円堂都司昭

文芸・音楽系文筆業。兼 遠藤利明。著書に『ポスト・ディストピア論』、『ディストピア・フ…

円堂都司昭

文芸・音楽系文筆業。兼 遠藤利明。著書に『ポスト・ディストピア論』、『ディストピア・フィクション論』、『意味も知らずにプログレを語るなかれ』、『戦後サブカル年代記』、『ソーシャル化する音楽』、『ディズニーの隣の風景』、『エンタメ小説進化論』など。

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    音楽を扱った小説、評論に関するコラム

最近の記事

1970年代後半カルチャー論(仮)

1970年代後半カルチャー論をやりたいと思い始めてる。W村上など20代作家が多く登場し、新井素子みたいに10代までがデビュー。性意識、キャラクター、文体など小説に変化があった。同時期にはマンガの24年組、JUNEなどBL源流の動きがあり、YMOのテクノブームでテクノロジーの変化も見られた。後のカルチャーのプロトタイプ的なものを多く見出せる気がする。この時代をになった人たちが亡くなり始めてるから、この時代を考えたくなったというのもある。

    • 内田かずひろに漫画化してもらいたい 村上春樹「レーダーホーゼン」

      (初出:「書評王の島」vol.5、2012年)  大型犬が主人公の『ロダンのココロ』という漫画がある。ロダンは、額にしわを寄せるくせのあるおっさんくさい犬だ。彼を飼う家族は、ダンナ、オクさん、会社勤めしているおじょうさんの三人からなり、幼い子どもはいない。大人ばかりと暮らしているせいか、ロダンにも子どもっぽい無邪気さはない。  この漫画は、言葉が通じないため家族がロダンの考えをうけとりそこね、ロダンが家族の行動の意味を勘違いするユーモラスでほのぼのとしたエピソードの数々を綴

      • 西村賢太『どうで死ぬ身の一踊り』

        (2011年 記)  私のお墓の前で暴れないでください、と秋川雅史なら歌いだすかもしれない。西村賢太の私小説には、それほどひどい男が登場する。  無頼な生活の末に凍死した大正時代の作家、藤澤淸造を語り手の「私」は崇拝している。彼の全集を刊行したいと大望を抱き、関係資料の収集に尽力している。「私」はこの作家の墓へ毎月参るだけでなく、淸造忌の法要を復活させ施主も務め始めた。しかも、自室の藤澤淸造コレクションのなかには、作家の最初の墓標(木製)まであった。「私」の住む賃貸の部屋が

        • 村上春樹における数と固有名をめぐって――東浩紀と法月綸太郎

           探偵小説研究会編「CRITICA」15号に「収容所とホテル――東浩紀、笠井潔、森村誠一における人と数の問題」なる一文を寄せた。これは、森村誠一『悪魔の飽食』を語ることから笠井潔の探偵小説論に触れつつ悪に関する考察をおこなった「悪の愚かさについて、あるいは収容所と団地の問題」(「ゲンロン」10)に対し、ミステリ批評の側から応答するべきだろうと謎の義務感にかられ、書いたものだ。『悪魔の飽食』以前の森村に関し、「悪の愚かさについて」の観点からとらえ直すと興味深いのではないか。そう

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          宮下隆二『イーハトーブと満州国 宮沢賢治と石原莞爾が描いた理想郷』

           法華経を絶対視して『立正安国論』で仏教的ユートピアを唱えた日蓮を信奉する宗教団体・国柱会にそれぞれ入信していた宮沢賢治と石原莞爾。詩人・作家・教員の宮沢と軍人の石原で立場は異なるが、いずれも東北出身であり国柱会の影響下でイーハトーブ、満州国という理想郷を思い描いた共通性を古川日出男『おおきな森』は、モチーフとしてとりこんでいた。同作で2人の対比に興味を持ち、そのことをテーマにすえた宮下隆二『イーハトーブと満州国』に手を伸ばした。  著者は、宮沢賢治、石原莞爾だけでなく北一輝

          宮下隆二『イーハトーブと満州国 宮沢賢治と石原莞爾が描いた理想郷』

          本格ミステリ・計算・科学・機械

          ※以下は、探偵小説研究会の同人誌「CRITICA」に寄稿する予定で2013年に書き始めたものの、結局「序」だけで頓挫した下書きのお蔵出し。400字詰め換算で100枚以上の長文評論(ワーキング・タイトルは”ミステリ建築の意志”だった)を予定して全体構成のメモは用意したけれど、どうも気分がのりきれなくて続かなかった。当時考えていたことは、今でも頭のどこかで燻っているので、いずれ仕切り直して取り組むことがあるかも。あくまで「かも」だが。 序.本格ミステリ・計算・科学・機械 不可解

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          『新聞記者』と『シン・ゴジラ』

          『新聞記者』という映画は、主人公の部屋、記者会見場、内閣情報調査室など、なぜ屋内の照明をもっと使わないのかと思うほど、暗く撮った場面が多い。また、不安感を醸し出したいのかもしれないが、新聞社内のシーンなどではカメラの手ぶれがひどく、観ていて酔いそうになる。さらに、パソコン上の文字がそれを見ている人の顔に映って「耳なし芳一」状態になったりもする。同作は、そんなホラー風の演出までして、現在の日本はディストピアと化していると訴えているわけだ。

