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話を聞くのは簡単じゃない。

だれでもいいから話を聞いてもらいたい、という人は、今の自分は話を聞いてもらえていないと感じている。

ふわりと、そんな気づきを得た。きっかけは本だ。昨日に引き続きカウンセリングの本を読んでいて、傾聴の話が出てきたときに気がついた。

傾聴というのは、ざっくり言うと「とにかく聴くことから始めよう」ということだ。そしてそのために、具体的な聴き方をスキルとして落とし込んだもの……だ。ざっくり。

ともかく、そのスキルを学び始めて真っ先に思い知ったのが、話を聞くって難しい、ってことだった。


大事なことなので繰り返す。

話を聞いてもらいたい、ともらす人は、「今は話を聞いてもらえていない」と感じている。

何を当たり前のことを、と思われるかもしれないが、これは多くの人にとって盲点になっている気がしてならない。だからこそカウンセリングが仕事として成立してるのだろう。


例えば弊社では、1on1という、上司と部下のマンツーマンの話し合いの場を隔週で設けている。1人あたり30分、現在の仕事の状況から私事に至るまでざっくばらんに話すこともあれば、社のミッションや個々のキャリア設計について熱っぽく語るときもある。

そんな時間を設けているくらいだから、部下も上司に話を聞いてもらえて満足しているかというと、必ずしもそうとは言えない。

聞けば、中には1on1がめんどうに感じている人もいるようだ。せっかくの話し合いの場がめんどうに感じるのは、その場が「話し合いになっていない」か、「話し合いの目的が定まっていない」か、どちらかが理由だと思う。

後者は1on1の運用とは云々、の話になるので置いておくとして、今回の問題は前者だ。

話し合いにならない、というのは、つまり「話しても無駄な人」「話の通じない人」と思われているからだろう。話してもわからない人と2人きりになる時間が、有意義なものであるわけがない。

これは、上司から見た部下がそうである場合もあれば、部下から見た上司がそうである場合もある。まあたいていどちらかが不満を抱えているときは、同じ不満をどちらも抱えているものだ。


仕事に限った話じゃない。プライベートでも同じだ。

伴侶や恋人のいる人が、パートナーに対する愚痴をもらしているのを聞くと、「なぜその話を本人にしないのだろう」と不思議に思う。

でも、何も不思議ではないのだ。

話し合っても無駄だと思っていたら、そりゃあ話す気にはならない。そんな状態でどちらかが「不満があるなら言ってよ」なんて言っても、それこそ言うだけ無駄だ。

効果の出ないダイエットは続けられない。そういうことだ。

そう、大事なのは効果だ。

効果というのは、何かをしたときの反応、リアクションだ。インプットに対するアウトプット。それを正しく返さなければ、どんなに自分は「聞いたつもり」でも、つもりで終わってしまう。

相手が望むリアクションを返すことが、話をする第一歩だ。

でも、相手が望むリアクションを返すと言ったって、相手の話に共感したり賛同したりしなきゃいけないわけじゃない。

まずは、「私は話を聞いているよ」という信号を送ること。サインを出す。うなずく、相槌を打つ、表情を変える。なんだっていい。

それから、聞いていない、というサインを抑えるのも大切だ。上の空で相槌を打っても逆効果だし、人の話の途中で時計やスマホを見るのもよくない。


ただ、そういう小手先のテクニックは後からどうとでもなるので、個人的にはあまり重要ではないと思っている。

それより大事なのは、わかったフリをしないことだ。わからなければ、わかるまで聞く。尋ねる。わからないのに、その隙間を想像で埋めちゃいけない。

この人が怒る時はいつもこういう理由だから、なんて決めつけや先入観を捨てること。純粋に聞けば、それだけでいい。


……と頭ではわかっていても、それがなかなか難しいんだ。

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