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「できたこと」を数える

あれもできない、これもできない、と「できないこと」を数えるのは、とても大変だ。だって、できないことはとにかくたくさんある。誰だってある。生まれつきできないこともあれば、育つ環境によってできないこともある。できていたはずのものが、できなくなることもある。

中には、できないことなんてない、という人もいるかもしれない。でもその人は、「できない」ことができない。

そんなとんちのような話(哲学では全能のパラドックスと言う)はさておき、ともかくできないことってやつは腐るほどある。売るほどある。数え切れないほどある。限りなくある。

無限だ。

無限にあるものを数えるのは、そりゃあ骨が折れる。その割に得るものがない。

できないことを数えるのは、無限にあるものを数える点で、円周率を暗記することに似ている。違うのは、その行為そのものを楽しめるかどうかだ。

暗記した円周率は、発表して競う場があるからいい。しかしできないことの数は、どんなに数えても発表する場がない。(書いてから「ひょっとして」と思い調べてみたけれど、ギネス記録にもそういうのはなかった。ざっと調べた限りは)

もちろん、できないことを数えるのが楽しくてどうしてもやめられないなら、それはそれで誰に否定されるものでもない。

でも、楽しくはないけどやめられない、という人もきっといると思う。

そんな人は代わりに、「できたこと」を数えてほしい。自分はなんにもできない、と口癖のように言っている人はなおさらだ。

間違えちゃいけないのは、「できること」ではなく「できたこと」を数えるということ。「できること」を数えようとすると、まるで「いつでもどこでも如何なる状況でもできる(できなきゃいけない)」みたいで、なかなか数えられなくなってしまうから。

「できたこと」なら、「朝ごはんを食べられた」でもいいし、「今日も会社に行けた」でもいいし、「ちゃんとお風呂に入った」でもいいし、「夜少しだけ早く眠れた」でもいい。「できたこと」はすべて事実に基づいているから、とても数えやすい。


でも、やってみるとわかるけれど、これが案外難しい。「こんなことできたから何になる」とか「できたうちに入らない」とか、ついつい「できたこと」のハードルを上げてしまう。

コツは、自分を自分の子供と思って行動を振り返ってあげること。いっそ「できたこと」でなく、「やったこと」と考えてもいい。くれぐれもハードルを上げすぎないように。

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