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「アート旅」の楽しさを教えてくれた本

参加させていただいているメンバーシップ「オトナの美術研究会」の月イチ企画、6月のお題「#おすすめの美術図書」について書きます。

◆画家への愛を感じられる

私の人生を豊かにしてくれた大切な美術図書、そのタイトルは…

『カラヴァッジョ巡礼』(新潮社)。

著者は、美術史家で神戸大学大学院人文学研究科教授の宮下 規久朗(みやした きくろう)先生です。

この本では、画家カラヴァッジョの波瀾万丈な生涯を、イタリアに残された作品とともに辿ることができます。

カラヴァッジョの作品だけでなく、彼が見たであろうと思われる作品も掲載され、この画家がどのように画業を極めていったのかを知ることができます。(もちろん、殺人を含む画家の悪行遍歴も紹介されています)

専門家の書く美術図書は、ときには難しくて読みづらいものもあるのですが、宮下先生の文章は大変読みやすく、またカラヴァッジョ愛が随所にあふれているので、読んでいるうちに、自分もカラヴァッジョのファンになっていきました。

◆巡礼の旅へ…

すっかりカラヴァッジョの魅力にとりつかれてしまった私は、本書を片手にイタリアで「カラヴァッジョを巡る旅」を開始。

もちろん、ツアーなどはないので、すべて自分で計画しました。なかには、貴族の個人邸宅に飾られている作品もあるので、細かな交渉もしなければならず、イタリア語も学びながらアート旅を続けました。

ミラノ、ローマ、ナポリ、シチリア、マルタ……

カラヴァッジョが訪れた場所や、幽閉されていた地下牢なども本を参考に見学。

この本では、カラヴァッジョ巡礼をしやすいよう、各作品が場所別に紹介されているので、旅行先でも重宝しました。

シチリア・シラクサのネアポリ考古学公園にある石切り場跡にある洞窟。カラヴァッジョが「ディオニシオスの耳」と命名し、今でもそう呼ばれています。こんなプチ情報も本に載っていました。2018年訪問。

◆注意点も…

人生を変えた、とまではいえませんが、『カラヴァッジョ巡礼』に出合えたことで、間違いなく私の人生は彩り豊かになりました。

本書は、カラヴァッジョという生き様も作品もドラマチックな画家の人生を、その作品とともに味わえる最高の内容です。文章も写真もすばらしく、心からおすすめしたい美術図書のひとつです。

でも、ご注意ください。あまりにも良い本なので、読み終わったら巡礼に出たくなる可能性があります。イタリアで、彼の作品を見たくなる衝動がわいてきて、そして、一度本物を見たら、感動して、さらにほかの作品もすべて見たくなり、そうしてイタリアに通ううちに現地の魅力にハマり、イタリア絵画もコトバも料理もブランドも大好きになり、貯金が減ってしまう危険もあります。

『カラヴァッジョ巡礼』、ぜひご一読いただけたらうれしいです。





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