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VPPビジネスの最前線 -調整力を事業化するための課題と可能性【エネルギーテック勉強会#3】2/3

2019年10月28日、dock-Kamiyachoにて第3回エネルギーテック勉強会が開催されました。株式会社シェアリングエネルギー株式会社エナーバンク(SEB, Sharing Energy Bank)が共同主催する「エネルギーテック勉強会」は、20兆円という巨大なエネルギー市場を、クリエイティビティとテクノロジーを駆使して、イノベーションの創出にチャレンジすることに関心の持つ人達のコミュニティです。業界の基礎知識、国内外のユースケース紹介、最新技術など、エネルギーテックの全体像の理解と最前線の情報の共有に重きを置き、お互いの知見をシェアしあう双方向的なコミュニティを志向しています。第3回は「VPPビジネスの最前線 -調整力を事業化するための課題と可能性」と題して、前半のキーノートスピーチはソーラーエッジテクノロジーのアラン・コラーさんより海外でのVPPビジネスのユースケースをご紹介いただき、後半のパネルディスカッションでは関西電力の石田さん、LO3 Energyの大串さん、MCリテールエナジーの小野寺さんをお招きして、VPPビジネスの国内でのポテンシャルについて議論します。
<スポンサー紹介>
会場提供:Creww株式会社、懇親会提供:エネルギーテックニュースアプリEnergyshift(エネルギーシフト)、後援:EnergyLab Japan

エネルギーテック勉強会#3 パネルディスカッションの最初の記事は、こちらです。


自己紹介 - MCリテールエナジー 小野寺様

MCリテールエナジー 小野寺さん(以下、小野寺):皆さんこんばんは、MCリテールエナジーの小野寺です。今日はMCリテールエナジーとして登壇させて頂いておりますけれども、まだ現職に入社して4ヶ月程度でして、自分の実績としては前職のエナリス社での実績がほとんどになります。

(P. 0)ざっくり実績を申し上げますと、2011年11月、4地域実証と言われる豊田市での低炭素社会システム実証で、デマンドレスポンスのサービス企画やシステム企画周りを携わらせていただきまして、そこから東京電力さんのビジネスシナジープロポーザルで、日立さんとダイキンさん、この4社でプロポーザルを組みまして、デマンドレスポンスの取引周りに携わりました。

ネガワットという言葉が出てきた2015年、2016年頃、次世代エネルギー実証の中のネガワット取引に関わる実証というプロジェクトで、ここでも事業企画に関わらせていただきまして、バーチャルパワープラントの元年であります2016年からは事業の立ち上げや制度設計の担当をさせて頂きました。

その翌年、電源Ⅰ’取引では、石田さんからもお話ありましたけれども、私たちも実取引として20MWくらい、ネガワットの販売をさせて頂きました。

そこからMCリテールエナジーに移らさせて頂きまして、VPPというところで言いますと、ここではローソンさんのコンソーシアムに入っておりまして、小売事業者としての役割でDRの発動を担っております。

(P. 1)ここからはMCリテールエナジーのご紹介ですけれども、MCリテールエナジーご存知でない方も多くいらっしゃるかもしれませんが、三菱商事とローソンの合弁会社でございまして、電力の小売を生業にしている会社です。

(P. 2)立ち上がったのは2016年で、小売事業を始めたのが2016年と、まだまだ若い会社でして、その中で私は新規事業の立ち上げを担当させて頂いております。

(P. 3)MCリテールの立ち位置は、ローソンは三菱商事の子会社で、電力ソリューショングループの中の新電力本部に属しております。

三菱商事の同本部の中の電力サービス事業部は、関西電力のVPPのコンソーシアムの中でVPPのRAとしており、普段からVPPをどうしていこうか?といつも話をしております。

また、左側の三菱パワーシステムですとか、DERの開発なども行っていますいますので、一体となって、VPPないし電力小売に取り組んでいる状況です。

MCリテールエナジー 小野寺様

(P. 4〜7)ここからは「まちエネ」のご紹介をさせて頂ければと思います。「同業他社の方に紹介しても意味ないんじゃないの?」と話したのですが、「やってこい」と言われましたので、紹介させて頂きます。

