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本の紹介、感想

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記事一覧

デイヴィッド・マンロウのCDが久しぶりに発売

デイヴィッド・マンロウのCDが久しぶりに発売

今回はCDの宣伝です。

古楽奏者のデイヴィッド・マンロウのCDが久しぶりに発売されました。今回、そのCDの一部の解説の翻訳と執筆をさせていただいたので、みなさんにデイヴィッド・マンロウについて知っていただくことも含めた記事です。
お付き合いください。

デイヴィッド・マンロウってどんな人?今でこそ、バロック音楽を中心として古楽を当時の楽器や奏法、スタイルで演奏することは一般的になりつつありますが

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中世を舞台にしたエンタメ小説のおすすめ5選(+α)

中世を舞台にしたエンタメ小説のおすすめ5選(+α)

先日、中世以前の音楽について書かれた本のオススメをしてみたので、ちょっと中世系で攻めてみたい。
本当はルネサンスでもやってみたいのだが、ちょっと手に負えないような気がする。

ということで、とりあえずは、道筋として、中世を舞台にした小説で楽しんで読めそうなものの紹介、さらにできれば、中世について書かれた本でのオススメの回も作りたい(これはけっこう無茶だと思うけど)。

で、今回はとりあえず、

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中世音楽以前に関する音楽書15(+α)選

中世音楽以前に関する音楽書15(+α)選

先日、中世からバロックにかけてと、現代音楽の両方の作品が絶妙に混じったプログラムのコンサートを聴きにいきました。
「僕たちは古楽と現代音楽の対話を通して『数』と『トランス』という壮大な命題に想いを捧げる」


で、古楽も現代いずれの時代の音楽も大好物なのですが、ルネッサンス以前(このコンサートではヒルデガルド・フォン・ビンゲンとか中世のエスタンピとかペロタンとかファエンツァ写本とか演奏されたわけ

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中国のシャーロック・ホームズと中国の翻訳文学の摩訶不思議

中国のシャーロック・ホームズと中国の翻訳文学の摩訶不思議

「上海のシャーロック・ホームズ(ホームズ万国博覧会:中国編)」(樽本照雄編訳:国書刊行会)を読んで

今更言うまでもないことですが、世に名探偵は数いても、シャーロック・ホームズほどファンが多く、原作からその伝記、生活など様々なことを研究するシャーロッキアンなる人種を生み出しているのが、この名探偵のユニークさなのは明らかです。

今回紹介する、樽本照雄編訳「上海のシャーロック・ホームズ」はなんと

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フーガを書いてみませんか

フーガを書いてみませんか

フーガを書くための教科書を読む「フーガを書いてみたいな」だったら、グレン・グールドの数少ない作品の一つの題名ですが、今回は「フーガを書いてみませんか」ということで、みなさんに実際にフーガを書く意欲を高めてもらうため(?)に、学習フーガのための教科書やフーガに関連する書籍を紹介をしてみようかと思います。

というのも、
山口博史氏による
「厳格対位法 パリ音楽院方式による」
小鍛冶邦隆、林達也、

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ボッティチェリの「プリマヴェラ」を分析する知的冒険の書(後編)

ボッティチェリの「プリマヴェラ」を分析する知的冒険の書(後編)

少し前編を書いてから時間が経ってしまいましたが、後編です。

前編はこちらです。

前回は、日本人のボッティチェリ好きから始めて、「ボッティチェリ《プリマヴェラ》の謎」がどんな本かを紹介しました。
で、今回は、この本を読んで私の頭に浮かんだ疑問を挙げてみたいと思います。
だからって、この本がおかしい、ということではないですよ!勘違いしないように。。。。(どちらかというと私が歴史的経緯を知ら

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ボッティチェリの「プリマヴェラ」を分析する知的冒険の書(前編)

ボッティチェリの「プリマヴェラ」を分析する知的冒険の書(前編)

タロット、ダンテ、ランディーニ、フィチーノ、ロレンツォ・イル・マニフィコという連鎖

昨年、今年と東京ではボッティチェリの作品が固めて展示される展覧会が続くという、ある意味、奇跡的なことがありました。一つは昨年3月から6月にかけてBunkamuraミュージアムで開催された「ルネサンスとボッティチェリ フィレンツェの富と美展」で17点のボッティチェリ作品(「受胎告知」「聖母子と洗礼者聖ヨハネ」が

