神様のボート/江國香織(8)(ラスト)

      

葉子さんはおかしくなる。
身も蓋もない言い方だし、もともとおかしかったと言えばそれまでなのだが、草子を「失って」からの葉子さんは、一段とおかしくなる。
逗子から出ていく気力さえもなくし、仕事も辞め、ただ漫然と日々を過ごす。ピアノを弾きながら。
それでもどうにかして引っ越しをする。東京へ。
16年ぶりに東京に戻り、実家に連絡をする。草子も夏休みにはそこへ帰る。
アパートを決めて、桃井先生に会いにいく。

桃井先生に許されたいと思っていた。東京に戻ることを。だけれども、16年という日々は葉子さんが思っていたよりもとても長い時間だったのだ。

もう、いいから。
ぜんぶ、もう、いいんだ。

たぶんだけど、もう、いいから。っていう、その言葉に葉子さんは自分でももうぜんぶどうでもよくなっちゃったんだと思う。
何のための生活なのかまったくわからなくなり、それが続き、「いつ死んでしまってもいい」から「はやく死んでしまいたい」に移り、それでも「あのひと」を思い続けた。

最後には、葉子さんはあのひとに会えたんだと思う。それが彼岸にしろ此岸にしろ、会えたんだと思う。場所なんてきっと葉子さんにとっては何も問題ではなくて、「あのひと」という支えがないと生きていけないんだから……。

きっと、葉子さんは死んでしまったんだよな、ややもすると自死かもしれないよな、と、私はそう解釈しているけれども。
死が美しいとも言わないし、悪いとも言わないけれど、葉子さんにとってあのひとのいる場所こそが自分の居場所なのだとしたら、死すらも厭わないというか、どうでもいいことなんだろうな、とか。

やっぱり狂気ですね。
恋愛とか馬鹿馬鹿しいって、やっぱり未だに定期的に思うし、でも全人類に愛されたいとかも思っちゃうし、だからなんだかんだここまで誰かひとりに溺れられる葉子さんが羨ましかったりします。
溺れるに値するひとが欲しい!






昨日は驚くほど眠くてお風呂も入らず寝てしまいました。
それはきっと日曜日にとっっっっても美味しいお肉を食べた帰りにYouTubeでモーニング娘。5期メンバーのオーディション合宿映像を観はじめたら止まらなくなって4期3期も観てしまって夜更かししたのが響いたんだと思います。
今りんごをかじったら胃が痛くなりました。死ぬ。。


この記事が参加している募集

読書感想文

お読みくださりありがとうございます。とても嬉しいです。 いただいたサポートがじゅうぶん貯まったら日本に帰りたいです。