春田さんのクソでか激重LoveにDeadした件~愛は長さでも深さでもなく、重さ~

もう、とにかく驚いた。
ドラマから観ていたファンは冒頭の「ニーハオ」直後の春田を観て腰を抜かしたんじゃないか?私は抜かした。とにかく驚いた。そして静かに席で狂喜乱舞した。「私の観たかった春田だ!!!!」と叫びたいほどだった。
春田ったら、いつのまにそんなに牧大好き人間になっちゃったの!?「好き」どころじゃないじゃん!そんなレベルとっくに天元突破して、激重溺愛男になってんじゃん!あのブラックアウトから一年、何があったの!?

春田、そして彼を「生きた」田中からの牧への愛情は勿論、知っていた。知っていたが誰があんな春田を予想していただろうか。
ドラマ公式本のインタでもあったが、「春田は最初から牧が好きだった」。それをじっくり丁寧に、春田の心情をなぞりながら、紆余曲折を経てやっと牧に伝えられたのを私たちはドラマで観た。7話、橋の上でプロポーズした春田に、快哉を叫んだものだ。そしてラストシーン、今まで牧の押せ押せ攻撃にたじろいでいた春田は、あの色気大放出の「んなわけねーだろっつーの」をぶっ放した。これを聞いて悶絶しなかった視聴者はいるのか?
いや、いない。(反語)断言するが、いない。

でも私たちの知っていた春田はここまでだ。
田中と林の関係性や彼らの口から春田と牧の感情が、ドラマ終了後にたくさん漏れ出たことから、「あ、そんなに好きだったのね」と知ったが、田中はあくまで春田を演じた田中として言っていたのであって、劇中の春田から牧へ向かうでっかい矢印はこの目で観ていなかった。7話までの牧をみていて、早く春田に愛されてくれ!と星に願い、毎晩枕を涙で濡らした我々からすれば、春田の愛を少しだけ垣間見た7話だけでも、大盛りごはん10杯は食べられるほどだったけれど、まさか、劇場版であんなことになってるとは思わなかった。え、思わなかったよね???

【春田と牧の、未来を見る視点のズレ】

私が思うに、牧は、「付き合ってください」と言った時、単純に「好き」という気持ち(のみ)でそう言ったんだと思っている。
自分は春田が好き。だから付き合ってほしい。この2つのみ。
そこには、現在の延長線上にある未来のことは含まれておらず、単純に「今」好きな春田といたいと思う故の告白だったのだと思う。誤解を恐れず言うと、この牧の告白は、高校生が「好き。付き合って」と告白するのと感覚としては変わらなかったのかなと思う。そこには「結婚まで見据えて末永く関係を維持したい」という現実的な未来は殆ど含まれていないはずだ。(ゲイの友人たちの話を聞いた中でも、「ずっと一緒にいたい」と思って告白するのではなく、「好きだから付き合おう」という現時点での感情を重視している、という意見があった)一方で「永遠に一緒に」くらいすっ飛ばした抽象的で曖昧な夢のようなことも思ったりもする。それは現時点しか見ていないからこその、抽象性だ。要は、「今、この瞬間」の感性が強い。

対して春田は、牧が好きだ、と気付いたと同時に、「ずっと一緒にいたい。だから結婚してほしい」というプロポーズをした。つまり、牧よりもっと先の時間軸で二人の関係を見た。
「ずっと」、つまり今を積み重ねていった先の未来である。
ここで、二人の視点にズレが起きた。
牧も言葉としては分かっていたとは思う、「ずっと一緒にいたい」。
だが、好き⇒付き合うと考えていただろう牧に、そんなに先は多分7話時点では見えてなかった。いや、見えてたかもしれないけど、それは近未来に過ぎなくて、変な話、数ヶ月後ぐらい先で来年は見えてない、ぐらい。一方の春田は年単位、みたいな。
距離に置き換えたら、牧は足元~半径2mくらい、春田は50m先くらいをみているような、そんな時間軸でのズレがあったと思う。もちろん春田もはっきり見えてたわけじゃないだろうし無意識のはずだ。しかし、牧よりはぼんやりしながらもあったはず。春田は橋の上で牧を呼び止めた時点で、恐らく顔を上げて遠くを、牧との未来を見ていた。

