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ディスカッションはどこから生まれるのか?

おはようございます。
海老蔵さん、YOSHIKIさん…といった覇王色との対談が続いたので、そろそろインパルス堤下君で箸休めをしたいキングコング西野です。
#失礼だろ
#堤下は先輩だぞ
 
さて。
今日は『ディスカッションはどこから生まれるのか?』というテーマでお話ししたいと思います。
 
ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』の稽古場で(あらためて)感じたことなのですが、これは、どの企業、どのチームにも通ずる重要な問題だと思うので、サロンメンバーの皆様に共有しておきたいと思います。
 
そして…
 
くれぐれも、今日の話は個人を否定する内容ではなく、「この点を気をつけておかないと、チームは、こっちの方向に行っちゃうよね」という話であることを踏まえて聞いていただけると幸いです。
 

仕事を作る大阪吉本の芸人
 

ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』の稽古現場はいつも刺激的で、勉強になることだらけで、たくさん成長させてもらっています。
 
日本のミュージカル界を牽引するキャストの皆様のパフォーマンスは「看板に偽り無し」で、もう本当に鬼最高なんです!
#語弊力

魅力を語ればキリがないのですが、一方で、
 
「ミュージカルの制作現場の全てが最高!!」……と言うと、嘘になります。
 
当然、そこには(ブレのある)人間が動いているわけですから、「もっと、こうすれば、もっと良くなるのに…」と思う箇所もあります。
 
この話をする前に、芸人(特に大阪出身の吉本芸人)が育つ環境を共有させていただくと……
 
たとえば、
 
僕が大阪でやっていた朝日放送の『駐在さん』(※初代駐在さんは明石家さんまサン)は、劇場(数百人のお客さんの前)で演じたお芝居を一発撮りして、そのままテレビで放送するコメディー番組なのですが、お芝居台本は【収録当日】に渡されるんです。
 
劇場入りすると、まずは本読みがあって、その後に最初から最後までを通すリハーサルが二度あって、その次が本番(客前収録)です。
#劇場入りから本番までは4時間ほど
#おかげで
#台本は一読すれば覚えられる変な筋肉がつきます
 
東京の役者さんや芸人さんからすると「練習がそれだけしかできないの? いやいや、ちょっと待ってよ」といったところなのですが(※そういえばゲストに来られる役者さんはいつも緊張で潰れていた)、
面白いのが、「1時間番組なのに、本読みの時間が20分チョイで終わる」というところ。
 
つまり、
 
本番までの二回のリハーサルで、「残り40分」を作らなきゃいけないんですね。
 
ここが芸人の腕の見せ所なのですが、台本(ガイドライン)に沿いながら、自分のセリフや、自分のギャグや、自分の動きを、“自分で”足していくんです。
 
二度のリハーサル(ほぼ1回目のリハーサル)で、「僕は、こんなことができますよ」を演出家にアピールし、自分の仕事を自分で作っていくんです。
 
その現場にいる誰一人として「アピールすること」を強要しません。
なので、自分をアピールしなければ、シンプルに自分の出番が少なくなるんです。
それ(自己アピールをしない)が二回でも続くと、シンプルに【クビ】です。
 
この時のポイントは、「全体の流れを壊さないように自分のネタをブチ込む」というところで、求められるのは、強いハートもさることながら、台本の読解力です。
 
いくらアピールしたところで、「そこで、それをやっちゃダメじゃん」というアピールをする芸人は、それはそれで【クビ】になります。
 
これは、テレビでレギュラー放送(毎週新作&毎週放送)していく為に、仕方無しに身に付いた文化なのでしょう。
 
「良し悪し」はさておき、ミュージカルの現場に来た時に初めに驚いたのは、そこのギャップで、ミュージカルの現場は「決められたことをやる」という文化が色濃くありました。
 
ポジティブな捉え方としては、「決められたことに関しては、ものすごい精度でやりきる!」というところで、
ネガティブな捉え方としては、「決められたこと以外はやらない」といったところ。
 
個人的には、この文化が『新作』と相性が悪いと思っていて、「決められたことしかしない」も何も、「まだ、ほとんど決まっていない」のが新作です。
 
「照明がどう出るか?」は、照明さんは劇場に入るまで(厳密には)分かりません。
 
「歌声がどう響くか?」 「効果音と台詞のかぶりが、どこまで気になるか?」は、音のスタッフさんは、キャストさんに全力でやってもらわないと分かりません。
#なので
#申し訳ないですが練習から全力で歌ってくださいとお願いしました
 
そして、なにより、
 
「キャストさんが、そのシーンで、どんなネタ(技)を出せるのか?」を演出家は知りません。
 
「言われたことしかやりません」も何も、「あなたが何をできるか?を知らないのよ」という問題があって……とりあえず、いろいろ試してみないと分からない。
 
「そのスタンスだと、完成された作品を再現することはできるけど、新作はなかなか生めないんじゃないの?」という空気が蔓延していて 、
 
さらに根深い問題として気になったのは 、
 
「ディスカッションの準備が整っていない」という部分でした。
 
ここからが今日の記事の本丸です。
 

ディスカッションは、どこから生まれるのか?
 

