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先生は本と映画です。

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タイトルの通りです。本や映画という先生から感じたことを書いています。
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記事一覧

40代にこそ観てほしいLIHGT HOUSE

40代にこそ観てほしいLIHGT HOUSE

お正月の休みを利用してLIGHT HOUSEを(今更ながら)一気観した。

星野源とオードリー若林という世間的に見たら成功者と言える二人が、市井に生きる自分たちと同じような鬱屈とした悩みを抱えており、視聴者と近い目線で悩みを吐露し合う。筆者は星野源の曲を全部聴いてるわけでも、オードリーのオールナイトニッポンを聴いてるわけでもない、二人の視聴者としては圧倒的なビギナーなのだが、深夜ラジオを聴いている

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PERFECT DAYSの「虚構」が示す「希望」

PERFECT DAYSの「虚構」が示す「希望」

俳優の役所広司さんが、カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞した「PERFECT DAYS」を見てきた。

「PERFECT DAYS」はトイレの清掃員として働く役所広司演じる平山の日々のルーティンを淡々と描いた作品だ。非常に面白い作品である一方、その中である違和感を感じた。それは、描かれている日常でたびたび挟まれる「虚構」だ。
(以下ネタバレを含みます)

計算されすぎた「日常」に感じる「虚構」例え

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誰かの今を美化する、という生き方

誰かの今を美化する、という生き方

人生はない物ねだりの連続である。

今自分が手にしているものの尊さや素晴らしさに気づかずに、そこにはないものに手を伸ばしてしまう。どうして手に入ると色褪せて見えてしまうのだろう。あんなに買うまではワクワクしてた十数万のコートが、3回目あたりから慣れてしまうのはなぜだろう。嫌だった職場が、離れた途端よかった場所かもしれないと思うのはなぜだろう。どうして、目の前の現実より、記憶や想像のショーケースに入

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個人的な話が社会問題と繋がるから映画は面白い。2022年の映画ベスト10

個人的な話が社会問題と繋がるから映画は面白い。2022年の映画ベスト10

2022年公開の映画の中でベスト10を。

カモン・カモン(脚本・監督 マイク・ミルズ)子供は写し鏡。

もしも、明日から9歳の甥っ子を預かるとして、その子とうまくコミュニケーションを取れるだろうか。9歳は、「9歳の壁」という言葉があるくらい、子供の成長発達段階において大事な時期な一つで、イヤイヤ期とも呼ばれる。

本作はラジオジャーナリストのジョニー(ホアキン・フェニックス)とそんなイヤイヤ期真

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「なんとなくモヤモヤ」を解消する「幸せのメカニズム」について

「なんとなくモヤモヤ」を解消する「幸せのメカニズム」について

同じ仕事をしているのに、仕事が楽しいという人とそうでない人がいる。たくさんお金を持っているのに不満そうだったり、逆にそこまで贅沢をしていなくても幸せそうな人がいる。

誰しも不幸になりたくて生きているわけではないのに、その差はどこから生まれるのか。何より、自分も日々を「幸せ」に過ごしたい。

なるべく誰もが取り入れられそうな幸せになれる方法はないのだろうか。

そんな疑問から、幸福学について研究さ

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批評ができると、人生が面白くなる。「批評の教室」北村紗衣 著

批評ができると、人生が面白くなる。「批評の教室」北村紗衣 著

映画のレビューアプリ「Filmarks」を見ていると、たまに「すごい深読みをしているな」というレビューに出会うことがある。物語で描かれている小物や流れている音楽、監督の趣向など、知らなくても楽しめるけど、知ったらより楽しめるようなことについて書かれているレビューを読むと、自分もそういったレビューが書けたらいいのになと思う。

「批評の教室」は武蔵大学人文学部英語英米文化学科准教授の北村紗衣さんによ

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視野に限界はあるが、配慮に限界はない / 朝井リョウ「正欲」を読んで

視野に限界はあるが、配慮に限界はない / 朝井リョウ「正欲」を読んで

朝井リョウの「正欲」を読んだ。

この本は、昨今当たり前のように聞く「多様性」をテーマにした小説だ。多様性とぱっと思い浮かべるのは、ジェンダーや国籍、健常者と障がい者などが同じ空感で共存している様子だろう。前提として、こうした共存が可能になっているのはとても素晴らしいし、尊いことだと思っている。

