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フランスの職人技と創造性 -savoir faire-

ちょいちょいスーパーメゾン  エルメス(Hermès)の話をしている。
その職人技術とエレガントで創造性豊かなオブジェに魅了されることはあるが、エルメス信者ではない… お客様でもない… 町人風情のわたくし。

ラグジュアリーなオブジェはもちろん、フレグランス&ビューティとか…
新たな世界も拡大しつつある中、1837年の創業以来、ノウハウの伝承を大事に、職人技術を紡いで行く人たちも育て続けている。

エルメスにある16のメチエ (métier/ この場合製品部門)の中でも中心的存在、皮革部門にて"未来の職人を育成する場"のお話。と、最後におまけ画像。

セレブや顧客が待ち望むエレガントなアイテムを、将来製作することになるであろう職人を育成する場"エコール・エルメス・デ・サヴォア フェール"、
経歴を問わず、誰しもに雇用の扉が開かれている。Merci beaucoup!

最初の扉、フランス語が堪能であること….…. 静かに、扉は閉められた。。。

フレンチレザー (牛革)、 フランスのタンナー HAAS社 Derbyという革
Hermèsのアイテムでは"Veau Epsom"という名で使用されている


サヴォアフェール savoir=知る、faire=作る

フランス語 savoir-faire、英訳だと"ノウハウ、専門知識"と訳されるが、
フランスではもう少し深い捉え方の言葉という。
知識だけでなく、専門的、実践的な経験とスキルを含んだ言葉。
日本語で例えるならば… 技巧、匠の技、職人技などになるのか。

技巧、匠の技とすれば、時を経て培った実践的な経験とスキルだと思うが、時に独自の創意工夫や創造性、芸術として賞賛する感覚も含まれている気もする。
そこまでとなると巨匠レベルか… 日本人の繊細な感覚、感性、美意識。
フランスの感性や美学ではどうなのだろうか…

勝手に、池上 彰先生ぐらいわかりやすく足し算形式にしてみたら…
職人技+創造性=savoir faire…  個人的見解となっております。。。

ネイビーブルー
光加減による光沢… 実際マットな感じでもある


独自の研究機関

以前からエルメスは、フランス国内の工房にてノウハウの伝承、皮革職人の育成を行って来たが、2021年9月フランスの教育省から認可を受け、独自の研究機関、エコール・エルメス・デ・サヴォア フェール(L’École Hermès des savoir-faire) "職人技を学ぶ学校"を開設した。
学校という名だが、フランス国立教育機関認定の職業訓練校になったのね。
Al construir un nuevo taller para desarrollo de recursos humanos y la promoción del empleo, se puede recibir la subvención de estado… ¿Verdad?

2023年4月に開設したフランス北西部ノルマンディ、ルヴィエの新工房などで経験豊富な生産現場の職人が研修を行い、実習生はさまざまなノウハウ、教育省や皮革製品連盟が認定する研修など含め18カ月かけて学ぶ。
適正検査、個別面接などから始まり、ワークショップ内で3カ月間、その後12か月の労働研究契約をするという。

各コースの認定研修の修了者には、下記のフランス国家資格が与えられる。
・皮革製品職業適性証 CAP
(手縫い、研磨などレザーグッズ修了者)
・裁断、縫製の専門資格証明書 CQP
(カッター、またはミシンステッチャー修了者)

CAP、CQPを取得した者はエルメス社に永久契約で雇用され、見習い職人として同社の皮革製品アトリエの職人として加わることができる。
メゾンのハイプレッシャーも、もれなく与えられる…と思われる。

また取得者は、他のセクションでトレーニングを継続する選択も可らしい。

フレンチゴートレザー(山羊革)、フランスのタンナーAlran社 -Alran Chèvre Sully-
カラーは、Rouge H & tourterelle


課題ではなく、技術を学ぶこと

未来のクラフツマンとしてのスタートの場となる職業訓練校。

最新のサヴォア フェールの学校のPVでないが、エルメス公式youtubeの動画を下に貼り付けておいた。
前職は花屋、宝石商、肉屋、大学院卒、職業相談所から採用された人など、アイデンティティやそれまでの経緯もさまざまな人たち。
エルメスの職人のノウハウと資質の習得、細部へのこだわり、精度、品質への関心などを学ぶ。審美眼も鍛える感じかと…

