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2年ぶりに第二グラウンドを訪れて - 名古屋グランパスアカデミー観戦のすゝめ -

先週末の2024年4月7日(日)、トヨタスポーツセンター第二グラウンドの天然芝グラウンドにおいて、高円宮杯 U-18プレミアリーグWESTの開幕戦「名古屋グランパスU-18 vs ファジアーノ岡山U-18」が開催されました。

前半は互角の展開、それでも私には名古屋優勢に感じられました。昨季岡山がプレミア昇格プレーオフを見事に突破し、今季が初めてU-18年代最高峰の舞台に「初参戦」するシーズンであるといった事実に、影響されていたことも否めなかったように思います。なので、選手の各プレーやチームの意思統一性は、名古屋の方が一枚上手であるように感じていました。

スコアレスに終わった前半の結果について、サッカーには往々としてこのようなことが起きることだと認識していて、驚くことは無かったですし、後半はスコアが動くだろう、とどこか諦観していました。その眼が節穴とは気付かずに。

後半が始まり、先述の私の感覚が全く浅はかであることが直ぐに証明されました。キックオフから岡山が勢いあるサッカーを展開し、先制に成功したのは49分、後半開始から僅か3分しか経っていませんでした。

前半にトライし続け、最後まで完結しなかっただけの岡山のプレーがとうとう実を結んだ瞬間だったのかもしれませんし、当初から後半頭のこの時間帯を待っていたのかもしれません。これだから私のような観る目を持っていない人間でも、サッカーに魅了されてしまうのだと思います。

前半の流れもあり、動揺する会場の選手のご父兄の皆さんと名古屋サポーターたち。いやはや私がそう感じただけで、ショックを受けていたのは試合の流れを誤読していた私だけであったのかもしれません。

その後、名古屋は自分たちのプレーに徹しますが、その名古屋の攻撃を先制点に勇気を得た岡山が耐え忍ぶ、そんな展開が続きました。

じりじり時計の針が進んだ76分、名古屋がセットプレーのチャンスを得て、その右サイドのコーナーキックを途中出場の野中祐吾選手が頭で合わせて同点に。

そこから名古屋は86分と90+5分と追加点を決め、結果的に「3-1」となり、開幕戦を逆転勝利で飾る、そんな試合でした。スコア以上に拮抗した、プレミア開幕戦に相応しい好試合でした。

私事ですが、トヨタスポーツセンター 第二グラウンドでU-18の試合を観るのは、2022シーズン以来2年ぶりでした。

この文章はそんな私の、主に名古屋グランパスU-18への思い出を通して綴った、名古屋グランパスアカデミーへの想いを表したものです。

正に「私事」に過ぎない文章ですが、お読みくださるのでしたら、嬉しく思います。


名古屋グランパスU18との出会い

名古屋グランパスへ入社する時から私は、アカデミーの発信強化をするべきと考えていました。当時隆盛を誇っていた清水エスパルス ユースの情報発信が、非常に優れていたからです。公式サイトの専用ページが充実しており、Twitterでも専用アカウントを開設して運用されていました。

その発信強化のチャンスは、2015年9月の私の入社後すぐに訪れます。そのシーズンの名古屋グランパスU18(当時は「-」がありませんでした)は、奇しくもプレミアWESTにおいて残留争いをしてしまっていたからです。

当時アカデミーを取材してくださっていたのは、2008年まで公式サイトを制作してくださっていた会社の方々でした。そしてTwitterに関しては、取材結果が公式サイトで公開されると、そのページのタイトルとURLが自動Tweetされる、そんな仕組みでした。

取材の結果が公式サイトに載るのは試合の翌営業日、TwitterもそのタイミングでTweetされるので、それまでにファン・サポーターの方が結果を知るには、自発的に情報収集いただくしかありませんでした。