街エネは、東電さんに比べて安いですよという、よく言われるPPS(新電力)の謳い文句がありますけれども、街エネの特徴として、従量料金の三段階目が安いのが特長。なので、ここにいらっしゃるお金持ちの方で電力をいっぱい使うという方にとっては、メリットがいっぱい出るサービスです。

ローソンとのシナジーとして、毎月クーポンがもらえたり、ポンタポイントが使った額に応じて付いてきたり、三菱商事の繋がりで映画の料金が安くなるといった点が特徴となっております。

サービスの対象エリアとしては、現状は東京電力管内のみとなっております。

(P. 8)今月10月1日に発表させて頂きました、2つのメニューですけれども、「毎晩充電し放題プラン」、これはEV(電気自動車)向けのプランになります。何が特徴かと申しますと、家庭でのEVの充電をすべて無料にさせて頂いております。DER、フレキシビリティを集めるための方策として活用させて頂いております。

(P. 9〜10)法人向けの実績としては、ローソン、関東の3,600店への電気の供給をさせて頂いております。

(P. 11)今回のVPPの話ですけれども、私たちはローソンのコンソーシアムにいるんですけれども、実は上のアグリゲーション・コーディネーターの部分をさせて頂いており、三菱商事の発電機だったりとかが一体となって繋がっている状態です。ローソン店舗の空調機、照明、冷凍庫の制御をすることで、VPPとして活用させて頂いています。

今後はそういったところの取引の部分を確立するところでして、そこからDERを集めるための施策、そして石田さんからお話ございましたが、VPPを使ってP2Pなど、総合的に進めていきたいなと思っております。


井口:小野寺さん、どうもありがとうございました。ということで、三者三様の猛者揃いで、本日のパネルをお贈りしていきたいと思います。

一応ポジションとしては、石田さん(関西電力)がアグリゲーションコーディネーター、小野寺さん(MCリテールエナジー)がアグリゲーター、大串さん(LO3 Energy)がベンダーという立ち位置かなと思います。パネルでは、ガチの本音トークを行って頂きたいなと思います。


VPPの基礎理解の共有 - 5W2H

(P. 2)パネルディスカッションに先立って、私からは、VPPの基礎理解の共有ということで、VPPを5W2Hのフレームに沿ってお話します。時間の兼ね合いもありますので、ポイントだけお伝えできればと思います。

(P. 3)VPPは仮想発電所と言われるように、多数の分散電源をアグリゲートして1つの大きな発電所と見做し、各プレイヤーにサービスとして価値を提供するビジネスモデルです。

ここには4つのプレイヤー(送配電事業者、小売電気事業者、発電事業者、需要家)が記載されていますが、先ほど石田さんより、4者すべてにサービス提供することは難しいのではないか?というお話がございましたね。

(P. 4)VPPの実証実験には、既に58社の事業者が参画しているんですね。

(P. 5)「調整力とは何か」については、いろんな意味合いがあるかと思いますが、OCCTO(電力広域的運営推進機関)によると、「あらかじめ把握できない需要と供給の差を、一般送配電事業者が最終的に一致させるために使う供給力」という定義付けをしています。

では、「VPPビジネスとは何か」というところでいきますと、「調整力を需要家側(behind the meter)から調達し、必要とする事業者に提供しサービス対価を得る事業」というのが、昨日私がつくった仮の定義です。

よく「ΔkW(デルタキロワット)」という言葉を聴くと思うのですけれども、これは三菱総研さんによると「需給バランス調整に対応した調整力」と「周波数調整に対応した調整力」に分かれます。

前者は、ゲートクローズ(実需給の1時間前)後に送配電事業者が同時同量を実現する際にインバランス料金として費用回収し、後者は、アンシラリーサービスとして、今後ビジネスが拡がっていくのではないかと期待されます。

(P. 6)今申し上げたように、ゲートクローズ前までは、小売側と発電側で計画値を立てて実需給を合わせていきますと。ゲートクローズ後については、送配電事業者が瞬時瞬時で需要と供給の同時同量を進めています。

