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2023年 心に残ったコンテンツ ランキング

あけましておめでとうございます。

毎年末、一年間で観たコンテンツに、個人的なランキングをつける習慣がある。それを、ここにそっと書かせてほしい。ジャンル問わず、心に残った順。(ただしゲームは除く。同業者に順番をつけるのは恐れ多いゆえ)


10位 J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル

BBCニュースのドキュメンタリー番組。公開後、徐々に反響を呼び、それをきっかけに、ジャニーズ事務所の在り方が問題視され、大きな波紋へと転じた。ジャーナリスト一人の使命感がうねりを生み出し、最後は大義を果たした。素晴らしい仕事だと思う。

この番組を、3月の公開直後に観た。当時は日本語字幕もついていなかった。そのころ、この番組に対し、日本のメディアの反応は鈍かった記憶がある。

この事件の1層目の問題は性的虐待事件だが、その奥、2層目にある問題は「メディアによる黙殺」だ。この番組の製作者であるフランス人記者 モビーン・アザー氏は、この件を「(日本の)不処罰文化をめぐる問題でもある」と表現している。確かに、その通りだ。これだけの告発があってなお、あわよくば沈黙を保とうとした日本メディアの空気。これこそアザー氏が問いただしたかったものだろう。そして、この一連の流れが、忖度と無縁の、海外のジャーナリストによって生み出されたのも納得だ。日本はついに、自浄作用を生み出せなかったということになる。

振り返れば、私自身もこの時点で、ジャニーズ事務所の性加害の噂は、初耳ではなかったと思う。文春の記事に、どこかで触れていたのかもしれない。それでも当時、ジャニーズ事務所が芸能界で覇権を握り続けていることに、なんの違和感も持っていなかった。つまり、この番組が「なぜ見てみぬふりをするんだ?それって異常じゃないか」と指さしている先には、私自身も含まれていたのだ。いかに自分の思考が、バイアスに囚われていて、それを自覚するのが難しいかを痛感させられた。

番組本編:
https://www.youtube.com/watch?v=zaTV5D3kvqE

9位 ライブで観た ぼっちぼろまる

以前から、ぼっちぼろまるさんの楽曲のファンだ。なんたって詞が良い。言葉遊びが軽やかで、想像の余地もある。

今年、初めてライブも拝見し、さらにリスペクトが増した。ライブ慣れした歴戦のアーティストだということがはっきり分かる、圧巻のステージングだった。顔出しNGの覆面のまま、観客と見事に一体感を作っていた。あとこれまで意識していなかったが、このチームはバンドなんだな、ということも感じた。

シン・タンタカタンタンタンタンメンMV:
https://www.youtube.com/watch?v=VgS6bbGsLV0

8位 テレビ「THE SECOND 〜漫才トーナメント〜」

面白かった。当時、noteの記事で詳しく触れたので、ここでは省略。

2024年も出場してくれよ、スピードワゴン。この大会は、どん底から這い上がる漫才師全員の、再起の場だと信じている。

当時の記事:
https://note.com/employee_k/n/naa2daafb22f4

7位 オリラジアカデミー「究極のマネー史」(YouTube)

これも面白かった。テレビ史、お金の歴史、大谷翔平偉人伝。どれも見応えがあった。

この番組は、今のオリラジ2人が、自分らしさを華々しく表現する方法として最適だ。2人が同時に輝くために、場をイチから作った。成り立ちも含めて、独特の番組だと思う。中田敦彦さんという、プレイヤーとして一流の人が、こうしてプロデュースも見事に成功させているのがすごい。

この番組のオープニング映像が好きだ。オリラジの2人は、芸もさることながら、生き様そのものが提供価値だから、この映像の見せ方は、よく似合う。プロセスエコノミーの究極形だと思う。

中田さんは、2023年も日和ることなく、また痛烈に生き様の1ページを更新していた。(松本人志さんへの賞レース審査員に関する提言で。)内容の是非というより、そのスタンスがまず、つくづくかっこいいなと思う。自分を貫き、生き様で惹きつける人。こういうあり方にこそ、私は芸人らしさを感じる。ビートたけしさんや、松本人志さんの半生のように、身をもって芸をなす覇道。その道を、いま中田さん自身も進んでいるように見える。これこそが芸人だ。

関連記事「オリエンタルラジオ中田敦彦 TVでのスーパープレイ 7選」:
https://note.com/employee_k/n/n8f176d5a4515

6位 福井県立恐竜博物館

2023年夏のリニューアル後に行った。私は、古生物学が好きなのだが、福井県立恐竜博物館のライブラリは、ひとつひとつが、国内の所蔵としては量も質もケタ外れで、宝の山だった。

いま日本産の新種の恐竜が次々と見つかっているのも面白い。現在進行形の醍醐味。

当時の記事:
https://x.com/employee_k/status/1729083140688556414?s=20

5位 映画「怪物」

邦画では、これが2023年ベスト。物事の善悪は、見る角度ひとつで、かくも変わって見えるのか、ということを示してくれる映画。

私は、監督の是枝裕和さんも、脚本の坂元裕二さんも、音楽の坂本龍一さんも大好きなのだが、これほど、ばらばらに尖った個性が、こんなに高い水準で融和する作品が生まれるとは‥と驚愕した。企画した川村元気さんにも拍手を送りたい。