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          『新聞記者』と『シン・ゴジラ』

          映画『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』

           2017年.フレデリック・ワイズマン監督。  独立法人であるニューヨーク公共図書館は、市の出資と民間の寄付で運営され、「公立」ではなく「公共」の場である。本館含め92の図書館からなり、書籍だけでなく、映画、演劇、アート、ダンスなどもカバーして演奏会も催される総合的な文化組織だ。加えて、就職支援、シニアのダンス教室、子どもたちのロボット制作など公民館的な幅広い機能をあわせ持っている。  この長編ドキュメンタリーについてワイズマンは、ディレクターズノートで ニューヨーク公共

          映画『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』

          近刊 円堂都司昭『意味も知らずにプログレを語るなかれ』

          [有名洋楽曲を歌詞の方面から読み解く『意味も知らずに〜』シリーズの第4弾は、プログレッシブ・ロックがテーマ。] リットーミュージックから7月11日発売予定。 収録予定曲(全24曲) ◎ピンク・フロイド 「Arnold Layne」 「Eclipse」 「Wish You Were Here」 「Another Brick In The Wall Part II)」 ◎キング・クリムゾン 「21st Century Schizoid Man」 「Epitaph」 「The

          近刊 円堂都司昭『意味も知らずにプログレを語るなかれ』

          『ディストピア・フィクション論』 目次

          円堂都司昭著『ディストピア・フィクション論 悪夢の現実と対峙する想像力』(作品社) 目次 序章 みなさまご存じのディストピア       赤川次郎のディストピア小説       「ぬり絵」としての『東京零年』 第一章 監視と管理    一 悪しき統治を想像する       『「統治」を創造する』の理想像       『われら』『一九八四年』『すばらしい新世界』の硬い公共        身体、言葉、人間関係の支配       科学的管理の洗練       ディズニー的な『プ

          『ディストピア・フィクション論』 目次

          最近の自分の仕事

          ☆カート・アンダーセン『ファンタジーランド 狂気と幻想のアメリカ500年史』上下の書評 → 共同通信から配信 ☆長浦京『マーダーズ』、一本木透『だから殺せなかった』の紹介 → 「小説宝石」3月号 前者はこちらにもアップ https://www.bookbang.jp/review/article/563922 ☆『IT』続編や『ペット・セマタリー』再映画化も スティーヴン・キング作品が映像化され続ける理由 https://realsound.jp/movie/2019/03/

          最近の自分の仕事

          最近の自分の仕事

          ☆「夜明けの紅い音楽箱」第22回(取り上げたのは鵜林伸也著『ネクスト・ギグ』 → 「ジャーロ」No.66 ☆長岡弘樹著『救済 SAVE』、古市憲寿『平成くん、さようなら』の紹介 → 「小説宝石」2019年1月号 ☆「ジョン・ウェットンを読む」 → 「THE DIG ジョン・ウェットン」 ☆THE ALFEE、倉木麻衣、AKB48、すぎやまこういち……ギネス記録を樹立したアーティストたち https://realsound.jp/2019/01/post-304997.html

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          新本格ミステリ=パンク/グランジ説――ロックで読んだ法月綸太郎

          (初出:「e-NOVELS」、2000年) 前口上 以下の文章の原形は、法月綸太郎(のりづきりんたろう)が長編としては10年ぶりとなった『生首に聞いてみろ』(2004年)を刊行する以前(2000年)に書かれたものである。したがって、なかなか新作長編を完成できない法月の苦悩がテーマになっていた。 本来の序 私は、法月綸太郎と同世代のロック・ファンである。法月は小説中でもあとがきでも、しばしばロックに言及しているが、そのセレクションや取り上げ方にはニヤリとしてしまう。彼が聞い

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          新本格ミステリ=パンク/グランジ説――ロックで読んだ法…

          伝説としてのロバート・ジョンソン――天童荒太、ボブ・ディラン、古川日出男

          (初出:「ロックジェット」Vol.33、2008年) 『孤独の歌声』 天童荒太の『孤独の歌声』という小説のなかでは、ロバート・ジョンソンの〈カインド・ハーティッド・ウーマン・ブルース〉がたびたび流れる。天童といえば、子ども時代のトラウマをテーマにしてヒットした『永遠の仔』(1999年)で知られるミステリー作家。1994年に刊行されたサイコサスペンス『孤独の歌声』は天童のデビュー作であり、現在は大幅に加筆修正したものが新潮文庫に収められている。  コンビニ店員として強盗の被害

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          彼らは日本を救うのか――『ヤンキー文化論序説』『ヤンキー進化論』

          (初出:「ロックジェット」Vol.36、2009年)

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          セックス・ピストルズと同年に――山口雅也『キッド・ピストルズの最低の帰還』

          (初出:「ロックジェット」Vol.31、2008年)

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          セックス・ピストルズと同年に――山口雅也『キッド・ピス…