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【レポート】brand design hub #1 - 想いからつくる、ブランドの核 -

こんにちは。ミクシィでデザイナーをしているえんあかです。
先日、「brand design hub」というブランドデザインをテーマにしたイベントの第1回目に参加してきました。

イベント概要 
経営戦略・マーケティング戦略・ビジネス戦略……そしてそれぞれの組織やプロダクトへの想いに基づいたブランド設計は、現場でどのように行われているのでしょうか。 組織/事業/製品/販促など多岐にわたる事例を踏まえながら、コンセプトの言語化から世界観構築、CI/BI/VIデザイン、各種 ツールのビジュアルデザインまで担い、人々の認知変革に寄与するブランドデザイナーたちの挑戦をお届けしたいと思います。(イベントページより引用)

今回は私自身初めてのnote枠での参加📝WebやUI/UX畑の私にとっては、広告や施設のブランディングの話は事例やお話を聞く機会が少ないので、新しい気づきが多かったです。自分的に「なるほど〜」と感じたことを中心に記事にまとめていこうと思います💪


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【パネルディスカッション:登壇者4名   価値の生み出し方、価値の育て方

こちらの4名によるパネルセッションが行われました。お一人ずつ自分のお仕事を例に、ブランディングによる価値の生み出し方、育て方をお話されました。

山口 崇多 さん( フリーランス アートディレクター / グラフィックデザイナー)
松本 隆応さん( コイニー株式会社 / ヘイ株式会社 リードデザイナー)
片山 翔平 さん(株式会社資生堂 クリエイティブ本部 アートディレクター / グラフィックデザイナー)
漆原 裕貴 さん( 株式会社マッチングエージェント チーフデザイナー)


山口 崇多さん『第三者の自分だからこそ客観的な視点でストーリーを作れる』

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フリーランスのアートディレクターをして活躍されいる山口さん。今回紹介されていたのは、福島県いわき市のオーガニックコットンを扱う「株式会社 起点」のブランディングの案件でした。

ロゴを作成する中で、起点というワードが山口さんは引っかかり、そこからビジュアルイメージやストーリーを膨らませていったそうです。川のラフスケッチから、「これって山にも見える?」という気づきに。川と山の共通点は自然。これはオーガニックコットンにもつながる。

また、起点という会社は震災によって全てを失い、ゼロからまた事業を始めたという背景があります。自然も山が生まれ、そこに川が流れだす。会社のストーリーとリンクする。これはいけると感じたそうです。

山口さんの言葉で印象的だったのが、「会社の歴史を知らない第三者の自分だからこそ客観視してストーリーを描ける」という言葉です。当事者たちとは違う視点で見ることで、当事者が気づかなかった新しい切り口や発想が生まれるのだなと思いました。


松本  隆応さん『CIは仕立屋さんのようなもの。使ってもらう中でストーリーは生まれてくる』

ヘイ株式会社はSTORESCoineyなどのサービスを運営されている会社です。今回はheyのCIを設計する上で意識していたことのお話しでした。

heyのCIの設計プロセスでは代表からヒアリングした会社のイメージやキーワードを元にロゴを作成していったそう。そこで松本さんが意識したのが、代表と対話をしながら作っていくということ。

CIは仕立屋のような役割で、イメージを元にグラフィックに落とし込んでは、「これどうですかね?」と投げかけ、「もっとこんな感じにしたいな」などフィードバックをもらう。これの繰り返しとのこと。このように、イメージを与えて対話を続けると結果、気に入って使ってもらえるものができ、愛着も生まれる。確かに、洋服の仕立屋さんのようですね。

また、heyのブランディングの世界観はあえてコントロールせず、自由に羽ばたかせたそうです。結果、heyでは社員がこのロゴを使って様々なノベルティやTシャツを作成。今では毎日数人は会社でそのheyのロゴ入りのTシャツをきて仕事をしているほど、愛されるブランドになっているそう。

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私自身もノベルティやWebなどでheyのCIに触れる度に、かわいいなとかおしゃれだなという好印象を抱いていました。CIってガチガチにコントロールして外部からの印象を統一するのが多いですが、heyではみんながCIに触れることで、世界観が育っていき、愛着があるからこそCIを丁寧に扱い外に羽ばたかせている。結果、社内だけでなく社外でも愛されるブランドになっているのだなと感じました。


片山 翔平 さん『ブランドの歴史を尊重しつつ、時代の流行をどう取り入れていくか』

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長い歴史を持つ資生堂ブランド。資生堂ブランドとしては、自然にあるモノを取り入れたり、アール・デコ様式を活かしたデザインを大事にしているとのこと。特に余白の取り方は意識していて、日本らしさを大事にしているとも話されていました。

