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オリンピック選手の話

オリンピック選手に囲まれて育った。


お姉さんたちがオリンピックに出てるのは知っていたし、同年代のあの子とこの子も出るんだろうなって思ってた。当たり前のようにほんとうに出た。

あとから知ったけど、先生たちもだいたいみんなオリンピックに出てた。あとほんの少しで手が届かなかった人もいたけど、だいたい出てた。


彼女たち、やっぱり違う
なにがどうとは説明できないけれど、特別だ。


失礼なことを言うけれど、生きるのが上手いとは思わない。むしろド下手。
社会的な生活、本当に下手。
私が満を持して自分のことを棚にあげて言えるほど、つまり、よっぽど。


だけど、強い。
彼女たちは強いのだ。
彼女たちは強いから、オリンピックに出ただけじゃ満足してないかもしれない。

でもこの2,30年、あの競技で日本人女性がメダルを狙うなんてほとんど想定されてなかった。
オリンピックは、出るだけで「夢を叶えた」なんてこっぱずかしい言葉を用いるに値すること、とされていた。


だから、きっと彼女たちは大いに満たされたのだ。

たとえそれがほんの一瞬だったとしても、夢を叶えて自分を満たしてあげられた、その経験と記憶と幸福感、それに吐くほどの緊張感と苦しみを若くして知ったことで、きっと彼女たちはどこまでも生きてゆけるのだ。

扱いきれないほどにたくさんの強い感情がお腹の底から湧き出でて、どうしようもなく満たされた時間がきっとあったのだ。


どうせそれしかできないんでしょ、なんて、自分が言われて一番嫌だった言葉で揶揄したくなってしまうことが多かったけど
今でもそう思ってる節があるから、もっともっとなんでも全部一人で人一倍できないと、って苦しくなってしまうけど
ほんとはやっぱり、彼女たちが羨ましいんだ。

強いから夢を叶えられたのかもしれないし、目標を達成できたのかもしれない。
夢を叶えられたから強いのか、強いから夢を叶えられたのか、そんなのはどうでもいい。

私はオリンピックに出たかったわけじゃないけど、それだけ大きなものを手に入れた彼女たちを素直に尊敬できるようになりつつある。


羨ましいな
私は何がどうなればそんなに満たされるんだろう

雨雲にもヨーロッパの夏の日の長さにも、嫉妬心にも痛みにも、何にも負けないくらい強くなりたいよ

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