モンティ・ホール問題のプロセカ的解説

モンティ・ホール問題とは、確率論の問題で、ベイズの定理における事後確率の例題の一つです。

その内容のシンプルさと、シンプルなのに理解できない難解さのギャップから、「シュレーディンガーの猫」と同様に漫画や映画の題材としてよく取り上げられている印象があります。

モンティ・ホール問題は、それが生まれた経緯からしてめちゃくちゃ面白いのですが、それは各自ググっていただくとして、ここではその概要を把握して、納得してもらうことを目的として解説します。

自分は専門家ではないので、数学的な議論を詳しく行うことはしません。詳しい方のツッコミはご容赦ください。

モンティ・ホール問題とは

モンティ・ホールというのはクイズ番組の司会のおじさんの名前で、本当はこのおじさんとヤギと車が問題に登場するのですが、それだとやる気がわかないので、ここではLeo/needの天馬咲希ちゃん(さきちゃん)と望月穂波ちゃん(ほなちゃん)に登場していただきます。

さて、あるときプロセカ運営がヤケクソになり、ある特別なガチャを発表しました。
それは、「3つのドア(?)から1つ選ぶ単発ガチャで、内容は☆4のほなちゃんが1枚、☆2のほなちゃんが2枚」というもの。
ちなみに☆4のほなちゃんは僕がまだ引けていない、「ありがとう、勇気」と確定しています。最高ですね。

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プロセカの☆4排出率は3%ですが、なんと今回の単発ガチャは1/3、すなわち約33%で当たりが出ます。ただし1回しか挑戦できません

さて、運を天に任せて1つのドアを選ぶと、ここでさらに特別演出が入ります。
さきちゃんが突然ガチャ画面に乱入し、「☆2ほなちゃんが入っているドアを開けてくれる」のです。
☆2ほなちゃんは2枚ありますから、自分が最初に選んだのが☆4でも☆2でも、さきちゃんは必ず☆2ほなちゃんのドアを開けることができます。
そして、画面には以下のようなポップアップ表示が出ます。

「最初に選んだドアを、残りの開けられていないドアに変更することができます。変更しますか?」

さて、ここでユーザーはドアを選び直すべきでしょうか?

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もったいぶっても仕方ないので答えを言うと、「選び直すべき」ということになります。
これは、僕たちの常識とは相容れない答えのはずです。
だって、さきちゃんがドアを開けるか否かにかかわらず、最初からガチャの結果は決まっています。
さきちゃんのドアが☆2だったので、自分の選んだドアは1/2の確率で☆4のはず。これは、選び直したところで変わりそうもありません。

モンティ・ホール問題は、まさしくこの違和感が大きな原因となり、激しい議論が巻き起こりました。正確にはルールがもう少し曖昧だったため、解釈が分かれてしまったのが最大の原因のようですが、プロの数学者すらこの結論を認めない人も多かったそうです。

どう考えればいいのか

この問題において、初見の人が飲み込みにくいハードルが2つあると思っています。

①「確率が変化する」ことについての考え方

② さきちゃんの行動が、なぜ確率の変化につながるのか

順番に説明していきます。

〈①について〉
まず、この状況において「ドアを選び直すべき」というのは、言い換えると「残りのドアのほうが当たりの確率が高い」ということになります。
初めはどのドアも同じ確率で、中身がシャッフルされたわけでもないのに、なぜ突然確率が変わってしまうのか。ここがまずよくわからんポイントだと思います。
これには、「自分から見ると確定していない状況に、ヒントが与えられる」と考えるのがいいかなと思います。

たとえば、4択の問題がさっぱりわからないとき、自分が正解を選べる確率は1/4です。ただ、頭を捻って考えているうちに、選択肢①はちょっと違いそうな気がしてきました。
そうなると、①と②以降の選択肢は、明らかに正解である確率、すなわち「価値」が当初とは異なってきます。

これと同じことが起きていると考えてください。
最初はどのドアも等しい確率の状態で選んだけれども、外部のヒントによって、ドアの「価値」に違いがでてきた。だから選び直す。
これが、「確率が変化する」ことの意味となります。