こういう所に導かれてくる"天性の資質"を持った人が稀に現れたりする。
学びの吸収力と器用さ、才能と弛まぬ努力により職人となる道へ進む。

宣伝用に作り込まれたPVとは異なるメゾンの舞台裏、経験豊富な現場の研修責任者たちが実習生たちに様々なアプローチをして行く。

フランス語と英語字幕ですけど、伝わるモノもあるかと。


わたしは総手縫いでモノを作るので、言葉はわからずとも理解できたが…
このPVは手縫い職人のトレーニングの様子。
実際は手縫い、ミシン縫い、裁断と3つのコースの中、自らが選択した部門のトレーニングをする。

脳とは別に感覚として手にも記憶され残る。
道具を操る手が覚える経験値の触覚、角度、強弱… 手の動きや感覚を出来るだけ身体に染み込ませて行く。人間の身体って凄い感覚を持っていると改めて思う。

自分で考え感じる。何事も答えとなるかはやってみなければわからない。
トライ&エラーの繰り返しが職人技を身につける近道、アレコレと試すことで気づき、何かしら答えが見えてくる。

"Learning a craft and not a task. Never stop learning."
課題ではなく、技術を学ぶこと。 決して学ぶことを止めてはいけない。

lifelong learning… 生涯学習。。。

tourterelleは、キジバト色
きめ細かい山羊革のシボ(皺)は、手作業によって揉み加工を施されたモノ
一枚、一枚、または部位によりシボの違いもある


職人の7割近くが皮革職人

エルメスの職人約7千人の内、7割近くが皮革職人という。
現在もフランス国内に、250人規模の新たな皮革プロダクトなどの生産拠点となるアトリエを4つの地域で建設中、準備を進めている。年内に2つ、残りの施設は2年以内に開設を予定。単純に新たな雇用は1000人を越えるのか?

生産性を高め、売上げに大きく貢献している中国の超富裕層マダムたちに、私物合戦で"マウントを取るため"のニューアイテムをいち早く届けねばならぬのだろう… 勝手にそう思ってるだけやけど。。。

現場で経験を積む皮革職人、重要な製品を作れるレベルになるにはそれ相応の時間と努力の積み重ねが必要かと。
細部の精度、仕上がりなどのクオリティは個人の資質と経験、努力に依る。

創造力を自由に羽ばたかせるメゾンの職人になる道のりは、なかなか…
なかなか…長そうに思う。

自分たちの仕立てたアイテムたちが、数十万、数百万の値で顧客に渡る…
緊張するぅ… ゾクゾクするぅ… 毎日相当、疲れそぉぉぉ。。。


最後におまけ… バッグチャーム ストラップ製作

手縫い仕立てのバッグチャームの続き… サクッとお届け致します。
完成していなかった専用のストラップの製作画像をほんの少し。

本物に寄せ真剣に好きに仕上げるという、ある意味バカバカしさと遊び心のバッグチャーム、ストラップ完成後に私物のトートバッグに着けてみた。

手裁ち、穴を開けた後、手縫い… 縫うのは手間だけど。。。
オモテ、ウラの革との間に、伸び止めの芯材をサンドイッチした。
アナタにも、しわ寄せのお裾分け…
ウラ側しわしわ…ではなくて、細かくしわを寄せて革を巻く、くるみボタン。
100均クリップを使って、絶賛乾燥中。
こちらはコバ仕上げを"イタリアの水性コバ仕上げ剤"に変更
アレも、コレも手仕事
こんな感じ。
革と内部は布製内袋のMyトートバッグのハンドルに取り付け
違う角度… ちょっとした光加減で見える天然皮革の自然な皺。

初めて革に触れたのは、ちょうど7年前ぐらい… モノづくりなどした経験もなく、
プロのミシン革鞄講師に型紙からミシン縫製など教わり、自分で製作したMyトートバッグ。
ミシンは持ってないし、長いこと踏んでもない。もう試行錯誤の手縫いのみでございます。

革紐などでも十分だけど、お揃いのモノを作っておきたく、取り外し可能のストラップを製作した。
アウターなどに使われる"ジャンパーホック"は、結構強く外れにくい。
"ホック外れて、チャームどっかいってもうた…" とならないように 。

全て手裁ち、手縫い、切り目磨き仕上げのバッグチャームとストラップ。
本来の革バッグの作り、サクッと作れるものではない。
絶賛サンプル品、使用革や多少作りを変更するのもアリかと。
終了したけど、まだ遊び足りない。。。くりえいてぃびてぃ…も足りない?
創造性を、もっと創造的思考力を高める必要アリやろな…

何か素敵なコト、閃かへんか… ¡Ojalá! se me ocurra una buena idea…

ではまた、¡¡Hasta luego!!




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