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随想③「笑顔」という行動

ー以下、随想原稿ですー(後書きあります)

ハーバード大学の医療社会学という分野の研究で、面白い内容を耳にした。「幸せ」と自分が口にすると、幸福感が他者に伝染する、というものだ。6km圏内で誰かが「幸せ」というと、幸せが伝わる人は身近な人で15%、知り合いの知り合いに伝わるのは6%ということを科学的に証明した研究だそうだ。明確な方法や内容は割愛するが、詳細を聞かなくても、なんとなく納得してしまう部分もある。「あ〜、幸せ!」と美味しそうに何かを食べている人を見れば、こちらも嬉しくなる。「嬉しい」「幸せ」という感情は、人を媒介して伝染していくのだろう。
 また、ある脳科学の本では「嬉しい」等の言葉を口にすることで脳が活性化され、より幸福感を感じやすくなるという内容が書かれている。意図的にそういった言葉を発していくことで、脳が「嬉しいこと」を感じやすくなり、その言葉に適するように現実を解釈していくらしい。先人たちが何を感じて言葉を残したのかは想像の域を出ないが「笑う門には福来たる」が科学的に証明され「言霊」という力が現実的に見えてくる。
 単純に、笑顔でいる人は人として魅力的だ。よく笑ったり、日頃から基本的ににこやかな人には、好感も持ちやすい。よく笑う人には「気づく力」がある。言い換えれば、ほんの小さなことにも幸せを感じる力だ。当たり前に思われるようなことの中にある幸せに気づく力が、人よりも多くの笑顔を生んでいるように思う。そういった力は、日々の積み重ねなのかもしれない。意識して気づいてみたり、口に出したりする積み重ねの先に、習慣として気づく力ができて、自然と笑顔が増えるのだと思う。
 先月、東日本大震災から8年目を迎えた。いろいろな側面に心を揺さぶられながら、これまでを思いかえした。自分が何かをできたかと問われると、首を縦に振るのは難しい。私に、あるいは私たちにできることが非常に限られている、という底のない無力感を、思い返すたびに突きつけられる。東日本大震災に限らず、日頃の悲しいニュースを聞いても、私たちにできることはとても限られている。 
 「限られている」から、目の前のできることから行動に起こしていきたい。冒頭の話を日常の行動につなげることが、とてもシンプルだと思っている。よく笑ったり、嬉しい・幸せなどの感情を意図して口に出すと、自分の事を幸せにできて、それが他者にも伝染していく。
 今、ここにいたくてもいれなかった人がいる。彼らは精一杯、私たちが今いるこの時間にいようとしたはずだ。ありきたりではあるが、ここにいることができる時点で、すでに私たちは幸せだ。今が当たり前ではないことを、8年前にみんなが思い知らされた。それでも、そんな感覚は静かに日常の中に埋もれていく。
 だからこそ、今できることをしていきたい。「笑顔」という行動は、ここにいることのできた私たちにできる「限られたこと」の中の、大切な一つではないだろうか。

ー後書きー

まとめ方で悩んだランキング第一位の原稿でした。ずっと決まらず、何度も書き直しました、、、。
この内容が一番好き!という声と、めっちゃ行動に移します的な声を頂けたので、実はすごいほっとしてます。
限られているからこそ、できることは行動に移していきたい。

いい時に笑うのは普通。
辛い時と、普通の時に笑えるのが人間力。
そんなことを自分に言い聞かせながら書きましたとさ。

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