ここで宇多田ヒカルの「Eternally」という歌を参照したい。
これの草稿書きながら丁度聞いてて、「え、牧じゃん!」と思ったのだ。オタクは何かっちゃ歌と絡めたがるので、ご容赦願いたい。

<いつまでも見つめあっていたい
 いつまでも側にはいられない
 この瞬間だけは永遠に >

都合の良い部分だけ抽出したが、要は牧の感覚はこれである。
今すごく好きでそれはずっと続いて欲しいけれど、いつかくるかもしれない終わりがあることも分かっている。終わらないでほしいけれど、終わらないかどうかもわからない。だからせめてこの瞬間=今だけは凍りつかせるように、そのまま永遠に。
この歌詞には恋の刹那的な激しさと切なさと曖昧さが込められていると思う。今2人でいるこの瞬間が何より愛しくて、その儚さが更に愛しさを増長させる。
そしてEternally、永遠に、と言いながらも、永遠がないことを分かっているかのよう。永遠に、は願いだ。
一方、春田は未来に向いている。春田の中で、牧との日々は止まらない。積み上げ型なのである。
今も、5年後も10年後も50年後も、その時それぞれの牧と自分を信じている。
牧が今という「点」なら、春田は未来まで続く「線」だ。

人を好きになった時の、今を切り取りたい恋の儚さとそれ故の愛おしさもわかるし、人を愛した時に、春田のように2人のいる先しか見えない明るさもすごく分かる。OLってすげぇ…

結果、この時間軸のズレがあるまま、劇場版で二人はすれ違う。色々な要素で溝ができたのだとは思うが、このズレも作用したのではないかと個人的には思っている。

【長さでも深さでもなく、重さ 】

春田は無自覚に、無意識に、7話時点で腹を括っていた。
もう覚悟していた。一生、牧を愛することを。
愛してしまうことを。
それを牧も、私達も分かってなかった。
だから私達は劇場版の春田に驚いたのだ。春田の内側はきっと殆ど変わっていないのに、である。

そして、牧は春田のあの10の誓いの言葉で、(改めて)分かったのだと思う。春田からはもう逃れられない、と。
腹を括ったんだと思う。
まぁ牧もそもそも逃れる(別れる)つもりもないのだけれど、春田は自分よりずっとずっと自分といる未来を見ていて、それが当たり前と思っていたことに、「今」の視点で関係性を見ていた牧は驚いたのではないかと思っている。

牧が未来を見えて(見て)いなかったのは、前述の「今」の視点があるからは勿論だが、見ると直面する問題や悩みがあることを、春田よりも明確に認識していたからだろう。
もしかしたら7話後、描かれていない1年のどこかでひとり冷静になった牧は怖かったかもしれない。
確証の無い未来を漠然と話す春田が、春田との関係が余計に儚いと思ったかもしれない。
深くなればなるほど、今この瞬間じゃなくて、この先も春田との日々が続けば、と思った時に、これから色んな悩みが春田を悩ませる可能性を思うと怖かったと思う。今2人が良くても未だ来てない未来は2人には辛いかもしれない。だからきっと、これまでも、牧は結婚について春田に何か言われていたら今回(Genius7やら)のことがなくても誤魔化していたかもしれない。そんな怖いかもしれない未来よりも、甘い恋人の時間を楽しみたかったかもしれない。
だって牧は、今好きな人を好きでいることを、恋を全力でする人だから。
だから2人きりになると、春田をすごく好きな牧に切り替わって、2人の時間を愛おしいものとして、春田にネクタイグイはするわキス誘ってると見せかけてきんぴら食べさせちゃうわ花火大会で浮かれちゃうわ、春田の恋人としての顔を見せた。多分、「大丈夫、大丈夫」って自分に言い聞かせながら。春田さんを好きな気持ちはある、ちょっと不穏な感じになっても大丈夫、って。

