報

週末の展望を語る前に外せないのが天気予報!いやー、今週末は天気がかなり怪しいですね(笑)台風過ぎた後だし、快晴は確実だな!なんて勝手に思っていましたが、その見通しは甘かったようです。
レースウィークは毎日3種類以上の天気予報サイトを数時間おきにチェックしていますが、どの天気予報を見ても日曜日は雨がらみになりそうです。特に夕方に向けて下り坂傾向です。朝のフリー走行はドライで走れそうなので、ウェットセットの確認が出来なさそうなのが辛いところ。
ウェットの場合、ドライと違って速いクルマと遅いクルマのタイム差が拡大して、平気で1秒~2秒の差になるので順位変動が増える可能性は高く、観戦条件は悪いかもしれませんが、ドラマティックなレースになって盛り上がる可能性も高まります。
小声になりますが、エンジニアとしては予選で上位につけられた場合はドライ希望、失敗した場合はウェットを希望します。そんな上手くいかないんですけどね(笑)
※天気予報は8/17 18:00時点の情報を元にしています。

8/17 23:16分追記
なんか、雨予報増えてるんですが…( ;∀;)

tenki.jpから引用

担当車両の展望

では、折角なので担当車両に関する展望を(笑)
ランキング上位を追いかける側の立場として、今回こそは力強いレースをしたい!と前回も言っていた気がしますが、ここ数戦は結果が右肩下がりで、上手くいかず苦戦しています。
苦戦している要因は”ステアバランスの一貫性”です。一貫性ってナニ?っていう方のために簡単に説明すると、レーシングカーはコーナー進入時にブレーキを踏み減速し、ステアリングを切りながらタイヤグリップの限界で旋回に移り、コーナーのクリッピングポイント(エイペックス)から加速に移るという過渡領域での運動が主となります。そういった過渡領域においては前後のタイヤが発生するグリップ限界が目まぐるしく変わるためバランスが崩れやすい状況にあります。そこで発生するのがアンダーステアやオーバーステアといった症状です。
雑誌やWeb記事等でこれらのワードはよく耳にするかと思いますが、レース業界では意図しているより曲がらないことをアンダーステア、想定より曲がりすぎる(スピンモーションに入る)ことをオーバーステアといいます。ニュートラルステアというのもありますが、年1回も使わないので覚える必要はありません(笑)。ちなみに自動車工学的にはこれらの単語の定義は若干ことなるのですが、そこは興味があれば読んでみてください。
話を担当している車両に戻しまして…今どういう状態かというと、コーナー進入時はオーバーステア傾向が強くて進入速度を上げられない。そのためゆっくり進入することになるのでこの時点でロスしているわけですが、それによって速度に依存するダウンフォースも減少し、車高が上がる。そうなるとグランドエフェクトでダウンフォースの多くを発生させているフロント側のダウンフォースが足りずクリッピングポイント付近ではアンダーステアに。そして曲がらないままスロットルを踏むのでリアタイヤは横方向にグリップを使いきった状態のまま前後力を掛けられるため、グリップ限界を超えスナップオーバーステアと。俗にいうオーバー・アンダー・オーバーっていうやつで、一番どうしようもない残念なバランスです…
そんな状態でもダウンフォースが出やすい時期ならある程度ごまかせますが、夏場でダウンフォースが減少してくると症状が余計にひどくなって今に至るといった状況です。
今まで、こういった内容はあまり表に出てきませんでしたがSFgoでオンボード映像を見れますし、わかる人が見たらすぐバレちゃうので、隠す意味もなくなったのでオープンにいきます(笑)

調子悪いなら、調子の良いクルマをコピーすればいいじゃん!ということで、実は複数回フルコピーしてたりもするんですが、やっぱり全く同じにならないのが難しいところです…
コピーが上手くいかないならと新しいアイデアをRd.6富士の練習走行で試したわけですが、全て外す不始末…もうどうしようもありません…

そんなわけで、今現在苦戦しているのはドライバーの差ではなく、100%エンジニアの問題です。こんなことを力説するのも悲しいんですが…
どのエンジニアも同じだと思いますが、自分の担当ドライバーが一番速いと信頼してやってます(※注)から、本当にそろそろ何とかしたい…。
※注 鈴鹿の最終コーナー~コントロールラインまでのライン取りは除く
    ここだけは指摘させてもらったことがあります(笑)

とまぁ、根暗なんでネガティブなことばかり書きましたが、先週ようやく遅かったその原因を発見したかも?しれません。

もし、週末がドライで行われた際に、少しでもパフォーマンスが戻っていたらセットアップ的に多少の改善があった可能性がありますので、注目して観戦してもらえると嬉しいです。SFgoのオンボード映像を見ればすぐわかることですが、直っていたら今までより修正舵が減ってることでしょう。

まとめ

さて、いかがだったでしょうか。この事前情報を入れてくださった皆様はレースを楽しめること間違いなし!一緒に観戦している人にドヤ顔で説明するもよし、自分だけの世界で「あー今こういう状況ね!わかるわかる」と楽しむのもよし。ここが今シリーズの分かれ目となりますので見逃さないように!!
次は最終戦の前になると思いますが、精神的に余裕があればまた執筆してみたいと思います(笑) 最後までお読みいただきありがとうございました。

もし内容が参考になったらサポートして貰えると嬉しいです。 継続的に活動を続けるモチベーションになります🥺