O=0 by Autechre

アルバム「Oversteps(2010)収録

長さ:4:38
ジャンル:電子音楽、アンビエント
テンポ:132
イメージ:暗い、無機質、儚い、終末的、荒廃

この曲は、大きく2つの部分に分けられる。2分半ほどの前半部と、2分ほどの後半部。

前半部

まずイントロでは、環境音のようなパッドシンセの中で、短いベース音が独り旋律を奏でている。そしてゆっくりとシンセメロディが立ち上がってきて、そしてさらに鐘のような音色のシンセが主旋律を奏で始める。これがこの楽曲のメインメロディーを担う。つまり、包み込まれるような環境音的シンセの中で、二つのメロディーが奏でられる。荒廃した土地の中で壊れかけの2機のロボットがお互いにメロディーという信号を発して語りあっているという世界観が想像できた。

その後、環境音は鳴り止み、鐘のような音のシンセと、シンプルで無機質なシンセが異なるメロディーを奏でる。たぶんこの部分では2機のロボットの会話に焦点が置かれる。メロディーは不安定で儚い。先ほどの例で例えると、壊れて今にも機能停止しそうなロボットの状態を表していると思う。そしてここで注目したいのが、二つのメロディーが追いかけ合うように、時にはお互いに重なり合いながら進行していくところだ。先ほどの例で例えると、2機のロボットがお互いに伝えたいことを、完全に壊れてしまう前に何とか伝え切りたい、みたいなのを想像することもできる。

後半部

突如転調する。そして、今まで主旋律をを奏でていた鐘のようなシンセが突然消え、片方のシンセだけの部分がしばらく続く。どうした、もしかして片方ついに機能停止してしまったのか?という不安を覚える。そしてまた鐘シンセが現れ、また二つの音の追い掛け合いが始まる。メロディはやはり不安定で無機質であるが、調が変わったためどこか明るく、うわついた感じがある。もしかしたらいよいよ機能停止が近く、何とか最後の微力を振り絞って交信しているのかもしれないと思った。

最後は、リタルダント(テンポを連続的に遅くする)で、余韻を残して終わる。ついに機能停止を迎え、残されたのは荒廃した街と2つのガラクタだけだった、という終末的情景をその余韻から感じた。

だいぶ個人的な妄想を交えて書いてしまったが、この曲の持つ無機質な儚さともいうべき雰囲気を実際に聞いてみて少しでも感じてもらえれば嬉しい。

そして、この曲が収録されて入りOverstepsというアルバムもおすすめである。詳しくは割愛するが、この曲に限らず、全体を通して無機質なのにどこか情緒的な雰囲気を感じる楽曲が揃う。終末的情景を妄想するのにぴったりなアルバムである。

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