その自動Tweetのシステムは、契約の関係上、その年の年末まで継続しなければなりませんでした。

ただ、プレミアWEST残留の瀬戸際の状況にあったU18の日々の様子の発信を、その悠長な発信プロセスに委ねることは看過できず、自動Tweetと同時に手動によるTweetをすることを決めました。

そして12月に入り、プレミアリーグWEST第17節を終えた時点の順位表は下記の通り。U18は「10チーム中の9位」の降格圏の沈んだ状態で最終節を迎える、そんなon the edgeな状況に在ったでした。

8位 履正社高校 勝ち点「20」、得失点差「-2」

9位 名古屋U18 勝ち点「18」、得失点差「-10」

10位 京都橘高校 勝ち点「13」、得失点差「-24」

8位「履正社高校」の最終節の相手は、2位「大分トリニータU-18」。9位「名古屋グランパスU18」の相手は、既にプリンスリーグへの降格の決まっていた10位「京都橘高校」。

そして、名古屋グランパスU18のプレミア残留の条件は、下記の2通り。

◇パターン①
・絶対条件:名古屋グランパスU-18 勝利

・必要条件:履正社高校 負け

◇パターン②
・絶対条件:名古屋U-18「9点差以上」で勝利

・必要条件:履正社高校 引き分け

ただ勝利すればいいのでは無く、「9点差」以上の勝利が求められた最終節でした。

なお、名古屋U18の得失点差は上述のTweetのセレッソ大阪U-18戦の「7-1」という試合結果を受けてのもので、その前節の結果がなければ、得失点差の条件は絶望的なものでありました。

最終節の前々日、下記投稿を行いました。

一読しても何も読み取ることのできないTweet…。今思い出しても、恥ずかしい限りです…。

リアクションしてくれたのは、数人の選手と、最終節を迎える状況を把握しているYB(ユースバ◯)の皆さんだけでした。

そして、その最終節の結果と最終順位表は、下記の通り。

◇試合結果

◇2015プレミアWEST最終順位

今なら確実にトレンドに上がっていたであろう結果ながら、しかし実際に話題となったのはアカデミー関心層界隈のみ。名古屋グランパスのアカデミーを取り巻く当時の状況は、そんな牧歌的なものでした。

私はその試合結果の興奮と、その情報発信に対する反応の少なさに、翌シーズンからのアカデミー関連の情報発信を更に拡充しようと、心に決めたのでした。

アカデミーへ添い遂げようと決めた「SNS講習」

その2016シーズンを迎えるにあたり、アカデミースタッフの方と相談し、新U18チームとU15チームへ、SNSの使い方講習を行うことを決めました。アカデミーの選手たちは普段からプライベートでSNSに接するだけでなく、“グランパスのエンブレムを胸に掲げる選手”として、SNSでアカデミーでの活動に関する情報発信していることが多かったからです。

毎年2月にJ、リーグが新人選手へプロアスリートとしての心得を授ける講習を行うことをご存知の方もいらっしゃるかと思います。その場で行われる「SNS講習」の資料が各クラブへ展開されるようになったので、それをアレンジさせていただきました。※各プラットフォームの利用条件に当てはまらないU12の選手たちへは、保護者の方を交えたレクリエーション等で代替しました。

最初に講義を行ったU15の選手たちは真面目に聴講してくれ、それに少しの手応えを感じた私は、U18の選手たちを前に、講師然とした姿で壇上に上がった、はずでした。

開始時間が過ぎても、まぁお喋りが止まらないこと。その急先鋒は新一年生の菅原由勢選手(現AZアルクマール)でした。

例えるなら、クラスのお調子者。U-15日本代表に選出されるたびにリリースを準備し、自然と募っていた由勢選手への私のリスペクトの気持ちは、段々と薄れて行きました。

しかし、そんな状況を収めたのも、その由勢選手でした。私が壇上でまごついていることに気付くと、上級生の選手たちに向かって一言、「皆さん、静かにしましょう!」と。

勝手にオウンゴールした後に、同点ゴールだけでなく逆転ゴールすら決める、そんな当時15歳の太々しさというか逞しさに度肝を抜かれた私は、その由勢選手を始めとするアカデミー選手たちの隠れている魅力を、ファン・サポーターの皆さんへ知らしめるしかないなと、心新たにしたのでした。

