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「自律的な組織」の給与の決め方のパターン

「どうやって給料を決めるのか?」

自律的な組織づくりを進めるときに、ほぼ全てのケースで、ここの問題に行き着きます。まったく「正解」はない世界ですが、現状見えているパターンを整理してみました。

そもそも「原理的」に難しい

組織を自律的に運営することを目指すならば、「多様な価値観を認める」ことが重要になります。

たとえば、関わる本気度、関われる時間、などは人によって違うので、「柔軟な働き方」を認めた方がうまくいきやすくなります。
また、デザインが得意な人もいれば、人脈が豊富でフットワークの軽い人もいるし、コンセプトを整理体系化することが得意な人もいたり、「発揮する専門性」も人それぞれ違います。(むしろ違った方が良い)

しかし、いざ給与を決めようとすると、これらの多様性は、「お金」という「単一のモノサシ」に必ず落とし込まれる必要があります。ここに構造的に矛盾が生じます。

たとえば、
「デザイン性の高いロゴを作ること」に15万円の価値があるとしたならば、
「コンセプトとなるメッセージを作ること」の価値は?10万円?20万円?
その±5万円の違いにはどういう意味があるのか?
同じく「見込み顧客を紹介すること」は?
etc、etc…。

ダイヤモンドメディアの武井さんが前に支援した実例として、「全員が無報酬で取り組むボランティアのチームはすぐに自律的な運営がうまく行った」という話をしてましたが、逆説的に報酬分配の難しさが現れているケースだなと思います。

決め方に見られる3つのパターン

とはいえ、営利企業で実践する以上は、給与/報酬は決めなければなりません。
「絶対的に正しい」「絶対に万人が納得する」ような方法は存在しないので、理屈で言えば、自分たちに合うやり方を模索し続けるしかないことになります。
ただ、そこで終わってもなんというか救いがないし、世の中全体で見れば「車輪の再発明」に近いケースも起きてしまいそう。

まだまだこの領域は発展途上だと思いますが、せめてもの現在地点として、よく見られるパターンを3つくらいに分類してみます。
勝手に、ざっくりと分類すると、以下の3つに分けられます。このうち特に(3)はバリエーションが色々あります。

(1) 全員一律な給与分配

まず(1)全員一律。文字通りの決め方で、原理的には非常にシンプルです。
新人/若手は低いとか、職歴が長いと高いとか、多少の振れ幅はあれども、基本的に差はつけません。

たとえばソニックガーデンさんはこういう方式を取られています。

ただ、当たり前ですが、これはビジネスモデルとセットでデザインされて初めて持続可能です。
また、社長の倉貫さんの最近の著書「管理ゼロで成果はあがる」を見ると、いかに会社全体を管理せずに回せるか、ということに徹底してこだわっているかがよく分かります。

(2) 自己申告によって給与を決める

次に(2)自己申告。これも理屈は簡単ですし、個人的な感覚として、何らかの形で自己申告を取り入れることを試みる会社が多い気がします。

自己申告方式の中のバリエーションとして、
・自己申告した金額がそのまま採用される
・報酬委員会(orCEO)が疑問/質問は提示する(決定権はない)
・報酬委員会(orCEO)が最終決定権を持つ
など、本人が申告した金額がどこまで最終決定権を持ちうるか、ということにバリエーションがあります

ただほとんどの場合、自己申告をする「金額」も、決定に至るまでの「プロセス」も、全てオープンにされることが多いです。
これは、2月に自然経営研究会でリリースした調査結果にも関連している話で、やはり「情報の透明性」は色んな観点で必須になるのだと思います。

(3) ルール・方程式によって決める

たとえば、Bufferは方程式によってロジカルに計算されます。なんだったら全員の給与のspreadsheet公開されているし、自分が入るとしたらいくらもらえるのか?もwebサイト上で計算できます。

またティール組織の書籍に載って有名になったビュートゾルフ。ここは「勤務年数」と「教育レベル」などの変数である程度はロジカルに決まる、という方式を採用しています。(ただし2015年の記事だから今もそうかは不明)

あとやや無理矢理に(3)ルール・方程式に括ると、「市場価格」に近づけようとする決め方もあります。
たとえば「全員で話し合って決める」というダイヤモンドメディアはこの方式の典型です。これは、原則として自分の希望額は自分では言わない、という方式になってるのがややユニークなところ。

世の中全体で「試行錯誤の質」を高めるために

ここで挙げた以外にも、色んな試行錯誤はそれぞれ進められていますし、そもそもこの3つの分類ですらないケースもたくさんあります。

冒頭に書いたことと重なりますが、「自分たちに合った試行錯誤は必要」という上で、同じ失敗をあちこちで繰り返さないように、
「何に失敗したか」
「どんな工夫をするとうまくいくか」
「起こりがちな問題は」
など、さまざまな組織での実践知が集まり、集合知が活かされるような流れがもっと加速すればいいなと思います。

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