そよ風のしっぽ 「ごろごろ」

昨日は、午前中は正々堂々と居眠りしている男性との話し合いに随分と時間をとられてしまった。
渡辺さん、入社してから目立たつこともなく、可もなく不可もなくという感じで30年は勤続してきている男性。
会議室に来てもらって。
彼は、何故呼ばれたか、何故自分が注意を受けなければならないのか理解できないようだった。
真面目に働いてきて、社内の付き合いも普通にこなして、特別失敗したこともない。
午前中、居眠りしていても自分の仕事は完璧にこなしている。
心の中を覗いてみても、口から出ている言葉と同じだった。彼はある意味で、自信満々だった。
そして私の事は、がきんこちゃんと考えているようだった。沢山勉強はしてきたらしいが、親の七光りのようなもの、結婚もしていない、女としても半人前。そのような見方をしていた。

「渡辺さん、あなたが真面目に三十数年間勤めてきたことは承知しています、公私ともに問題をおこした事もありません。
あなたは仕事も完璧にこなしていると仰いました、
その通りです。ただ、時間に余裕があるのでしょう、午前中は寝ている。それは社内の風紀を乱します。早朝から現場で働いている社員もいます。
その人達は危険とも隣り合わせの毎日です。
この寒空の中をですよ。あなたは暖かいビルの中で、居眠りしています、同じ時間に。
おかしいとは思わないようですので、私としては、ひとつ提案をさせて頂きます。
お仕事を増やします。午前の3時間を居眠りなどしていられないように。もし、それを拒否されるのであれば、午後1時から5時までのパート待遇に変更させて頂きます。
そうなれば、ギリギリ社会保険は維持できても、退職金は無しになります。
よく考えてお返事下さい。」

渡辺さんは、さすがに驚いたようで。彼の頭の中では、今までの価値観や自信が崩壊し始めていた。
そして、心では、まだまだすがっていた。自分は資格だって持ってるのだから、まさか、リストラとは違うだろうと。

私は、あなたが心で思っていることが読めますよとも言えはしなかったけれど。

「渡辺さん、あなたは、経済学部出身でしたね。
うちの会社に入ってから、宅建主任の資格、また、
難関といわれている不動産鑑定士の資格もとられて。 会社にとっては、いて欲しい人材です。
しかしですね、会社としては、風紀は乱されては困ります。そして、それらの資格ですが、当社では多くの社員が持っています。
例えばですね、女性のベリーさんなどは、専門は建築で、一級建築士を、その他にあなたと同じ宅建も鑑定士も持っていますよ。
若い社員さんでもいます。
渡辺さん、今ここで返事は出来ないと思います。
家に帰られて、奥様ともよくご相談なさって下さい。来週、お返事伺いますので。」

彼は私の二者択一の提案に、初めてぞっとしたようでもあり、また、不思議だったのは、何やら文芸のサークル活動をしていて、自分の才能のようなものを信じてもいるようで。
それをやめるつもりもない様子で。夜中まで、何やら、書いている様子で。

趣味も恐いものだと思ってしまった。本業をないがしろにしてまで趣味に打ち込んではならない。
私は、そのように考えている。趣味はあくまで趣味。働いて給与を貰っているのであれば、その仕事に支障が出てはならない。
渡辺さんのようなベテランであれば、午前は寝ていても仕事はこなせるのであれば、午後だけの勤務にしてもらう。企業は甘くはない。

そもそも、渡辺さんが午前中は居眠りしているなど
私がみつけたことではない。周りの社員からの声、苦情で知ったこと。
周囲の人達の声なのですよとも言えなかった。渡辺さんは、ますます混乱して、人間不信にでも陥ってしまいかねない。
少くとも、私が観た限り、渡辺さんは自分の生き方、働き方に信念のようなものを持っていて、狡く立ち回っているのではない、周囲に自分を良く見せようとするこズルさも無い。

父にしても同じだと思うが、私は、だらだら、ごろごろした生き方は嫌いで。何とかしろと考える。
必死に生きろと考える。
まして、仕事については自分自身を甘やかすなと考えている。

渡辺さんは、どのような結論を出してくるだろうか。

毎朝の父との散歩。慣れると辛いものではなくなってきている。散歩の間、約1時間は父とのおしゃべり時間になっていて、楽しくもなってきた。
父は、あらゆることを私に教え伝えようとしているようで。私は、父が話した言葉を毎夜日記にメモするようにしている。

また、家庭料理のレッスンも続いていて。
母か、祖母が太郎さんの好物を聞いてくる。
太郎さんのお母さんから仕入れてくるようで。
肉じゃがが好きとかで、昨夜は肉じゃがレッスン。
煮てもくずれないメークインより、男爵系のホコホコしたじゃが芋が好きとかで。
肉と玉ねぎ、生姜を炒めて味付けして、そこへ、軽くレンジでチンしたじゃが芋を加えて、味をしみらせる方法が正解だった。
母は、煮くずれしないメークインを使う時と、煮くずれする男爵系を使う時では、作り方を変えていたのだと知り、母はよく頑張った人だなぁと。
ドクターとして働きながら、しっかり家庭も守ったのだから、お料理にも基本的な手抜きはしていない。

母は、父を大好きだった、武骨な父を、美人で聡明な母の方が夢中になったとか。
母は大好きな夫のため、子供達のために、家事をすることは苦痛ではなかったらしい。
嬉しかったらしい。
医師としての仕事も、自分が望んで続けさせてもらって、父には感謝しているとか。

私もそうなるのだろうかと。太郎さんを大好きに思えるのかなと。

ホタテがゴロゴロ入ったクリームパスタが私は好き。野菜や肉がゴロゴロのカレー、シチューが好きなのは、太郎さん。
魚介類は余り得手ではないらしい太郎さん。
食べ物の好みが、少し違う。
食べ物の好みが同じなのは、ボクサーくんとファーブルくん。

建築家の安藤忠雄さんが、石造りの公文図書館をリノベーションして出来た建物の2階がレストランになっていて、そこのパスタが人気で。
お菓子屋さんの「北菓楼」のカフェ。
北海道産の大きなホタテがゴロゴロ入ったクリームパスタ。
ファーブルくんとボクサーくんと、何度も何度も行って食べた。私は、ホタテがウニだったら、最高ねと。それについては、三人同じ意見で。

今日も、2月らしからぬ陽気。

ありがとうございます。嬉しいです!
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風花会那

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