まずは、「ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』の稽古現場では、今はもうガンガン意見が飛び交って、ディスカッションがおこなわれているから、こうして記事にしている」ということをお伝えしておきます。
 
ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』の稽古場では、
「ミュージカルの現場で、こんなに意見が飛び交う現場は初めてだ」
「いつもは、演出家がガチガチに決めたことをやっている」
という声を、よく聞きます。
 
そういった声を聞いて、最初は、ガチガチに決めてしまう演出家に対して、「もっとキャストやスタッフを信用して、任せるところは任せて、意見を出せる環境にした方が、作品にとってもプラスじゃない?」という疑問を抱いていたのですが、直後、
 
「これは演出家一人の問題なのか?」
 
という疑問が湧いてきました。
 
「演出家がディスカッションを放棄して、演出プランをガチガチに決めざるをえなかった背景があるのでは?」という疑問です。
 
そう思って、あらためて稽古場の様子を見てみると、その片鱗はありました。
 
それは、「意見に対して、リアクションをしない」という悪習慣です。
その意見が、
 
①「YES」なのか、
②「NO」なのか、
③「理解はできているけど、NO」なのか、
④「そもそも理解できていない」のか。
 
もちろん全員が全員ではありませんが、このファーストリアクションを甘く見積もっている人が少なくないことが分かりました。
 
意見を言われた時に、黙り込んじゃうんです。
もちろん、決してサボっているわけではなくて、黙って考え込んじゃうんです。
 
僕自身、意見をした後に、黙り込んでしまうキャストさんに対して、「今、何(ナニ)で詰まっていますか?」という質問を何度かしたことがあるのですが、「今、自分が①②③④のどの状態にあるのか」を相手に伝えないと、相手は次の代案を出せないんですね。
 
これは全てのチームが心得ておいた方がいいことだと思います。
 
「ディスカッションの一歩目は、リアクション」で、リアクションの放棄は、ディスカッションの放棄です。
 
そうすると、「もう、これをやってください」といった感じで、『決められたことをやる(指示待ち)の身体』か出来上がってしまう。
 
決められたことをやり続けた結果その身体になったのか、
その身体だから、決められたことしか回ってこないのか……卵が先か鶏が先か?的な話ですが、いずれにせよ、リアクションをしないと、ディスカッションは生まれません。
 
主演の吉原さんをはじめ、キャストの皆様や、パーカッションのYakoさんなどは…反対意見に対しても、まず一言目には間髪入れずに「OK」が出るんです。
  
「OK、分かりました。ならば、○○はどうでしょう?」といった調子です。
#最高
 
 良い作品や、良いサービスを作っていくには、ディスカッションは必要で、「ディスカッションに慣れていない(ディスカッションのルールを知らない)現場」は黄信号。
 
リアクションは「慣れ」です。
後天的なものです。
吉本興業は意見(指示)に対して一度でもリアクションをしなかったら、「どうぞ、お帰りください。あなたの代わりはいくらでもいるので」という環境だったので、そこは本当に鍛えられたのだと思います。
 
あなたのチームや、あなたはどうですか?
意見を言われた時に、①②③④がすぐに出る癖がついていますか?
 
もしかすると、日本人が最も苦手な部分なのかもしれません。
ただ、放置しておいてイイものでもないので、チームに「リアクション癖」が根付いていないのであれば、訓練した方が良いと思います。
 
現場からは以上でーす。
 
【追伸】
サロン記事の感想を呟かれる際は、文章の最後に『salon.jp/nishino』を付けて《本垢》で呟いていただけると、西野がネコのようになつく場合があります。
 
【追伸②】
主演の吉原光夫さんと終演後のトークのオンライン配信が決定しました。
もちろん、公演の映像付きです。
間違いなく面白いので、よかったら是非↓

 
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このnoteは2021年10月27日のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』への投稿をもとに作成しています。

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