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在野研究者へのエールの書
「これからのエリック・ホッファーのために」を読んで

在野研究者へのエールの書 「これからのエリック・ホッファーのために」を読んで

私の家系は、そこそこアカデミズムな家系でした。なので、小さい頃から家の中には学術書が山と転がってましたし、親は学者だったので、学者の生活を目の前で見ていました。
周りにもアカデミズム系の人が多かったので、自分もそのうちそういうものになるんかなぁ、と思って育っていたのですが、いかんせんこの性格と能力のなささ加減が半端なく、結局は自分はアカデミズムの人にはなれませんでした。
それでも、中にいないけど、

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春画はエキゾチックか? 山本ゆかり「春画を旅する」を読む

春画はエキゾチックか? 山本ゆかり「春画を旅する」を読む

日本は性に対してオープンな国なのかどうなのかってのはいろんな意見がありそうです。青少年健全条例とかいったり、マンガやアニメの表現規制がどうとかいったり、コンビニに18禁の雑誌が置いてありスポーツ新聞の女性の裸を堂々と広げて読む男性はとんでもないという抗議がされたり、いろいろあります。
こういう視点は同じ国内にいる人々があれこれいうより、海外の人がどうみているかの方が参考になるのかもしれません。

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日本の近代政治思想史がこんなに面白かったとは!

日本の近代政治思想史がこんなに面白かったとは!

渡辺浩「日本政治思想史 十七〜十九世紀」を読む

今回紹介する本は日本の近代政治思想史の概説書です。政治思想史なんていうと、すっげぇ難しそうに思えるし、全く自分の生活に無縁にも思えるしかもしれませんが、それがそんなことはないんですよ、って話です。

日本の政治思想史と聞くと、まっさきに丸山眞男氏の「日本政治思想史研究」あたりを連想する人もいるかもしれません。そして丸山氏の長年の思索の俎上に

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私的日本の短編ミステリー小説13選

私的日本の短編ミステリー小説13選

突然ですが、ミステリーが好きです。(もちろんSFとか普通の小説とかみんな好きですけどね)
といっても、マニアというほど読み漁っているわけでもなければ知識があるわけでもありませんが。
そして、私は短編小説が好きです。どうやら世間的には長編小説の方が好まれて、多く書かれ、売れるらしいですが、私はどちらかといと数十ページにアイディアが純化されたり、詰め込まれたりする短編の特質が好きで、どちらかというと重

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ラヴェルってこんな面倒な人だったんだろうなぁと心底思わされる小説

ラヴェルってこんな面倒な人だったんだろうなぁと心底思わされる小説

エシュノーズ「ラヴェル」を読む

ラヴェルという作曲家に対するイメージは、いろいろありそうです。
絢爛としたオーケストレーションから「オーケストラの魔術師」と呼ばれたり、ドビュッシーと並べられて音楽の印象派の代表的な作曲家とされたり、エッジが効いた何かの宝石か鉱石であるかのような硬質なピアノ曲が愛されたり、いろんな好まれ方をしていつつ、でも、何か本質は捕まえられてない感じがします。

あくまでも個

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小説での残念なミスについて
「メビウスの守護者」

小説での残念なミスについて 「メビウスの守護者」

昨日「ショパンの手稿譜」というサスペンスリレー音楽小説を紹介しました。
その時、読み手が知識を持っている分野にかんして、小説やドラマの中で間違っていたり、実際にはありえないことが書いてあると往々にして興ざめするよね、って書きましたよね。そういうのって、専門的知識というほどでなくてもけっこう起こりうるかもと思った実例に最近でありました。この小説を読んでいて、最後の最後にこのミスが出てきたので、けっこ

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微妙な気分になるリレーサスペンス音楽小説「ショパンの手稿譜」

微妙な気分になるリレーサスペンス音楽小説「ショパンの手稿譜」

少し前に、TVで草なぎ剛が主演してる「スペシャリスト」ってのが、予告で、残された楽譜の謎、とかいってるので、きっとたいしたことではないんだろうなぁと思いつつ、一応は音楽ネタでどんな陳腐なことになるんだろう、といういじわるい興味もありつつ見たわけですよ。そしたら、なんと楽譜の音名を拾うと、、、って類でがっくりというか、いまだにそんなところからしか謎はもってこれないわけって思っちゃいました。まぁ、TV

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