一方春田は、恋を通り越していた。行動自体は恋人にデレデレになる恋を楽しんでいる人そのものだけれど、中身はあんな重たいことを思ってしまう人だ。恋どころの話じゃなかったんだ。
春田は今も未来も全部、その人ごと見ている。
なので春田は劇場版で未来(=結婚)について牧とズレがあると気付き(多分「結婚って本気で言ってます?」発言から)初めて、牧が懸念していた「これから」あるかもしれないことを考えた。
自分の当たり前のようにあった「ずっと牧と一緒に」は、果たしてどういうことなんだろうか、牧にとってはどうなんだろうか、ってちゃんと考えたんだと思う。
牧とならなんとかなるだろー、ってあっさり片付けたのかもしれない。
実は結構悩んだかもしれない。(そうは見えなかったけど)
でも結局、牧とずっと一緒にいたいという春田の想いが変わることはなかった。というか、変えられなかったんだろうな。
何があってもどうしても、牧と死んでも一緒にいたいという自分の願いが、未来が変わらなかったんだ。
それは多分、牧と別れることになった時でさえ、消えなかったと思う。
早い話が、春田の「牧とずっと一緒にいたい」は、牧の意見は関係ないくらい、春田は何がなんでもそうしたいという春田の強い欲望であり、意思だ。

この春田の欲望は、「結婚」というベールに包まれて一見ロマンチックに見える。しかしそれに透けて見える春田の真意や自己中心的とすら思えるほどの強い想いがあると気付いてからは、春田が普段ふにゃふにゃ可愛い雰囲気出してるのに、中身が雄というかちょっと過ぎた感情を持て余しているんじゃないかとすら思えて、もう五体投地しかできない。

ともあれ結果的に、春田の「ずっと牧と一緒にいたい」は7話のプロポーズから何も変わらなかった。
そんな春田のあの誓いを聞いて、牧はどう思ったんだろうか。
嬉しい。自分もそう思う。
もちろん、そういうのもあっただろう。
でも、私は、ちょっと怖くも思ったんじゃないかと邪推する。
生きるか死ぬかの瀬戸際で、未来を、死んだ先まで自分といることを、描く春田に、「ああ、これはもう逃げられない」って思ったんじゃないか。観念したんじゃないか。
牧は、自分と春田、周囲の人、自分の夢、現実的な生活、を考えているのに、この男は、こんなにも牧のことしか見えていないのである。
一心不乱すぎないか、春田。
っていうかすっげぇ重い男だったんだな、春田。

念押しするが、もちろん牧だって春田から去るつもりなんて更々無いと私は思っている。牧の気持ちが春田に負けているとは思わない。
でもなんだろう、質というか重さというか圧が違う気がするんだ。
牧もこんなにも春田の愛が強くて重い、ってこの時までは思ってなかったんじゃないか?それまでは、牧にとって春田は相思相愛でラブラブでいちゃこけるちょっと面倒くさいところもあるかわいい恋人だったのに、その内側で、これから先の人生どころか、死んでも自分といたい、と思っていたなんて。
あんな可愛い挙動してて、実はこんな激重くそデカ愛情を内側に秘めてた春田を、牧は嬉しくもあり怖くもあったんじゃないかな。

でもまぁ結果的に、この春田の重たい愛情は、牧にとって安心材料になるので問題はない。
「俺といても幸せになれませんよ!」と叫ぶ牧の根幹は、この一年やそこらじゃ変わってないだろう。いくら春田と両想いになれて、春田も自分と同じような想いを返してくれて、それに少し慣れた頃だとしても。
春田のこの重たい誓いは、悲観的でリアリストで心配性な牧には、絶大な安心感をもたらしたはずだ。愛した人に、愛されることで得られる安心感は、終わることや続かないことを胸のどこかに秘めながら今の恋を一生懸命大事に慈しんでいた牧にとっては、救いだったんじゃないか。
何が何でも自分をいつまでも、愛してくれると、こんなにも重たい言葉と激情で保証してくれたのだから。
だから、二人で縋り付くように抱きしめあったのかなと思う。
牧は、春田の想いが途方もなく深く重く大きなことに喜びと畏れを抱いて。
春田はただただ純粋に、牧との未来を、牧ごと抱きしめて。