このアール・デコ様式ですが、いまはそれがガンガン出てくるとおばさんっぽかったり、古い印象を与えてしまいかねない。なので、資生堂の歴史を尊重しつつも、トレンド感も重視しているとことでした。流行に敏感な若い世代に受けることを意識し、現代の女性像や女性らしさを表現したグラフィックを日々研究しているとのことでした。

デザイナーは言語じゃなくビジュアルで伝えられる強みが大きいともおっしゃっていました。女性の笑顔1つとってもいろいろあり、微妙な目線の動きや目の表情で受け手が感じることは違う。その細かい印象を大事にしていて、そこが全てでもあると強く語られていました。

男性である片山さんが、若い世代の気持ちを理解するために、SNSでの行動を研究したり、女の子の気持ちを紙に書き出してみたりしているというお話は、とてもギャップがあって面白かったです。


漆原 裕貴 さん『ビジネスとして成立させるためには、ブランディングも変化していくことが重要』

市場で2番手のマッチングサービス「タップル」のブランディングリニューアルを事例に、事業フェーズによってブランディングを変化させる重要性を話されていました。

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例えば、新規立ち上げ時のフェーズだったら、ブランディングをそこまでやりすぎる必要はない。そのフェーズで求めているものはクオリティではなく、まず市場にリリースして検証すること。 デザインはこだわると手放せなくなりがちなので、何のためにやるの?を気にする必要があるとのことでした。

昨年にブランディングのリニューアルした時のフェーズは、もう市場が成長している状況。しかし、まだまだマッチングアプリって危ないのでは?という雰囲気があったので、もっと健全な男女の出会いを訴求していきたいという思いがあったそうです。

そこでの葛藤がブランディングと売上のバランスをどう取るか。例えばTwitter広告では、マッチングアプリって軒並み少しエロい感じのクリエイティブが多い。でもそれは結局、効果が良いからそうなっているのだが、印象調査のデータではそれらの広告は好意的には思われていない。

好意=利用意向とはならない難しさ、イメージ悪くても利用するという矛盾。その中で各経路の数値を追い、分析し、イメージを損なわずに利用意向を高める勝ちパターンを模索しているとのことでした。

私自身も以前マッチングアプリのリニューアルを担当した経験があったので、お話の内容にはかなり共感しました。私は「売上に繋がるのか?」と言われた時にそれを説得するほどの武器を持っておらず、上司を説得することができませんでした。自分の役割の幅を決めずにデザイナーでもビジネスを語れること、それには数字を見る力と、それを根拠として相手を説得する力が必要なんだなと感じました。


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ここからは基調講演としてこちらのお2人のお話をお聞きしました。

色部 義昭さん( 株式会社日本デザインセンター 色部デザイン研究所 取締役|グラフィックデザイナー)
徳野 佑樹 さん(TBWA\HAKUHODO Disruption Lab Head of Art / Senior Art Director)

ITや事業会社以外のデザイナーの方のお話を聞く機会は私自身はそんなにないので、アウトプットの華やかさもそうですが、世に与えるインパクトの大きさと責任を感じました。

【基調講演:色部 義昭さん 】  目印と矢印 「そのモノにしかないデザインをこだわる」

今回の講演では、「目印」と「矢印」というテーマでお話していただきました。「目印」とはそのプロジェクトの目指す方向性、ブランディングのこと。「矢印」は正しくその目的に向かうことができるようなルールの整備のことで、具体的には施設のサイン計画や商品のパッケージのレギュレーションルールなどがそれに当たるとのことでした。

色部さんが大切にしている「目印」と「矢印」の概念をいくつかの事例を元にお話いただきました。今回はその中から自分が印象に残った事例をいくつか紹介します。

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まずは市原湖畔美術館のロゴデザインと施設のサイン計画のお話しです。(一覧画像の左の上から2つ目)施設自体は元々あったのですが、2013年にリニューアルをし、その際、美術館自体の名前も含めブランドデザインされたとのことでした。

この事例のお話しでもっとも印象に残ったのは、「そこの場所にしかないデザインをこだわっている」という色部さんの言葉です。

実際に色部さんが現場に赴き、そこで感じたのが、近くにある湖の湖面のきらめきだったそうです。今回の「目印」はその湖面のきらめきであり、それを動くロゴで表現し、美術館の名前にも「湖畔」というワードを入れたとのことでした。

