朝刊の記事から考える。「日鉄のUSスチール買収 トランプ氏「絶対阻止」」に思う。

トランプが日鉄のUSスチール買収を絶対阻止すると述べている。

現状無双しているトランプ氏が「阻止する」と発言したことによって日鉄としてはかなり厳しい状況になるだろう。

この買収の背景を改めて日鉄のホームページに掲載されているプレスリリースで読んでみると、もちろん日鉄の事業の拡大もあるし、カーボンニュートラル社会に向けて技術革新を進めるといった記載がある。

https://www.nipponsteel.com/common/secure/ir/library/pdf/20231218_100.pdf

ただ、プレスリリース後の米国内での反発や、今回のトランプ発言、さらに
現職のバイデン大統領からも色よい反応がない事を見ていると、今回の買収は宙に浮く、と思う。

トランプ氏の一連の発言は、もちろん日鉄としては面白くないだろう。

NHKの記事に依ると日鉄の橋本社長は

「鉄鋼業界で課題となる二酸化炭素の排出削減に関連し「両社の技術の強みを持ち寄ることで脱炭素を加速できる」

とも述べている。

筆者はトランプ氏にしても、あるいは現職のバイデン大統領すら、もう「脱炭素」を旗印に選挙を戦えるとは考えていないと思う。

印象論を入れつつ敷衍すると、最近の米国では、環境アクティビストとの先鋭化がまさに政治的な争点になりつつある。イデオロギー性を帯びた(もはや用語として使われなくなった)ESG投資への忌避感、石油やガスのパイプラインの建設認可を巡る対立、株主総会で発言権を強める環境アクティビストの存在など、経済活動がイデオロギー闘争の舞台となることが多い。

今回の日鉄の買収もそんな数多ある政治的争点の一つに矮小化されつつあるとも思う。「即座に阻止する」というトランプ氏の発言がその証左である。

ユーラシアグループが「米国の分断」をウクライナや中東を超える2024年の
トップリスクに上げる程、米国の分断は深い。目に見えるような戦火は無いにしても、一企業で負いきれるリスクではない。

仮に買収に成功したとしても経営的にも、政治的にも難しい局面は続くだろう。

呉製鉄所の閉鎖の経緯を見ていても感じたが、日鉄は細かな調整や交渉をしながら物事を進めるというよりは、良く言えば竹を割ったような、悪く言えば拙速に極端な事をしがちな企業と言う印象を持つ。

東芝が米国で致命的な経営上の打撃を受けたウエスチングハウス買収の二の舞にならなければ良いが、と願うばかりである。

参考文献)

1)NHK記事

2)ユーラシアグループHP

https://www.eurasiagroup.net/siteFiles/Media/files/Top Risks 2024 JPN.pdf

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