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ショウペンハウエル先生と考える、有限の時間の中での本との付き合い方

もしも、あなたが本を読むのが好きなのであれば、ぜひ一度手に取ってほしい本がある。
ショウペンハウエル先生の「読書について」だ。この本は、「思索」「著作と文体」「読書について」の3つの章からなり、全編通して本を主軸に話が進む。

初めて「読書について」を読んだとき、僕は本当の意味での読書がこれっぽちもできてなかったのだと、身にしみて感じた。

「読書について」を読んで、僕が感じた本との付き合い方について書こうと思う。ただ、前提として、読書は娯楽のための読書と教養のための読書があると思っていて、とにかく時間を消費してリラックスしたいと思う時の読書には、この考えはあまり当てはまらないと思うので、そこのところは大目に見ていただけたらと思う。

読/書をする

「読書」という言葉は、「読む」と「書く」の2つの言葉で成り立っている。そんなの見りゃわかるだろうと言われるかもしれないが、言葉通り「読書」をすると考えた時、読んだだけでは「読書」にはならない。

自分の思想というものを所有したくなければ、そのもっとも安全確実な道は暇を見つけしだい、直ちに本を手にすることである。

「ここまでバッサリ断言するか!」と思わなくもないが、読むことだけに終始することは、自分の頭ではなく他人の頭で考えているにすぎないのだ。確かに、今自分の家には300冊くらいの本があり、売ってしまったものや実家にあるものも踏まえると人生のなかで何百冊も本を読んできたが、その中でくっきりと中身を覚えているものは手で数えられるほどだ。「なんとなくあんなことが書いてあったなぁ」くらいしか残っておらず、脳の引き出しからそれを取り出そうとしたときは、だいたい破れた紙切れを掴むような感覚にしかならない。

本に書かれていることを全て暗記するなんて到底不可能だが、大事なのは読んだ後に感じたことを自分の言葉で書くなり、録音するなり、残すことだ。わかりやすい本ほど「わかったつもり」に陥りやすいなとこの頃思っており、その本に書かれている本質や重要なポイントを自分の言葉で説明できるかは意識すべきだろう。受験勉強している時よく先生に「それは友達に教えられるか」と言われていたが、誰かに説明したり紹介するとしたらどうするかを考えて読むことで、「読む」が「読書」に変わる。

また、ショウペンハウエル先生は重要な書物は二度読むべきだ、とも言っている。これも自分が本の内容をわかったか振り返る行為だ。わかっていないなら何故わからなかったを残しておくだけも、後々意味のあるものになるはずだ。

長く残っているものを読む

人々はあらゆる時代の生み出した最良の書物には目もくれず、もっとも新しいものだけをつねに読むので、著作家たちは流行思想という狭い垣の中に安住し、時代はいよいよ深く自らの作り出す泥土に埋もれていく。

要は古典を読もう、ということだ。特にギリシア・ローマの古典を彼は進めている。これもよく聞く話だが、なぜ古典を読むべきなのか。それは、人間が本質的に考えたり悩んだりすることは2000年かけても変わってないからだと思う。技術はどんどん進化するけど、「可愛い子と付き合いたい!」とか「出世したい!」とか「嫌われたらどうしよう」などの悩みから、営業やマーケティングの本質的な部分はずっと同じなはずだ。モノが枯渇していた時代と今のようにものが溢れている時代ではニーズの見つけ方は違うかもしれないけど、きっとその根本は同じだ。

だから、まず本質的なことを理解して、それを世の中の事象に当てはめることで、自分で考える力を身につけようとショウペンハウエル先生は言いたいのだと思う。

フローのための読書とストックのための読書

世の中の知識はフロー型とストック型に別れる。フロー型は最新技術や世の中のトレンド、世相など。ストック型は上でも書いた、時代とともに変わらない本質的なことや世紀をまたいで残り続ける本を示す。

ショウペンハウエル先生はこの二つを政治史と文学史という分類で表している。少し長くなるが下記に引用する。

政治史では、半世紀がつねに重要な単位をなしている。政治史の材料はたえず変わるからである。すなわち政治の世界ではつねに何か重要な出来事が発生するのである。これに反して文学史ではこの同じ五十年間という時間が、意味のある時間と見なされもしれないことがよくある。文学史は拙劣な作品と関係ないからである。だから文学の世界では、五十年前と今となんの変わりがなくても不思議はない。

フロー型とストック型のバランスを保つためには、まずストック型の知識を蓄えることだ。なぜなら、本質は具体に応用が効きやすいからだ。

編集という職種についていると、どうしても今の流れをつかもうとフロー型に傾倒しやすくなってしまうが、1週間の中で時間を見つけて、ストック型の知識をうまく取り入れていかねばと思う。また、歴史の流れもストック型の知識として身につけていると、次の時代は揺り戻しが起こった時、こうなるかもしれない、と未来予測が立てれるので、こちらにも気を配りたい。

以上、「読書について」を引用しつつ、簡単に本の読み方や付き合い方に触れてみた。僕がここで書いてあることは薄めたカルピスの原液のようなものなので、お時間があれば是非ショウペンハウエル先生の元の本に触れてみてほしい。

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