本の記憶 No.24

2月も残すところ2日で終わり。
雪が降っても春の雪で、あたりが柔らかい。空気は春近しを予感させて。
3月に入ると、街中は一気に春ムードになります。

雪国の人は口にこそ出さなくとも、みな春を待っている。首を長くして待っている。
まだまだ気温は低いので、コートもマフラーも手袋もブーツも必要、必要だけれど色合いが春っぽくなる。アースカラーが増える。

男性はさして変化はないように見えますが、女性達の装いが明るい色に変わるように感じる。
そうして、本当に雪がすっかり消えるのは4月に入ってから。寒いのに、ちょっとだけ薄着にして、マフラーなどもモコモコから、少し薄めの素材に変えて、春近しを演出するのですね。

北海道の作家さん。小檜山博さん。
1937年生まれですから、80才ですね。ご健在で現在は美術館の館長さんのはずです。(神田日勝記念美術館 名誉館長)
私は、JRの車内誌で小檜山博さんを知ったのですが、北海道にこんな素晴らしい文章を書く人がいるのかと、知らなかったことを恥ずかしくも思ったものです。

写真の2冊が家にあり、むさぼるように読んだものです。
「出刃」は、小説、短編集です。
「出刃」は1976年の芥川賞候補にもなった作品です。

はっとするほどに文章が上手い。男性的な文章。
誰もが、読後は、お話のストーリーが云々を抜きにして、文章が上手いと、言います。
さらっとしているというより、スパッとしていて
くどくない、切れ味が良い感じです。
私は、男性と女性との肉体的な絡みの部分などは、ほぉー!!と唸りたいくらいでした。
こんな表現もあるのかと。

1976年、芥川賞はとれませんでしたが、北方文藝賞は受賞できたようです。
北海道新聞社に勤めて、文学については殆ど独学のようですので、ふと、松本清張さんを思い出したりしますが。
ちなみに、1976年、芥川賞は村上龍さんの「限りなく透明に近いブルー」が受賞されたようです。

非常に苦労された方で、小説にもそれはよく出ていますが、エッセイには、泣かされます。
JRの車内誌に掲載されたエッセイをまとめたものが「人生という旅」です。

貧しい、極貧、炭焼きの家、ご飯すら満足には食べられない、
ですから、今のようにケーキや、カフェでお茶などあり得ない、、
そんな中だからこそ、子が親を思い、親が子を、そして地域で助け合い、
高校時代は寮に入るのですが、仕送りがあったりなかったり、先生に先輩に、仲間に助けられ。
その時代の教師には、立派な人もいたのだなぁと。 今は、教師が多々いかがわしい問題をおこす人もいて。嘆かわしくなります。

私達は、このような人達の苦労の上に生きているのだなぁと。小檜山博さんが生まれ育った土地は、北海道でも郡部です。同じような時代、昭和の前半期でも、都市部ではそれほど過酷でもなかったようですが。
開高健さんの作品にも、北海道の過酷な生活を書かれた作品があります。昭和34年の「ロビンソンの末裔」、北海道開拓に東京から入植した一家のお話ですが。舞台は大雪山の裾野あたり。
「ロビンソンの末裔」は、過酷な苦労を戯画的に描いているので、読んでいて涙は出ませんでした。
同じような場面を描いても、違うものだと思います。
取材をしたとしても、実際に何年間も暮す事とは、違ってくるものなのでしょう。過酷な土地で命懸けで生きる人々。

「人生という旅」を読むと、一作、一作が非常に重いのですね。じーんと心に入り込んで、心の襞を揺さぶります。
貧しいから強くなれたのだろうか、貧しいから清い心を持てたのだろうか、貧しいから頑張れたのだろうか。
何もかもが恵まれていてさえ、ぶつくさ文句をばかり言って動かずに遊んでいる人がいる時代です。
この本を読むと、現在は良い時代なのだろうかと、この先、人間は何を欲するべきなのだろうかと、考えさせられてしまいます。

ご飯のお菜に、味噌汁と塩鮭があれば、それで幸せという小檜山博さんの一文を読んだこともあります。
小檜山博さんには、是非、是非、もっと長生きして頂きたい、そして、若い人達へ残してほしい、物質的な豊かさに溺れてはならないと書き残してほしいと願います。

家には、この2冊より小檜山博さんの本はありませんでしたが、私が買ったものではないので、家族の誰彼が読んだものです。
やはり、同じように言います。
惚れ惚れとする文章だと。
巧い文章だと。

独学でここまで素晴らしい文章を書けるものなのだなぁと感心してしまいます。

小檜山博さん、御存知でない方も多いかと思います。一度、読んでほしいと思います。

私は、小説よりエッセイのほうが良いと感じました。ご自身の子供時代から、作家になるまでの様子を淡々と書かれていて、驚きとともに感動で胸が熱くなるはずです。私は、何度も涙をぬぐいました。
悲しい涙ではなく、感動の涙です。
貧しさの中に育った人は、人を思う心は確かなものだと。

嬉しい!! ありがとうございます!
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風花会那

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