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【コラム】 音の無い世界から、サッカーと生きていく。


この文章は、#江の島エフシーと僕 の連載記事第10弾です。地域サッカークラブの特徴とも言える、多様性溢れる関係者から集まった唯一無二の物語を紹介していきます。今回は、2021年8月より江の島FCに加入したデフサッカー日本代表候補 #39名村昌矩 のコラムです。聴覚に障害を持ち、さまざまな壁を乗り越えながらサッカーと生きてきた22歳の青年は、デフサッカーの日本代表プレイヤーと、社会人サッカークラブのプレイヤーという二つの挑戦を両立していく道を決断しました。ふたつのサッカーは、彼の人生にどんな影響を及ぼしてきたのでしょうか。

👤 #39名村昌矩 Profile
1999年12月31日、静岡県生まれ。現デフサッカー日本代表候補選手。
(潤徳ガルーダFC→日野第三中→野津田高校)

はじめに

皆様はじめまして、江の島FCの名村昌矩です。

自分は、聴覚に障害を持っています。そんな自分にとって、サッカーはかけがえのない存在であり、一番の生きがいでもあります。

今回のコラムでは、私がサッカーとどう生きてきたかについて紐解きながら、江の島FCのことを応援するきっかけにしていただけたらと思います。


音の無い世界で生きる。

私は小学2年生の時にサッカーを始め、それからずっとサッカーを続けています。

サッカーを初めて今日までの15年の間に、音が聞こえないことに対して馬鹿にされたり嫌がらせを受けたことは、数え切れないほどありました。

最初の方はとても傷ついたけれど、それでも周りのサッカー仲間や素晴らしい指導者のおかげで、サッカーで全てを見返すことができるという自信とともに、サッカーをここまで続けてくることができました。

ハンディキャップがあるなかでも選手として努力してきた量では、誰にも負ないという自信や誇りがあります。

もちろん、ここまで全ての物事がうまくいったわけではありません。

自分は音が聞こえないなりに周りの人達と頑張ってコミュニケーションを取ってきたけれど、もちろん中にはそれを理解することができない人たちもいて、限界を感じてしまう出来事もありました。

でも、ハンディキャップのある私にだけ与えられたその壁を乗り越えた先には明るい景色が待ってると信じて諦めずに努力し続けてきましたし、そのスタンスはこれからも変わりません。

第17回全日本ろう者サッカー選手権大会にて(2021)


"デフサッカー"という刺激的な世界へ。

"デフサッカー"とは、耳が聞こえない、聞こえづらい選手たちがプレーするサッカーのことです。

まだ知名度は低く、ほとんど知られていないマイナースポーツですが、かなりレベルの高い競技だと思っています。

例えば、健聴の人たちは音を聞き分けることで、相手がどこから来るかの位置判断ができるし、パスの出しどころも判断することができ、極論を言ってしまえば目で見なくても最悪声だけでプレーできる部分も多いと思います。

一方で、デフの選手たちはそれができない分、常に首を振り、周囲の状況を見ないといけないですし、少ない情報の中でパスの出しどころ等の判断をしなければなりません。これはとても難しく、高度な技術だと自分は思います。常に周りを見ていないと状況が分からなくなってしまったり、味方同士でぶつかってしまったり、パスのズレも大きく出てしまいます。

自分は縁があって2年前に"デフサッカー"という競技を知り、その世界に入りました。

耳の聞こえない選手同士でのサッカーがとても刺激的に感じたのと同時に、自分と同じような境遇の人たちとやるサッカーはとても楽しく、今までサッカーを辞めずに努力してきてよかったなと心から思った瞬間でした。

そして2年の歳月が過ぎ、気付けば自分は、デフサッカー日本代表候補選手としてプレーすることができるようになりました。

これから正式に代表メンバーになり世界で活躍できるよう、江の島FCで経験を積みながら頑張りたいと思っております。

デフサッカー男子日本代表候補合宿にて(2021)


そして、江の島FCへ。

そして、江の島FCとの繋がりは、自分の高校時代の友人が所属していたことから始まりました。

昨年(2022年)の夏に一度練習会に参加した際に自分にとって居心地の良い場所だと感じたことや、自分が耳が聞こえにくいということを心から理解し、受け入れてくれる"良いチーム"だと感じたため加入を決断しました。

これからはデフサッカー選手として日々取り組んでいることをこのチームに還元していきながら、まずは今年度の最低目標である神奈川県リーグ2部昇格に向けてチームにたくさんの貢献をしていきたいと思っております。

いつも江の島FCに温かい応援をいただき、本当にありがとうございます。

2022年はより一層、江の島FCで熱い試合を魅せられるように励んでいきますので、これからも是非応援よろしくお願いします!

江の島FC 名村昌矩

音の無い世界から、サッカーと生きていく。


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江の島FCは、2020年4月に設立された江ノ電沿線を中心とした湘東地域をホームタウンとするサッカークラブです。2022年は男女チームがともに神奈川県社会人サッカーリーグに所属し、男子は2030年のJリーグ昇格を、女子は2023年のなでしこリーグ挑戦を目指しています。
『Cultivate the World.』をミッションに、人間の初期衝動と創造的欲求に投資し、誰もが自分らしく生きられる文化を作ることを目指して活動しています。スポーツチームの運営だけではなく、挑戦する全ての人が外的要因を原因に夢を諦めない世界を実現に向けた総合的な支援や、アート・スポーツ・音楽の文化の中心である江の島から、カルチャーの一大プラットフォームを目指して文化振興の支援を積極的に行っています。

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江の島FC 公式Twitter

【おまけ】ゴールを決める名村と、大澤主将
(📷 マネージャーが撮影するも、手ブレのためボツとなった1枚)

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