初めてのアウェイ「2017 プレミアリーグ参入戦」

2016シーズンは残念ながら、クラブ初のプリンスリーグ降格という結果になってしまいました。トップチームに続く降格、私のクラブスタッフ生活において最底辺の2ヶ月でした。

翌2017シーズン、名古屋グランパスU-18(このシーズンより「-」が付きました)は、初めて戦うプリンスリーグ東海の舞台を見事に闘い抜き優勝、翌シーズンのプレミあリーグ昇格をかけた「2017 プレミアリーグ参入戦」への進出を決めました。

参入戦の舞台は、コカ・コーラウエスト広島スタジアム。当時のトップチームの風間八宏監督が、Jリーグ開幕戦において日本人初となるゴールを決めたスタジアムでした。

12月15日の一回戦で長崎総合科学大学附属高校に勝利した名古屋グランパスU-18は、その翌々日の北海道コンサドーレ札幌U-18との決勝戦へと駒を進めたのでした。

決勝の前日に会場のことを風間監督へ伝えると、「なら大丈夫でしょ」という心強い言葉を下さいました。その言葉を胸に試合当日、私は広島へ移動しました。

決勝の前々日の一回戦でも、スタジアムでYBの皆さんが応戦してくださっていたことを試合を伝える写真で把握していましたが、実際にスタジアムで見る横断幕の数々は、普段トヨタスポーツセンター第二グラウンドで見慣れたそれらそのもの、ではなく、いつも以上に輝いていて、その光景が目に飛び込んで来た瞬間に、私は勝利を確信したことを覚えています。

その決勝戦、前半に二年生の由勢選手のコーナーキックを同じく二年生の藤井陽也選手(現KVコルトレイク)が頭で合わせ先制点。後半アディショナルタイムには、三年生の杉田将弘選手(現バレスティア・カルサFC)が追加点を決め、丁度2週間前にJ1復帰を決めたトップチームに続き、見事にプレミアリーグ復帰を決めたのでした。

満員のホームで決めたトップチームのJ1復帰は格別なものでしたが、中立の地で決めたU-18のプレミア復帰も、広島まで駆けつけてくださったYBの皆さんと移動時間ギリギリまで喜びを分かち合うことができ、それは忘れられないひと時となりました。

※この時以来の小西工己社長の胴上げは、今シーズントップチームで絶対に。

吉田麻也選手と菅原由勢選手

「2018 FIFAワールドカップ ロシア」を翌月に控えた2018年5月、トヨタスポーツセンターにSAMURAI BLUEの吉田麻也選手が来訪してくれました。

他クラブでは、海外に移籍した選手が古巣クラブを訪問することがよくあり、それを伝える発信を、私はクラブの人間として羨ましく感じていました。

麻也選手は名古屋グランパスアカデミー出身選手として、海外クラブへ移籍をして日本代表まで駆け上がった初めての選手。J1復帰時のお花など、事あるごとにクラブへ連絡をくれていましたが、

様々な事情で、なかなかトヨスポへの来訪が叶わない時期が続きました。しかし2018年5月、麻也選手を前にしたアカデミー選手たちの輝く目を見た瞬間、それまでの空白期間は吹き飛びました。

なお、この来訪時に麻也選手へU-18の選手たちからワールドカップへの激励の寄せ書きが手渡され、そのうちの一人の選手の言葉を、麻也選手が翌2019年の来訪時に教えてくれたのでした。

高校二年生でプロデビュー後、17歳でプロの壁にぶち当たっている最中ながらも偉大なる先輩へ大胆不敵に宣言し、20歳で同じ地へと辿り着き、その肩書きを鼻にかけることなく帰国のたびにトヨスポの地に足を運んでくれる…。

あのお調子者だった15歳の成長過程には、同じアカデミーの先輩の存在が常にあったのでした。

こうして系譜は紡がれていくのだなと、感じたことを昨日のように思い出すことができます。やっぱり、名古屋アカデミーは最高だ!