〈②について〉
では、なぜさきちゃんの行動が、外部のヒントたり得るのか。ここがモンティ・ホール問題のミソです。

最大のポイントは、「さきちゃんは当たりのドアを開けられない」ということです。
ここをもっと考えやすくするために、星野一歌ちゃん(いっちゃん)に登場してもらいましょう。
さきちゃんは時々間違って、当たりのドアを開けようとするとします。その場合、いっちゃんがこっそりフォローして、当たりの☆4ほなちゃんを残りのドアの☆2ほなちゃんと入れ替えます。
いっちゃんのおかげで、さきちゃんは当たりのドアを開けることはありません。

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このとき、さきちゃんが最初に引いた☆4ほなちゃんは、残り1つのドアに必ずあります。
ユーザーが最初から☆4ほなちゃんを引く場合は、もちろんこれに当てはまりません。でも、全体的に見ると「さきちゃんが☆2ほなちゃんのドアを必ず開けるとき、残り1つのドアの『価値』が高まる」ことは間違いないのです。

上の図に、ユーザーが選択したドアを加えて考えると以下のようになります。

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最初にユーザーが選んだとき、当たりを引ける確率は当然1/3です。
そして、残り2つのドアのどちらかに当たりがある確率は2/3です。
さきちゃんの行動により、残り2つのドアのうち、ハズレが確定します。
すると、もう一つのドアの「価値」が高まり、確率は2/3となります。

なんだか狐につままれたような気分でしょうか?
ダメ押しでもう一つ考え方を紹介します。
ドアの枚数を1000枚に増やしてみましょう。

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ドアが1000枚あり、当たりの☆4ほなちゃんは1枚だけです。FGOもびっくりのクソガチャ。
このとき、最初の選択で当たりを引ける確率は1/1000。
ただ、さきちゃんが残り999個のドアのうち、998個のハズレを教えてくれました。
残るドアは2つ。選び直すか、選び直さないか。
ここでも、「ユーザーが当たりを引くにしろ引かないにしろ、さきちゃんは必ず998個のハズレを教えてくれる」ところが重要です。
だから、自分が最初に選んだドアの価値は全く変わりません。1/1000のままです。
答えは、もちろん選び直したほうがいい。そのドアが当たりである確率は、999/1000、すなわち99.9%です。

ドアを選択するタイミングの意味

さて、以上がモンティ・ホール問題の概要になりますが、一つまだ腑に落ちない点があります。
それは、ドアを選択するタイミング。

この問題では、「ドアを選択した後」にさきちゃんがハズレを教えてくれます。でも、最初からハズレを教えてくれていたら、残り2つのドアから1つ選ぶだけなので、確率は1/2。
ハズレが確定するのがドアを選択した後かどうかだけでなぜ確率が上がるのか。これはいわゆる「パラドックス」というものではないか。

これも、パラドックスではない、ということで結論が出ています。
このタイミングの意味は、「ユーザーがハズレの情報を知るのがいつなのか」ということを意味しています。
もし最初から3つのドアのうち1つのハズレが確定していたら、当然1/2の確率で当たりのドアを選べますが、この情報を知らないで選ぶと1/3の確率になります。つまり、ハズレの確率が高い状態なわけです。
この状態で「ユーザーが選んだドア以外で」ハズレ情報が出るので、残るドアの当たり確率は高まります。これは、ハズレ情報が出るタイミングにより、情報の持つ価値が変わると言い換えることもできます。

同じことですが、先ほどのドアが1000枚の例をもう一度考えてみましょう。
最初から998枚のハズレ情報が出ていれば、残り2枚のドアの価値は均等、1/2です。
ただその情報がない状態で1000枚から1枚のドアを選ぶと、それはぶっちゃけ実質ハズレです。
そこから998枚のハズレ情報をさらに教えてもらえるので、先に教えてもらった場合に比べて、1枚ハズレ情報がプラスされている……ようなものと考えることができます。だからドアを選び直すことで、99.9%の確率で当たりを手にすることができるのです。

あとがき

モンティ・ホール問題は、理屈は難しくありません。
なのに、こんなにも理解するのが難しい。

このギャップこそが、モンティ・ホール問題の一番の魅力だと思います。この記事はフォロワーさんに解説を頼まれたことがきっかけで書きましたが、自分の頭の中の整理にも大きく役立ちました。

ちなみにプロセカはエンジョイ勢でイベントあんまりやれてないレベルですけど怒らないでください。


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