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商品をキチンと“要素分解”しとかないと落とし穴にハマっちゃうよね

おはようございます。
クリスマスツリーに傘の取っ手をブッ挿したら『プペルツリー』ができることは分かっているのですが、傘を一本犠牲にしなくちゃいけない気持ちと葛藤しているキングコング西野です。
#ツリーに挿し込むようの傘の取っ手を売って欲しい

さて。
今日は『商品をキチンと“要素分解”しとかないと落とし穴にハマっちゃうよね』というテーマでお話ししたいと思います。
先々、すべてのサービスに必ず絡んでくる問題だと思うので、心して聞きやがれ!

要素分解することによって見えてくる打ち手

これまで何千回も言ってきましたが『絵本』には、様々な要素(意味)があります。

①情報(絵やストーリー)
②親子のコミュニケーションツール(読み聞かせ)
③インテリア(部屋や店に飾る)
④おみやげ
⑤ギフト
⑥鈍器

……ザッとこんなところでしょうか。

これも何度も言っていますが、絵本の無料公開で無料になったのは①の要素だけで、②~⑥は相変わらず有料です。

となると、「絵本の無料公開」という打ち手を繰り出す側は②~⑥を強化しなくてはいけません。

たとえば、「ミニ絵本」みたいなことにしてしまうと、少なくとも②③⑥の価値は消えてしまいます。
#ミニ絵本では読み聞かせができない
#ミニ絵本はインテリア映えしない
#ミニ絵本は人は殺せない

「ミニ絵本」を無料公開してしまうと、①②③⑥が消えて、「④おみやげ」と「⑤ギフト」の二本で価値を出さなきゃいけないのですが、④と⑤は基本的には本屋さんで取り扱われないので、自社で「おみやげ&ギフトショップ」を持っていて、その店にお客さんが流れ続ける仕組みを作っておかないと、そもそも売り場がありません。

つまり、②~⑥を強化している絵本の無料公開は勝ち目があるけれど、「ミニ絵本」の無料公開は、“お客さんがお金を払って買いたい要素”が1つも無いので、勝ち目がありません。

……言ってること、伝わってます?
#頑張ってください
#としか言えない

絵本『えんとつ町のプペル』の無料公開が鬼ハマりした直後に、どこかの出版社さんが新人作家の小説を全ページ無料公開しましたが、見事に売れませんでした。

クリエイティブ面の問題としては、「シンプルに作品の力が無かった」ということ。

マーケティング面の問題としては、「要素分解をした上での戦略ではなかった」ということ。

絵本に含まれている……
①情報(絵やストーリー)
②親子のコミュニケーションツール(読み聞かせ)
③インテリア(部屋や店に飾る)
④おみやげ
⑤ギフト
⑥鈍器

……のうち、小説には②~⑤がありません。

ハードカバーであれば⑥はあるかもしれませんが、お金を出して⑥が欲しい人は『ハードカバーの小説』よりも『大理石の灰皿』を選ぶと思います。

「小説を無料で全ページ公開してくれたのはありがたいのですが、私達は“どの要素”を買えばいいの?」というのが、無料で小説を読んだ読者の声です。

「無料公開=売れる」という単純な数式じゃないんですね。

こうして、順序だてて説明すると「そりゃそうだよね」となると思うのですが、どっこい、自社製品を要素分解せずに売り出している現場に時々出くわします。

『えんとつ町のプペルができるまで展』の例

12月に全国6ヵ所のHMVミュージアムで『えんとつ町のプペルができるまで展』が開催されます。
そのタイトルのとおり「『えんとつ町のプペル』ができるまでを追った個展」で、完成品は一切展示いたしません。
展示されるのは、設計図やラフ画といった「資料」ばかり。
どう考えたってツウ好みの個展です。

