書評

鳥飼久美子『英語教育の危機』(ちくま新書.2018)
著者は、現在の英語教育にはいくつかの問題があると述べている。特に、本書は大学入試について述べられている。2020年からセンター試験が廃止され、大学入学共通テストに変更され英語の試験に民間試験の導入が行われる。導入される目的は4技能図るためだが、試験の不公平が生じる。また高校での授業が民間試験対策用の授業になり、本物の英語力が身につかない。高校生の人生を左右する試験なので民間試験の導入は時間をかけて議論すべきだ。

今津孝次郎『教師が育つ条件』(岩波新書.2012)
教師が問われるべき資質・能力は何か。著者は、①勤務校での問題解決と、課題達成の技能、②教科指導・生徒指導の知識・技術、③学級・学校マネジメントの知識・技術、④子ども・保護者・同僚との対人関係力、⑤授業観・子ども観・教育観の錬磨、⑥教職自己成長に向けた探究心の6つを述べている。大学での教員免許取得の授業では、②、③が重要視される。しかしそのほかの4つは、各教師、各学校に委ねられている。⑥は教員になりたいと思っている人は持っている資質だ。著者は、①、④、⑤の能力を現職研修や教員免許更新講習で身につけていくべきだと述べている。

永井忠孝『英語の害毒』(新潮新書.2015)
 現在、日本では英語教育が活発になっているが、仕事で英語は本当に必要なのか。経済産業省が行った調査で、企業の人事採用担当者に社員に求める能力について調査を行った。すると、語学力は15項目中12番目と重要視されてなかった。また、実際働いている社員には英語をどのくらい使うかという調査を行った。英語をよく使う人は全体の2~3%しかいないという結果になった。この結果により仕事で英語を使うのはごく一部の人である。つまり国民全体が英語をできるようにならなくてもよい。著者は、仕事で必要な人だけが英語を身につけるべきであると述べている。


山田雄一郎著『日本の英語教育』(岩波新書.2005)
 英語は暗記科目なのだろうか。丸暗記は手っ取り早く、また単語は覚えるしかない。しかし言語の学習を丸暗記で済ませることは不可能であり、誤解につながる。例えば、Good morningは「おはよう」の意味だが、「じゃあね」という意味もある。学校ではGood morning=おはようという意味でしか教えない。言語の学習はルールの発見とその応用の繰り返しである。これには、膨大な時間がかかる。しかし著者は、言語を習得するには、膨大な時間をかけ、その言語のルールの発見をするべきと述べている。つまり暗記は不要である。


森田洋司著『いじめとは何か~教室の問題、社会の問題~』(中公新書.2010)
 いじめとは何か。いじめには、ふざけあいやからかい、冗談から、明らかに刑法に触れる暴行、傷害、恐喝まで幅広い行為が含まれる。著者は、いじめとは「ある生徒が、繰り返し、長期にわたって、一人または複数の生徒による拒否的行動にさらされている場合、その生徒はいじめられている」と定義すると述べている。ここでの拒否的行動とは攻撃的な行動、相手に身体的、心理的にダメージを与えることと述べている。

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