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法曹養成について思うこと(初の陳情で書いたこと)

「法曹」とは馴染みのない言葉かと思いますが、一般的には、裁判官・検察官・弁護士といった司法試験に合格してなる職業の人たちのことを言います。

今、まさに国会で、法曹をどう養成するのかについての法案が議論されています。

私なりに思ったことを、とある議員の方への陳情のお願いに書かせていただきました。せっかくなので、こちらでもシェアさせていただきます。
こちらは、あくまで個人の意見です。読まれた方のご意見も教えていただきたいです。

なかなかの長文ですw

そして、不慣れなので、引用が段落ごとに切れてしまっているのもご愛嬌ということで。。。

私は現在、東京で弁護士をしております。
今回は、3月12日に閣議決定されました、法曹養成制度に関する改正法案に関し、ぜひ陳情の機会をいただきたくご連絡しました。
1 陳情に至った経緯
 今回の法改正は、大きく2つありまして、①法科大学院の最終学年で司法試験を受験できるようにする、②最短5年間で法学部入学から法科大学院修了に至る「法曹コース」の導入です。
 私は、端的に申し上げて、2004年に開設された法科大学院制度を骨抜きにし、司法制度改革の元での法曹養成制度の趣旨を没却することにつながるため、改正には反対の立場です。
 
 既にご存知のことも多く、大変恐縮ですが、今一度、法科大学院制度の趣旨を述べさせていただきます。
 この制度は、従来の旧司法試験が、知識偏重かつ科挙のような過酷な試験であるため、リーガルサービスを受ける国民の需要に応える多様なリーガルサービスを質・量ともに提供できていなかったことの反省からできたものです。ですので、私のように法学部以外のバックグラウンドを持った人材も、法科大学院で3年勉強すれば、司法試験に(制度開始当時は8割)合格できるようにすることが、制度の中核でした。すなわち、弁護士や裁判官といった法曹を目指す人材を広く確保し、一発試験といった「点」での選抜から、法科大学院でしっかり時間をとった「線」としての法曹養成を行うことが、法科大学院設立の趣旨だったのです。
 上記の法科大学院趣旨と照らし合わせると、今回の改正法案のうち、①によっては、従来3年と決めた法科大学院の教育カリキュラムを、実質半年以上前倒しで終わらせることを意味します。現状では、3年の夏が受験タイミングとされているためです。また、法科大学院生にとっても、在学中に司法試験を受験するプレッシャーから、法科大学院の授業よりも、受験勉強を優先することは目に見えています。これでは、法科大学院が受験予備校になってしまいます。さらに言うと、私もそうでしたが、法学未修者にとって、2年半での現行司法試験突破はほぼ不可能です。その結果起こることは、在学中に司法試験を合格させ、その後司法修習に入るまでの「ギャップターム」を短くするための法改正によって、逆に、「ギャップターム」が長くなる現象が起こります。
 ②の改正では、法学部の3年と法科大学院2年(法学既修者は、2年で修了となります)の合計5年で一貫して法曹教育をしようというものです。これには2点、問題があると思っています。もっとも大きな問題なのが、本来法科大学院の3年間で完了するはずの法曹教育が、逆に5年にのびてしまっている事です。そして2つ目は、このような一貫コースが生じる事自体が、「法曹の本流は法学部出身者」であることを内外に発信することになることです。私のような他学部生は、法科大学院に行くことが今以上になくなります。
 
 今回の改正は、法科大学院の現場に大きな負担と混乱を招いています。
 私の出身校である一橋大学法科大学院においても、法学部と法科大学院のどちらもあります。
 実際に教授陣と話したところ、これまでのカリキュラムに大幅な変更をしなければならず、対応しきれないと申しておりました。
2 陳情の内容
 直接的なものとしては、今回の2つの改正を止めていただきたいというのが、今回のお願いになります。
 その理由につきましては、「1 陳情に至った経緯」で述べさせていただきましたように、そもそも法科大学院制度の趣旨を没却するものであるだけでなく、法科大学院生をはじめとする関係者の誰にとっても、有益なものではないからです。
 
 一方で、法科大学院の志望者と、それに紐づく司法試験の志望者が減っているのは事実です。従って、改革が必要であることは違いありません。
 その改革の方向性について下記に述べさせていただきます。
3 あるべき方向性
 法科大学院の志望者、特に私のような他学部や社会人経験者が減っているのは、とりもなおさず、司法試験の合格率が低いからです。
 現在の専攻や仕事を投げうって、3年ないし2年の時間とお金をかけ、その結果2割しか受からないのでは、誰も行かないと思います。
 余談ですが、私が法科大学院に入学した2009年当時は、まだ「合格者は徐々に上げていく」というのが公式見解でした。
 また、本来は経済的理由などで法科大学院での学習が不可能な人が受ける試験であった予備試験が、法科大学院に行かなくても司法試験を受けられると言う「短縮ルート」として使われていることも問題です。
 つまり、今回の①②のような小手先の改革をするのではなく、現在の問題点を抜本的に解決するために、司法試験の合格率をあげ、予備試験の受験資格を厳格化することこそが、今求められていると考えます。
 最後に、司法試験の難易度を下げることが、法曹の質を下げる、との予想される反論について再反論を1つさせていただきます。
 まずは、質が伴っていない弁護士になされるはずの懲戒制度ですが、弁護士白書(https://bit.ly/2vgsyLH)によると、2017年に懲戒対象になっている弁護士の場合、77パーセントが弁護士経験10年以上です。懲戒請求の中には、理由のないものもありますが、制度改革によって法曹人口が爆発的に増えていることも加味すると、経験年数10年未満の被懲戒者の割合がもっと高くてもよいはずです。すなわち、試験制度の難易度だけが、法曹の質ではないのです。
 
 以上、長くなりましたが、ぜひ直接、お会いしてお伝えできればと思っております。
 何卒よろしくお願いいたします。

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