分離派の夏(小袋成彬)
小袋成彬の「分離派の夏」を、文学作品を愉しむように聴いている。
小袋氏には、音楽という武器を手に入れた詩人というイメージを持っている。
このアルバムに関しては、どの曲が好きかと言うと、全部好き。全てにおいてこだわり抜いて製作したという意気込みが、伝わる。
改めて私が特に好きなのは、宇多田ヒカルとフィーチャーした、Lonely Oneである。
途中の宇多田ヒカルのパートが、控えめに聴こえる程なのだが、それもまた小袋氏の歌と絶妙に調和している。
イントロのネジを巻くような音からの独白の様な歌詞。
歌詞は、月がぽっかり浮かんだ砂漠に放り出された様な。
途中から印象的なバッキングからの、
〝まだ生き永らえている。
なぜ生き永らえている。
荒野で吠える。“
萩原作太郎の「月に吠える」の世界と通底するものを感じる。
この令和の時代に、「生き永らえている」と、畳み掛けるように歌うのも、斬新。
自分の内なる感情を美しい音楽に昇華させた、実験的な、どこか求道的な姿勢すら感じる。
Daydreaming in Guamのスタジオ録音が前は観れたけど今は観られない。
分離派の夏のMVで、今現在、YouTubeで観られるのはSelfish。
ギターのアルペジオと、バッキングの組み合わせから入る小袋氏の声が、一つの楽器のように調和している。
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