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読書、ヴァイオリン、オーケストラ、ビーズ、マラソン、ウルトラマラソン、観劇、美術館、ガレット・デ・ロワ、顔ハメ、ちょっとだけ乗り鉄。

金原ひとみ『アタラクシア』(集英社)

金原ひとみの新刊『アタラクシア』を読む。そもそも、アタラクシアって何さ、と本を読み終わった後で調べる。Wikipediaによると、「心の平静不動なる状態のこと、乱されない心の状態」だそうだ。なるほどなるほど、これは、人間関係の中に出てくる人たちが1章ずつ一人称で語る、見た目短編連作のような(窪美澄的?)小説だが、つまりは最初の章の語り手だった由依が主人公の小説で、小説中でサイコパス的、と言われる、

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金井美恵子『噂の娘』『「スタア誕生」』(講談社)

北条裕子『美しい顔』を読むために、昨年の「群像」を借りてきた時に、書評欄を見て気になった、金井美恵子「『スタア誕生』」、それより前に発表されていた『噂の娘』とつながっているというので、まず『噂の娘』を読んでから、「『スタア誕生』」を読むが、金井美恵子を読むには本当に体力がいる。修辞に修辞を重ねた長い文章を、どこが主語でどこが述語か、見落とさないように注意深く読んでいないと自分が何を読んでいるかわか

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三浦しをん『ののはな通信』(角川書店)

2018年の記録。

三浦しをん『ののはな通信』(角川書店)読了。高校時代の同級生だったのの往復書簡。わたしより少しだけ年下の二人の、間を開けながら、30年くらい続いた魂の吐露の交換、もどかしいこと、違和感のあること、読者のもやもやを、最後のページが洗い流してくれた。ここだけ読んでもきっとネタバレにはならないので引用。

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私に魂というものがもしあるのならば、それはあなたのものです。渡り鳥が海

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梨木香歩『椿宿の辺りに』読んで、『f植物園の巣穴』(共に朝日新聞出版)を再読

梨木香歩の近刊『椿宿の辺りに』を読む。父方の祖父の強い意向で山幸彦と名付けられた主人公。一人っ子だったので、海幸彦の名づけは従妹に対してなされた...彦はあんまりということで「海幸比子」と名付けられ、それぞれ、余りに仰々しい名前を厭い、山彦、海子と自称し、周囲の人にもそう呼ばれているが、普段は殆ど接触を持っていない二人が共に、原因のわからない疼痛に悩まされ、医療機関や鍼の治療を受けながら、根本的な

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柚木麻子『BUTTER』(新潮社)

2017年の読書記録。

柚木麻子『BUTTER』(新潮社)読了。木嶋佳苗をモデルにした梶井真奈子と、彼女のインタビューを取ろうとする週刊誌記者里佳のぶつかり合いの物語、に、途中から第三の主役も浮かび出て、物語の展開が全く読めない。これは柚木麻子の4回目の直木賞候補作で、そろそろあげようよ、とも思うが、余りに肩に力が入りすぎている感じで、読んでいてちょっと疲れる。彼女が描こうとしているのは、一貫し

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桐野夏生『デンジャラス』(中央公論新社)

2018年6月の読書記録。

桐野夏生『デンジャラス』(中央公論新社)読んだ。谷崎潤一郎と三人目の妻松子、その妹重子『細雪』の雪子のモデル)、松子の息子の嫁千萬子、の物語。重子の視点から、兄と姉の夫婦の愛情の揺るぎなさ、自分の薄幸さ、兄の寵愛が義理の息子の嫁に移っていく焦燥感を描いていて、これは小説だからすべてがすべて事実ではないだろうけれど、書くことの業、書かれることの業が執拗に追求されていて、

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