だが、朝井リョウはマジョリティが作った「多様性」という言葉では包括できない存在をとりあげ、僕らが言っ

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佳い「書き手」は、佳い「聞き手」である—「取材・執筆・推敲――書く人の教科書」を読んで—

佳い「書き手」は、佳い「聞き手」である—「取材・執筆・推敲――書く人の教科書」を読んで—

ライターの古賀史健さんの最新の著書「取材・執筆・推敲――書く人の教科書」を読んで、もしタイムマシンがあったら過去に取材している自分一人ひとりをかき集めて説教したいという気持ちになった。

敏腕ライターの先輩に教えてもらったこの本は、480ページという大容量だったが、一日で読み終えてしまった。古賀さんの圧倒的な構成力が土台にあるのはもちろん、「これを今読み切らなければならない」という強迫観念のような

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生きづらさを抱える人にオードリーの若林さんの新著を。

生きづらさを抱える人にオードリーの若林さんの新著を。

オードリーの若林さんの新作エッセイ「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」を読んで、希望と絶望が同時に押し寄せてきた。

この本は、彼がキューバ、モンゴル、アイスランドについて書いた紀行文だ。「すべらない話」を聞いているかのような面白さ、時折出る人間くささ、そしてハッとさせられる含蓄のある名言がミックスされた最高の文章たちで綴られている。

そして、「生きづらさを抱える人」への手紙でもある。

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今年観た120本の映画からベスト10を選んでみた。

今年観た120本の映画からベスト10を選んでみた。

2020年が始まった時「映画を100本見るぞ」と意気込み、無事達成したので、その中でも特に印象深かった作品を10個選んでみた。

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編原作は知っていたし、無限列車編のあとがどうなるかも知っていたけど、それでもなおグッとくるものがあった。あんなに映画館の空気が一体化するんだなと。

観た人の多くが感じたと思うけど、やっぱりラストシーンの描き込みはえげつない。あのシーン作るだけ

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AIは人のシゴトを奪うのではなく、より機会均等な世界を作ると思う。

AIは人のシゴトを奪うのではなく、より機会均等な世界を作ると思う。

長いこと、AIが人間の仕事を奪うと言われています。

僕もAIのことを中途半端に理解していた時は、なんかすごい人工知能がどんどん人間の存在を脅かしていくと考えてい増田。人工知能を作ったり理解できる一部の人だけが全てを支配するロボット資本主義というディストピア。

でも、AIについて知識を貯めるにつれてその考えも変わっていきました。

何が奪われるかではなく、どんな性質のものなら奪われないのかを考え

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文章上達のための「楽しい写経マニュアル」

文章上達のための「楽しい写経マニュアル」

文章力向上の一番の近道は写経だと言われます。

が、ぶっちゃけ写経って気が乗らないですよね。

ただ文字移すだけって面倒だし、仮に3000文字近い文章を写経するってなったら時間もかかるし、大変そうだからなかなか踏み出せない人が多いんじゃないかと思います。

僕自身、書く仕事を始めて3年ほど経ちますが、これまで一回も写経したことがありませんでした。ただ、自分の出来る範囲で書くには限界があるなと感じ、

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広報の次のステップとして考える「戦略番頭」というポジション

広報の次のステップとして考える「戦略番頭」というポジション

ベイン・アンド・カンパニーのパートナーであるクリス・ズックとジェームズ・アレンの共著「創業メンタリティ」を読んで、広報パーソンの次のキャリアのヒントを得た。

「創業メンタリティ」は企業が適切な企業規模で早く・持続的に成長するために必要な「創業目線」と、その目線を持って企業の危機を乗り越えるための方法論と事例、「創業目線」の育て方について説かれた本だ。

「創業目線」には三つの要素がある。「革新志

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「ミンスキー博士の脳の探検」読書メモ ver.1

「ミンスキー博士の脳の探検」読書メモ ver.1

社会人になってから「考える」機会が増えた。

その一方、「考える」とは何かについて「考える」ようにもなった。少なくとも、「考える」とは脳を経て行われているはず。であれば、「脳」について知れば、「考える」のヒントになるのではないか。

そんな思いもあり、脳の仕組みを解明する手がかりとして「ミンスキー博士の脳の探検」を読み始めた。

この本は、人間の心の機能・作用について探求していて、「好き」や「むか

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