関連記事「坂本龍一さんの映画音楽が、ずっと好きだ」:
https://note.com/employee_k/n/n12a4092afca6

4位 大脱出(DMM TV)

「水曜のダウンタウン」でおなじみのテレビ演出家、藤井健太郎さんがDMM TVを舞台に手掛けた、バラエティ番組。面白かった。

藤井さんの番組は、2023年も毎打席、当たり前のようにホームランを打ち続けていた。水曜日のダウンタウン、正解は一年後、どれも素晴らしかった。藤井さんの番組は、ワクワクの量が、他のエンタメよりことごとく高い。これは、一体なんなのだろう。面白さの作り方を、完全に支配できているかのように見える。

当時の記事『藤井健太郎演出DMMTV「大脱出」を観た』
https://note.com/employee_k/n/n566d6161ffb2

当時の記事「水曜日のダウンタウン 負け残りタバコ我慢対決」
https://note.com/employee_k/n/ncf7962272277

3位 NHKスペシャル 「メルトダウン File.8」

あいかわらず、NHKスペシャルに外れなし。全てが見応えあった。この福島原発事故の検証の番組も、世界中でNHKにしか作れないクオリティの番組だと思う。(まず単純に、手間とコストがすさまじく費やされている)

今でもNHKオンデマンドで見られる。(有料)

NHKスペシャルは、他も毎週、素晴らしいものを見せてもらった。「ジャパン・リバイバル “安い30年”脱却への道」、「ウクライナ大統領府 軍事侵攻・緊迫の72時間」、「羽生善治 52歳の格闘 〜藤井聡太との七番勝負〜」あたりはしびれた。NHKはあいかわらずコンテンツ制作力が、日本の報道番組制作局のなかで、頭ひとつ抜けているように思う。集英社や任天堂と同じようなトップランナーだ。

「OSO18 “怪物ヒグマ”最期の謎」も良かった。現代の奇譚。詳しくは下記に。

当時の記事:
https://x.com/employee_k/status/1724017704099835944?s=20

2位 映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3」

今年のベスト映画。最高だった。観たあとは、他者の不完全さを愛そうと思わせてくれる映画だった。詳しくは下記記事に。

当時の記事:
https://note.com/employee_k/n/ne65a05f7c39d

1位 LIGHTHOUSE (Netflix)

Netflixで公開された、星野源さんとオードリー若林さんのトークプログラム。今年ずっと、心の支えだった。お礼を言いたい。

佐久間宣行さん&オードリーは、今年もたくさん、楽しませてくれた。あちこちオードリー、夏のオンラインライブ、トークサバイバー2、東京03×Creepy Nutsライブ、ドラマ「だが、情熱はある」。全てが思い出深い。ノブロックTVも面白かった。特に鈴木おさむさんのトーク回は、目まぐるしくて引き込まれた。


当時の記事「LIGHTHOUSEの灯を、道しるべに進む」
https://note.com/employee_k/n/n534900e8e66b

当時の記事「だが情熱は、ある」
https://note.com/employee_k/n/n3690b1679aca

当時の記事『ブラックマヨネーズの「正直」を貫く覚悟』
https://note.com/employee_k/n/nf3a370b0c8df

当時の記事『東京03ライブ「FROLIC A HOLIC」は、ウィー・アー・ザ・ワールドのようだった』
https://note.com/employee_k/n/n7abc38bb86bc

ノブロックTV  鈴木おさむさん出演回
https://www.youtube.com/watch?v=FlUBeiSUTmg

その他

書籍でいうと、野口聡一さん矢野顕子さんの共著「宇宙に行くことは地球を知ること」、あと「世界で最も美しい10の科学実験」「言語の本質」あたりは面白かった。

そして、2023年はなにより生成系AIと、インターネットにどっぷり浸かった一年だった。生成系AIは、時代の転換を真正面から感じた。ホワイトカラーの産業革命、その瞬間にいた一年だ。個人的に、今年ちょうど仕事も節目を迎えたこともあり、いろんなことを新たに試す一年になった。この機にYouTubeチャンネルも始めたし、noteもなんだかんだ一年、更新し続けた。2024年も、生成系AIとインターネットで、めいっぱい遊ぶ。

* * *

もうひとつ、自分のために、ここに記しておきたいこと。

エンターテイメントは、安全と健康の土台の上にしか存在しえない。私が、こんな呑気な話をしていられるのは、いま私が充分に満ち足りているからだ。

ガザの夜を想う。ウクライナの夜を想う。能登半島の夜を想う。

天災は、外野から何も手助けができない。(石川に義援金は送った。こういうときは、それ以上、何もしない。その方がいい)あとは、そこにいる人の無事を祈るだけだ。

ならば、せめて人災を減らそう。世界のどこかで、暴力に怯える人が、一人でも少なくなるように。そのためにできることを探す。

参考文献

10位
https://www.asahi.com/articles/ASR8Y6H19R8YUHBI024.html


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