【逃がす気なんてないくせに】

爆炎プロポーズは、ともすれば狂気的なほど、春田の愛が重い。
あれを例えば現実世界で言われたらどうだろう。自分が誰かに言われたらいくら好きで結婚したくても、ちょっと引いてしまうかもしれない。嬉しくても、なんか、追い詰められたネズミのように、観念してしまうかもしれない。もう、無理逃げられない、と。重い愛で窒息してしまいそう、と。でもそれでもいいかな、って、この人となら窒息してもいいかな、って思ってしまうのが、恋の、いや愛の狂おしいところだと思う。
好きだから、一緒にいたい。
好きだから、自分のものにしたい。
それが行き過ぎて殺してしまいたい、なんて、それこそ重たいラブストーリーにはいくらでも出てくる。
あなたが好きだから、とその手を離す牧。
あなたが好きだから、と死んでも一緒がいいと言う春田。
どっちも重たい。けど、春田の方がちょっと怖い。
何がって、逃す気なんてさらさらないのに、そう言ってるからだ。

「言ってもいい?」って春田は(一応)確認する。
でもその実、牧に拒否されても、牧がなんと言おうと、多分今の春田は絶対逃がさないと思う。
花火の時の「一生1人で抱えてろよ!」は一生2人でいることを前提としていたからこそ、それをさせなさそうな牧に対する苛立ちだったのだと私は捉えている。
それを言葉にした春田は、自分で言いながらすごくすごく傷ついた言葉だと思う。(勿論牧も)
一生、牧の悩みも喜びも苦しみも全部一緒に背負おうと無意識に思っていたのに、裏切られた気分だったから。 (牧父への反論:辛い時こそ2人で支え合いたいという言葉にも春田の思考が透けている)

2回目見て、あの誓いを言った春田の真意に思いついてから、劇場版を見る目が変わった。
浮気を疑われた時も、第二営業所で「牧は?」と聞いた時も、わんだほうから帰宅した時も、牧が家を出た時も、きんぴら橋の時も、花火の時も、狸穴さんベッドにダイブした時も、春田の愛は、爆炎プロポーズで明示されたような圧と重さを秘めていたのか!!!「まきまきまきまきまきまき!!」ってあんなにかわいく言ってるのも、実はクソデカ激重膨大な愛情と独占欲によって出てるものってこと!!?と思ったら、なんというか、手放しできゃっきゃ喜ぶどころか、ぐうぅ、と唸って地面にめり込むしかない。なんって重くて強くて狂気的なんだ。ちょっと怖い。でもこんな風に愛されたくもある。ぐうぅ~~~~!!たまらん。

【自覚した両思いは最強】

これ100万回言いたいんだけど、自覚した両想いの春田はすごく強いと思う。牧の為ならなんだってできる。なんだってする。牧との未来のためなら、きっとなんだって。それぐらい、春田の愛は大きくて、怖いほどに強い。それはあのすぐ不安になったり悲観的なったりするプライド高くて頑固で寂しがりやな牧が、「だめだこりゃ!」と考えるのをやめてその腕に飛び込んでしまうほどだ。いや、そんないかりや長介みたいなこと言ってないし飛び込んでもないけど、これからもぐだぐだこまけぇーこと言うリアリストな牧を、春田のそのでっかい愛で潰れてしまうくらいに抱きしめて、酸欠にするほどキスしまくって黙らせて、不安になんてなる暇ないくらい全人類で一番幸せにしてしまえ!と叫びたい。
いや、私なんぞが言わなくても、春田はそうするだろうけれども。
あー良かった!
春田が牧をこんなに好きになった姿を見れてよかった!幸せ!私が幸せ!
ありがとうありがとう、本当にありがとう地球!!!

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