訪れるはずだった名古屋アカデミーの“黄金期”

2019シーズンの名古屋グランパスU-18の躍進と、その翌シーズンのコロナ禍のやるせなさについては、grapo.netに寄稿させていただいた古賀聡前U-18監督へのトリビュート記事に書きました。

アフターコロナ2年目を迎えた今でも、あのパンデミックが無ければ…、そんなことを考えてしまう自分がいます。その思いを新たにしてしまったのは、先週末のプレミア開幕戦がきっかけでした。

ファジアーノ岡山U-18との試合のハーフタイムに、私はYBの皆さんに挨拶をさせていただき、選手のチャントや横断幕を制作されている伊藤さんにもお会いできました。

名古屋アカデミーを設立時から支えてくださった田尻邦昭さんの送別会を2022年1月に第二グラウンドで開催した時以来、約2年ぶりの再会でした。

伊藤さんに、「感染対策をせずにプレミア開幕を迎えられるのは2019シーズン以来ですね」とお伝えさせていただいた時、伊藤さんの口から「2020年のチームをプレミアで闘わせたかった」という言葉が溢れました。私は返す言葉を持っていませんでした。

クラブユース選手権、Jユースカップ、プレミアリーグWESTを制し、3冠をかけた青森山田高校とのプレミアリーグファイナルに敗れてしまった2019シーズン。2年生だった選手たちは、自分たちが最上級生になって迎える2020シーズンを、リベンジと昂ぶりながらも楽しみに待ち望んでいたのではないかと思います。そしてそのシーズンは、U-18だけでなく、名古屋グランパスアカデミーの黄金期の到来を告げるシーズンになったはずです。しかし、全てはパンデミックに破壊されました。

私事ですが、コロナ禍の4年を振り返られるようになったのは最近のことです。そんな私に、かけがえのない青春の時を奪われたアカデミーの選手たちやスタッフの方々のことを、想像できるはずがありません。

あの4年間は、誰も悪くないないですし、普段ではなかなか想像することに到達し得ない、たくさんのことに気付くことができた、そんな時間であったと表現することもできるかもしれません。それでもやはり、失ったものが大き過ぎました。伊藤さんの言葉を受け、そう感じずにいられません。

そして未来は紡がれる

先週末のプレミアWESTの開幕戦の試合終了のホイッスルが第二グラウンドに鳴り響いた後、両チームの選手たちは相手ベンチへ挨拶した後に、それぞれの相手サポーターの下へと歩を進めました。

名古屋の選手たちは約10名の岡山サポーターの皆さんの下へ、岡山の選手たちはYBの皆さんが中心に陣取るこちら側へやって来てくれました。

整列した岡山の選手たちが一礼した後、更に大きな拍手を送るYBの皆さん。その拍手に応えるように小さく拍手を返す岡山の選手たちが印象的でした。

そして、キャプテンの藤田成充選手に至っては、他選手と一緒に一礼をした後、名古屋サポーターをじっと見つめ、その後もう一度礼をしてくれました。その眼差しと一礼は、U-18最高峰のプレミアの舞台で試合ができることへの感謝にも感じられましたし、試合中にYBの皆さんがその舞台にふさわしい応援を繰り広げられていたことへのリスペクトのようにも感じられました。

開幕戦のボールパーソンは、U-12の選手が務めていました。普段は控え選手が務めているのですが、YBの皆さんによると、U-12の選手が担当するのは初めてではないか、ということでした。

そして、勝利後恒例の『風』の合唱と勝利のジャンプの際、そのU-12の選手たちをU-18の選手たちは招き入れました。

下記ポストは、その光景を見た伊藤さんの言葉です。

そんな名古屋アカデミーの未来を、皆さんも共に紡いでみませんか?

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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