先日、個展の担当者さんからギャラリー内のレイアウト案をいただいたのですが、一目見て、西野は全ての案を却下します。

担当者さんの名誉の為に言っておくと、吉本興業サイドから提出した素材があまりにも少なく、その中でヤリクリした結果であるので、担当者さんに落ち度はありません。
#ここ大事

ここでは、あくまで、「こういう打ち出し方をすると確実に失敗するよ」の例として挙げさせていただきます。

担当者さんから提案された個展のレイアウトは、黒壁に「資料パネル」をペタペタと貼ったものでした。

(↓西野から1秒で却下されたレイアウト案)

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この時、運営サイドが気をつけなきゃいけないのは、その「資料」は「本気を出せば無料で手に入れられる」ということ。

今回の個展も「撮影禁止」にはしません。
そもそも映画の宣伝の一環としてやっているので、一人でも多くの人に広まった方がいいので。
そうなってくると、個展に訪れた誰かがSNSにアップしたものを探せば、「資料パネル」は無料で手に入ります。

この事故を整理すると、

「(結果的)無料で提供している『情報』を有料で販売している」

です。

さっきの小説の例と同じく、お客さんからすると「『情報』は無料で手に入ったけど、“どこ”を買うの?」です。

すぐにスタッフさんに「今回の案は全て捨てて、『サイズ』で勝負しましょう」と伝えました。

「黒壁に『資料パネル』を貼るのではなくて、『資料パネル』を壁にしてくれ」と。

『資料パネル』の壁を頑張って一枚の写真に収めてSNSにアップしても、SNSでその画像を見た人の『首』は動きません。
つまり、資料を見るのに首を右から左へギュイィィンと動かす体験は、現場に行かないと(買わないと)享受することができないのです。
#情報ではなく体験を売る

僕は「光る絵本展」の開催を一般の方でもできるようにしているのですが、ときどき、「会場を歩かせたいから」という理由で、40枚の『光る絵』をバラバラに展示される方がいらっしゃるんですが、あれもいけません。

一枚一枚の『光る絵』は、すでにSNSで無料で受け取れていて、それ(情報)を売ったって仕方がないんですね。
「歩かせたい」は運営サイドの事情であって、別にお客さんは、歩きたくて個展に足を運ぶわけじゃありません。

「これは現場に行かないと体験できないな」と思った時に初めて足が動きます。
その時に、すでに無料で提供されているものを、有料で販売されたところで、足を動かす理由にはならないんですね。

『光る絵本展』は、光る絵が「まとまっている」からSNSでは享受できない価値があるんですね。
光る絵を分割してしまった時点で『情報』販売になってしまって、無価値になる。

(↓ちなみに、こちらは六本木ヒルズで開催する『光る絵本展』の壁。ピンク色の人間の身長が170センチ。やっぱり「大きい」って、いいね!)

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整理します。

まずは個展を要素分解する。

①一枚の絵
②空間(音楽・匂い・湿度・展示方法)
③コミュニケーション
④物販

このうち、すでに無料で提供されているものは①です。
となれば、①をセールスポイントにしても仕方がなくて、②~④を強化する必要がある。

……といった感じで、商品を要素分解して、【無料になっているもの】と、【有料になれるもの】を分けて、「ならば、どこを押し出していくか?」を考えるのがイイと思います。

この作業は定期的にやった方がいいと思います。
とくに最近は「プロセス・エコノミー」とか何とか言って、メインコンテンツを無料でバンバン出してくる輩が現れてきたので、そこにも目を光らせていないと、「昔は有料だったけど、今は無料になってしまっているものを、いまだに有料で提供し続けている」という落とし穴に落ちるので、要注意です。

今日は、『商品をキチンと“要素分解”しとかないと落とし穴にハマっちゃうよね』というテーマでお話しさせていただきました。

現場からは以上でーす。

【追伸】
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【※企業様向け】
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2020年12月25日公開!
映画『えんとつ町のプペル』
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このnoteは2020年11月25日のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』への投稿をもとに作成しています。

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