(P. 6)ただ、例外がありまして、FIT特例(①・③)ですね。FIT発電の電源に関しては、送配電事業者がインバランスリスクを負います。

そこの部分で、今後開設される需給調整市場にて「調整力 三次②」という商品が出来ますので、それで対応していくということになります。

(P. 8)では、なぜ需給調整市場ができるのか?というWhyの部分ですが、発送電分離が1つのきっかけだと言えます。

つまり、これまで送配電事業者は、自社のカンパニーあるいは別部署の発電部門から、主に相対取引で調整力を獲得していましたけれども、これらが分離され、いろんな取引先が増えます。

その結果、「競争促進による調達コストの削減」や「調達の透明性/公平性の向上」といったことが期待されます。

では、その調整力市場で何を取引するのか?という点については、「需給バランス調整、周波数制御の目的で系統運用者が電源設備の物的なコントロール権を取りに行く」というのが、三菱総研さんの解説です。

井口

(P. 9)この「物的なコントロール権」、これは何かと言いますと「事前にこの電源の容量(ΔkW)を予約しますよ」という予約権ですね。それに加えて、実際にその電源を「放電してください、充電してください」といって動かした際には、発生する電力量(kWh)も取引に含まれます。

つまり、ΔkWとkWhの2つが市場での取引の対象となります。

(P. 10)Howの部分、システム的にどうやって動かすかについて、図の左側の需給調整市場システム以外は既に出来ています。右側の送配電事業者間の調整力の広域連携については、これから作られます。

(P. 11)先ほど、三次②という商品があるとお伝えしましたが、これは45分以内という少し長めの時間で応動する必要があるものです。それ以外には、応動時間が15分以内だったり、10秒以内だったりと、より細かいものもあり、それらは別の調整力メニューとなっています。

2021年の需給調整市場が開設される際は、三次調整②という商品からできるという形になります。

(P. 12)では、How much、需給調整市場あるいはVPPビジネスがどのくらいの市場の規模感になるのかという点についてです。

市場規模を計るための考え方、概念としては、結論だけシンプルに言えば、「三次②の必要量とは、全体の誤差と、ゲートクローズから実需給の誤差、これらの差分」ということですね。これがΔKWになりますので、この価値に加えて、かけるアワー(h)をすることで、これで全体の規模(kWh)が出てくるになります。

(P. 14)このスライドは、調整力の商品ラインナップです。石田さんからご説明がありましたように、三次調整力②が、今後市場にて取引されていくということです。

なお、三次調整力②の通信回線は、簡易指令システムでの対応が可能ですが、それ以外の商品は、専用線が必要です。ここ部分は、参入のハードルが高いと言えるのではないでしょうか。

(P. 15)このグラフは大串さんにご作成頂きましたが、既に取引されている調整力の公募の結果の推移です。

落札電源の平均kW価格は、おおよそ11,000〜12,000円/kWです。この単価に、容量規模(kW)をかけることで市場規模が算出されますが、全体としては、約1,500億円になっています。

ただし、需給調整市場が開設された後に、全体のうち、どの程度の規模感で新規参入の余地があるかについては、後ほど議論していければと思います。

(P. 16)では、海外の調整力市場はどの程度の規模感なのか?について、OCCTOさんの資料に基づいてまとめたスライドがこちらです。商品全体の合計値をざっくり計算したので、もしかしたらズレているかもしれませんので、ご了承ください。

2016年の資料によれば、北米PJM(米国北東部地域における独立系統運用機関)の年間取引金額は、約2億円です。ちょっとやたら少ないのが気になりますが。

ドイツに関しては810億円で、イギリスは130億円となっています。

(P. 17)スケジュール感で言うと、2021年に需給調整市場が開設予定で、商品としては三次調整力②が登場します。その後、順次、市場で取引できる商品ラインナップが追加される予定です。

(P. 18)以上になります。これからパネルディスカッションに入りますが、私がもっとも聞いてみたい点は、VPPビジネスの市場が日本で生まれますが、

・事業者にとってビジネスチャンスになり得るのか?そこにどれくらい投資すべきなのか?

・海外で市場が成立している条件が何で、それは日本にも持ってくることができるのか?

という部分です。

では、パネリストのお三方にお伺いしていきたいと思います。

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VPPビジネスの最前線 -調整力を事業化するための課題と可能性【エネルギーテック勉強会#3】3/3 は、こちらです!


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