今回の事例の「矢印」の役割は施設内の導線や場所を示すためのサイン計画。ここにはも現場を見て感じたことが多く反映されているとのことでした。この施設は曲面が多くいびつな作りだと気づき、そのいびつなところも魅力的にするよう、トイレなど場所を示す矢印を点線にしたりしたそうです。美術館は急いで目的地に向かう施設ではなく、ゆっくり展示作品や空間を楽しむもの。なので分かりやすさよりも遊び心を優先しているとのことでした。

まず現場やユーザーを見ることが大切だ、ということはどんなデザインにも通じる言葉だなと思いました。周辺環境、建物、人、それを取り巻く全ての要素を観察することで、その場所に合った、その場所だからできる独自のブランディングになるのだと感じました。

もう1つ私が印象に残った事例がNaturaglaceのパッケージデザインです。オーガニックで肌に優しいというすでにある商品コンセプトをどのようにブランディングし、パッケージとしてのビジュアルに落とし込むのか。

その商品にある特徴として注目されたのが、オーガニックで植物の成分を使っていること、そしてそれぞれの化粧品アイテムごとに使われている植物が異なるという点でした。そのまま寝ても大丈夫なくらい肌に安全というファクトから水彩タッチのグラフィックにし、そのグラフィックは統一しつつも、使われている植物に合ったカラーでアイテムごとに変化をつけるというパッケージになったそうです。

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このようなパッケージのルールなどを初期設定のデザインと呼んでいるそうで、今後ラインナップが拡張した際にも対応できるようなルールになっているとのことでした。まさにこの初期設定が「矢印」であると感じました。この「矢印」も新たに生み出したものではなく、その製品の特徴から生まれたものです。

色部さんが最後に、ブランディングはそのモノがある場所、人、持っている特徴などのすでにあるものを観察することが大切で、そこから始めるとアイデアが出ないことはない、とおっしゃってました。誰でも独創的なアイデアを意識しすぎて本質からずれてしまいがちですが、大事なのはそのものを観察することで、さらにそこから柔軟に発想を広げる力をつける訓練がひつようだと感じました。


【基調講演:徳野 佑樹さん 】  デザインの領域の拡大 「伝わり方までデザインする時代」

ブランドデザインはブランドやその商品の持つ力をデザインで解決すること。ツールなどの進化によって誰でも簡単にデザインが作れるようになり、またコミュニケーションの手法も複雑化している。その中でアートディレクターはこの時代と社会でどう価値を出していくべきかということを、事例を元にお話しいただきました。

紹介された事例の中で特に印象残ったのが、「注文を間違える料理店」のブランドデザインでした。

この料理店で働くスタッフの方は認知症の方たち。間違えるということをあえて前に出すことで認知症の方も働きやすく、来店された方もその暖かい空間自体を楽しむという世界観がお店には生まれていたそうです。

徳野さんがブランディングで大切にしたのが、「 良い人が企画した良い人が来るイベントには絶対しちゃいけない」ということだったそうです。働くスタッフの認知症の方にも仕事としての誇りをもってもらいたいし、お客さんにも慈善の気持ちで来て欲しくない。なので、手作り感を出さないよう、料理や内装、スタッフのユニフォームなどのクオリティにはこだわったそうです。

この本物らしさにこだわることは、「まちがえてもいいじゃんっていう世の中に」という本当のメッセージを伝えることに繋がるということでした。結果、このプロジェクトはSNSでも話題になり、様々なスピンオフの企画が生まれたそうです。

大切なのは絵をデザインするのではなくメッセージをデザインすることであるとおっしゃっていました。私もそうですが、デザインの領域としてまだまだ絵までだったり、考えてもその場としての空間までしか思考が及んでいないなと気づかされました。大切なのは単なるイベントとしての成功ではなく、どうこのメッセージを広く伝えて、世の中を変えていくのか伝わり方までを想像力を使って考えることがこれからのデザイナーとして必要なことなのだと感じました。



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今回のイベントを通して、一言にブランドデザインといっても、業界や各事業のフェーズ、目的に応じてアプローチや大事にしているポイントが全然異なることを感じました。

私はITやWeb系と呼ばれる事業企業のデザイナーなので、ブランディングを確立するより、まずリリースして売上やユーザー数を伸ばすということが重視されがちです。しかし、人の心を動かせる大きな手段がブランディングであると思うので、そこを丁寧に行うことは結果、事業としての成功、売上に繋がってくるとも思いました。

今回は有意義な時間をありがとうございました。第2回も楽しみです🙌

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会場のAbema Towersのエントランス。Abemaくんの像が可愛かった🥰


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