そよ風のしっぽ 「ズルする」

母のよく使う言葉で「ズルしたでしょう」。
怒っているのとは少し違い、呆れているのとも違い。この言葉は、よくよく観察していると、私に対してのみ使う言葉のように感じていて。
ズルなんて、していない、ズルって、ズルい事って意味だと思うけど。

今日は、ひどく天気が荒れていて、一寸先が見えない状態。一寸です。一寸先は闇です。
父は朝6時の段階で、外での仕事はしないように、
また、北部へ出張予定の者は延期するように、東京、大阪へ行っている者は、帰りを延期するように、それぞれへ通達を急ぎ出すようにと秘書の男性に指示していて。
だいたい、ホワイトアウト状態でも父はいつものように5時には散歩へ。さすがにいつもの半分でバックしてきたけれど。
私は、顔は雪まみれで帰ってきて。
父は、外に実際に出てみたから判断できたのだと。
ふーん、天気予報だけじゃ駄目なのかな、、私は雪まみれになったので再度洗顔しなくてはならず。
顔の皮膚が傷むわ!!とかブツブツ言ってると、
父は、少し丈夫な皮膚になったほうがいいなと、いささかも私の顔の皮膚のことなど眼中に無い様子で。

今日は大荒れだから、父と一緒に出勤しようかなと言った時に、母がいつもの
「りぃちゃん、ズルしないの!!」
私は、出た、出た、母の専売特許の言葉、ズルが出たと思い母の顔を見ると、ちらっと口の先で目の端で笑っていて。

「お父さんと散歩に行ってる間に、太郎さんからお電話ありましたよ。車は危険でしょう、太郎さんは地下鉄で行くそうよ。りぃちゃんを迎えに来て下さるそうよ。よかったわね。」
へぇー? 太郎さんて5時には起きていたんだ、、
すごいなぁ、、私が感心したのはそこで、母は太郎さんの気遣いを喜んでいるようで。

それで、父と一緒に重役出勤しようかとズルいことを考える私を制したようで。
ズル、ズル休み、ズル賢い、、ズルって、良いニュアンスではない、、が、、母は、私に対して使うズルは、ちょっと可笑しく、少し愛を込めて、また、
母としての厳しさも含めて、「ズルしちゃ駄目よ」となるようで。

というわけで、今朝は太郎さんと一緒に出勤。
わざわざお迎えに来なくても地下鉄駅で待合せしたらよいのにと考えていた私は、太郎さんがお迎えに来てくれた賢明さに、感服でした。
一寸先が見えないのですから、風も強くて、その風に雪が乗って走っていますから、私は吹き飛ばされそうで。太郎さんが手をつないでいてくれたのと、
時おりの激しい風の時は、太郎さんは自分の体を盾にしてくれて。男と女は、違うのだなぁと、生れた瞬間から体そのものが違うのだなぁと。

そんな事を言いながらお礼を言うと、
「今は、一概にそうは言えないな、女性でも体力的にすら男性と肩を並べる人がいるようになってきているからね、、」
そうかもしれない、オリンピックでも女性の活躍が著しく。今回の平昌オリンピックでは、日本の女性選手の活躍は素晴しかったと思い出し。

太郎さんは、地下鉄の中で淑子お姉さんの話をして、私はクスクス笑いながら、やっぱり淑子さんは素敵だなぁと。
柔道や剣道やテコンドウや、淑子さんは武道に秀でているので、アメリカにいる時もその武道で男性を寄せ付けなかっただけでなく、人助けもしたとか。
太郎さんは、上の優しいお姉さんはいざ知らず、淑子お姉さんには頭が上がらず、あんな強い女性とは絶対結婚はしないと考えていたそうで。
それで、私なんですか? いやいや、りぃちゃんは
子供の時から決めてたから。

まあ、そのあたりはどうでもよく、吹雪の時には太郎さんは守ってくれそうなので、それで良く。

二人の祖母も母も姉も、手芸が好きで、私もそんな家族の影響で、手芸といわれているものは大体は経験有りで。姉のように手のこんだものは作れないのだけれど。なにせ、私は手早い。やり始めたら、一気呵成に仕上げる。
それが、なかなか良くて、誉められることが多いのだけれど、母はしっかり見抜いていて。
「りぃちゃん、ズルしたでしよう。
図案を描くのが面倒で、適当に図案に似せて刺繍したでしょう!」
「りぃちゃん、、スカートの裾のまつり縫い、随分と目が大きいのね、、ズルして、、」

私は、ステンドグラスにしても、刺繍にしても
刺し子にしても、お仕着せの柄はイヤで、自分で描く、頭の中に、そして迷いなくどんどん仕上げてゆく。ズルとは違うのだけれど、母は、初めての事は、まず基本に忠実にやってみなさい、それが出来てから自分流にという考えで。
私のハショリ方が、所謂、ズルという事のようで。

母のいう事は誠に正しいのだけれど、手芸で生きるわけでもなく、人に売るのでもないのだからという私の言い分は、言い訳にしか聞こえないようで。

それが何度も何度もで、母は私に対しては姉のようにはいかない娘だと解ったらしく。

母と姉は似ているかもと、ふと思う。
姉も和ちゃんには苦労せずに、下の夢ちゃんで苦労している様子で。

自分のお腹から生まれても、子供は自分とは全く別の人格と考えたほうがよさそうで。
母は私に対するガッカリ感を、「ズルしちゃダメよ」という言葉に込めたのかもしれない。

なので、ズルしたでしようと言う時は決まって、
笑いを含んでいる。諦めの笑いを。

ありがとうございます。嬉しいです!
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風花会那

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