「やりたいことリスト」が埋まらなくとも

自分の周りには起業していたり、自分が「やりたいこと」を明確に見つけて目標に向かって突き進んでいる友達がたくさんいる。そういった人を見ていていつも思うのは、自分には「やりたいこと」がない虚しさだ。

自分には本当に「やりたいこと」がないのか。「やりたいこと」がない人なんていないという声も聞く。深く考えられていないだけで、自分にじっくりと向き合ってみれば「やりたいこと」の1つや2つ見つかるのではないか。そう思い、「やりたいことリスト100」を作ろうとペンを走らせてみた。

ところが、全然「やりたいこと」が出てこない。いや、正確に言えば夢といっていいものが出てこない。毎週一回は映画館で映画を見たいとか、いつかはアイスランドに旅行してみたいとか、短期的な目標や理想とする状態は見つかるのだが、もっと社会にインパクトを与えたり、大勢の人を幸せにするような大層な夢は一向に出てこない。

書いていてだんだんと悲しくなっていって、リストは途中で作るのをやめた。周りの友達はなんでそう簡単に夢や目標が見つかるのだろうと疑問に思った。自分がおかしいのか? 向かうべき行き先がないゆえか、時たま「なんのために頑張っているんだ。。」と落ち込むときもある。

なんとか今の状況を少しでも好転させたいと思い、僕らの会社でお世話になっている産業医の方に相談しにいった。

「自分には全然『やりたいこと』が見つからないんです。こういう状態でいたいとは思うんですが、道標となるようなものが立てられないんです」と。

すると先生は「それはFFS理論における保全性の傾向が強いからだよ。きっと」と教えてくれた。

FFS理論とは、自分がどういう時にストレスを感じるのか、という観点から自分の強みや特性を導き出す理論だ。FFS理論によれば、人は5つのタイプに分けることが出来る。これは生まれながらの特性のようなものらしく、人から見える振る舞いは変えることが出来ても、根本の部分はそんなに変わらないそう。

5つの因子の中でも、夢や目標のあるなしで分けたときに、明確な目標があるタイプは拡散型、そうでないタイプは保全型と呼ばれる。割合にして、3:7くらいで、保全型の方が多いらしい。拡散型のほうが行動的だから目にもつきやすく、SNSなどではおそらく拡散型の人のほうが多い。本当は保全型の人のほうが多いのに、SNSのような閉じられた世界だと、拡散型の人ばかり自分の周りにいるように感じてしまう。

むしろ彼らの方が特殊で、自分の方が普通なのだ。拡散型に憧れる保全型は、自分が普通であることを認められず、理想と現実のギャップに苦しみやすいらしい。完全に自分のことだった。夢や目標が見つからないことは病むことではないとわかったと同時に、自分は普通というか大多数側の人なのだという事実にがっくりときた。

では、夢や目標がみつからないならどうしたらいいのか。何をマイルストーンにすればいいのか。その一つの答えは、自分の理想とする状態を次々と作っていくことだと思う。絶対に週に一度映画館で映画を見たいのなら、それが可能のように仕事の処理能力をあげたり、タイムマネジメントがうまくなればいい。海外で仕事をしている状態が理想であれば、その状態にたどり着くためには現状とのどんなギャップを埋めればいいのかを考えればいい。

保全型の人は自分の状態をどんどん良くしていくことにはとても前向きに取り組むタイプだと思っている。おそらくRPGではラスボス手前でめちゃくちゃパーティを強くして、ラスボスより強い裏ボスとかを倒して最強の状態で挑むタイプだと思う。自分の状態がアップデートされて、出来ることが増えていくことに快感を覚える人間のはずだ。

「やりたいことリスト」だって、「やりたいこと」じゃなくて「なりたい状態」にすればおそらくスラスラと出てくるはずだ。器用貧乏かもしれないが、保全型は拡散型の人が何かを成し遂げたいと思ったときに、その右腕として圧倒的な活躍をできる可能性がある。スーパースターにはなれないかも知れないけど、影から物事をバックアップするフィクサーにはなれるのだ。それってなんかかっこよくないだろうか。

どうしても一点特化型で際立っている人のほうがアテンションを集めるし、何かに向かって突っ走っている姿は魅力的に映るだろう。でも、大丈夫。「やりたいことリスト」が埋まらなくなって、夢や目標が無くたっていいのだ。保全型の人がいなければ、世の中もっととっちらかってる。

『やりたいこと』が無くて悩んでいる人は、明日からありたい状態を考えるようにしてみよう。そうするだけで、世界は少し楽しくなるはずだから。

最後まで読んでいただきまして、有難うございます。 あなたが感じた気持ちを他の人にも感じてもらいたい、と思ってもらえたら、シェアやRTしていただけると、とっても嬉しいです。 サポートは、新しく本を読むのに使わせていただきます。