フランシス・ベーコンの絵画についての覚書
フランシス・ベーコンの絵画は、描かれた肉のフォルムの強烈な主張がある。歪められた肖像がかえって対象の「そのもの性」を表現し、ベーコン自身の言葉で言えば、観る者の神経に直接訴えかけてくる。
それはそれでいいし、ベーコンの絵画は好き(画集や評論本を何冊も買って読んでいるくらいには好きだ)なのだが、ひとつひっかかるのは、ベーコンのそういう絵画には、余白や奥行きがないように思えるという点だ。主張や狙いが明確で鮮烈なため、また、作品を完成させるために何重にも描き加えられているため、