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金沢町家の契約を終えて、これまでの経緯と今の気持ちを忘れないうちにメモ(後編)

前編に続いて、これまでの経緯の記録。


2023年9月9日(土) 立町で物件を内覧

不動産屋のMさんに「いい物件ありました」とご連絡をいただいたので早起きをして新幹線で金沢へ。入るなり、美しい縁側に気がつく。小さいけどお庭まである。草ぼうぼうでよく見えないものの、立派な庭石や手水鉢、灯籠も置かれていて、きちんと手入れをすればすごく見栄えが良くなりそうだとウキウキする。


木製サッシに古い波板ガラスがはまっている。

そして前の持ち主がお茶関連?の仕事をしていた方らしく、すべての部屋に床の間がある、由緒正しい感じの作り。お世話になっている現地の建築家のRさんも「これはいいね!」と盛り上がる。

一階の和室


築年数は記録があるのは80年前なのだけど、押入れの中の新聞紙の日付は90年前のものだったので、少なくとも築90年は経っていそう。100年以上の可能性も?

押入れの奥に貼ってある新聞紙は90年前のもの。少なくとも築90年と判明


出会ってしまった、のか?

翌日、大好きな鈴木大拙館(物件から650メートル)で大拙先生とお話。(脳内で、ね)
大拙先生は「いいんじゃないですか」と言っているように聞こえる。

大拙館。小雨

ちょっと興奮状態で東京に戻りながら、新幹線の中で「これは、出会ってしまったかも」とお弁当にしてもらった寿司を噛み締める。エビが美味しい季節です。

歴々さんのセット。

大体は買えないあるいは買うべきではない理由が浮上してくるものなのだけど、特に何も思い浮かばない。

2023年9月16日の週 シロアリは、大丈夫?

「買うぞ」という気持ちはかなり固かったのだけど、ふと夜中に寝る前に思う。これだけ古い物件だと、基礎がシロアリで完全にダメになってたと後からわかってもどうしようもないんだよなということ。新築マンションの購入の際には10年(?)くらい売主に瑕疵担保責任があるけど、こんな築100年も経っている建物では、相手がよほど事実を秘密にしていたなどが明らかにならない限り補償をしてもらうことはできない。

不安になって現地の建築家のRさんに床下を見てもらえないか相談すると、「床を開けましょう!」と、不動産屋さん立ち会いのもとお付き合いの長い地元の大工さんと一緒に見に行ってくださった。

床裏を覗く大工さん
多少傷んでいるところはあるが、少し手を入れれば全く問題ない、とのこと


2023年9月23日の週 あれ?違法建築なの?

この週に発覚した(というか、多分私が気がつくのに時間がかかっただけ)事実としては、50年前に増築された部分が、一階の増築について確認申請は出ているものの、勝手に2階も増築してありそれについては確認済証がないということ。これは、町家あるあるらしく、もし住宅として利用するならあまり問題にならないようなのだけど、宿屋をやるとなると話が違う。違法建築となると保健所も許可を下せない。また、町家の補修に補助金をいただくつもりなのだけど、これも違法建築だと許可が降りないことが判明。どうする???と建築家のRさんと作戦会議の結果、「減築をして100年前のボリュームに戻そう」ということに。増築部分を壊しさえすれば、既存不適格になるのみ。床下を見た大工さんも、「この増築分は、壊してしたらいいがに」と仰っていたそうなので、そうしよう、と決める。増築部分にあったお風呂はなくなってしまうけど、なんとか既存部分に作る方法もお絵描き。

※既存不適格とは、今の法律ができる前のルールで見たら適法だから、新たに建てることはできないけど、このまま残すのはOKよ、という状態。

2023年9月23日の週 運営はどうする?

違法建築うんぬん、の話と並行して、宿屋の運営をしてくれる会社の方々とオンラインでお話をさせていただく。金沢には何社かあるようなのだけど、これまた非常に有用な情報を分けてもらう。やはり相場観や経験がある人の話はちゃんと聞かなくちゃいけない、と思った出来事。ここで理解が進んだことは;

  • 金沢市は厳しい。ホテル・旅館がロビー活動をして、民泊を規制するように政治家に働きかけていて、それもあり消防や民泊のルールが他県に比べるとかなり厳しい。たとえば24時間かけつけられる運営社が5キロ圏内にいないといけない、など。(でも運営代行に頼めばなんとかなる)

  • 外国人客をできるだけターゲットにした方がいい。金沢に来るような外国人はマナーがよく、ドタキャンも少ないらしい。

  • 駐車場があるのはかなりプラス。他県から車でくるファミリー客が狙える

  • 宿泊キャパシティは多い方がいい。当初は4人でいいと思っていたのをこれで6人に拡大する想定に変更


2023年10月1日 無事契約

この日は不動産屋さんのオフィスで契約。重要事項説明書の読み合わせなど2時間たっぷりかかった。夫との共有名義などでない、自分だけの名前で不動産を買うのは初めてでなんだか大人になった気分を味わう。金沢はコンパクトシティ構想がきちんと進んでいるのだな、とか色々勉強になる。

歴々さんのお弁当。巻物をアップグレード

契約はお祝いに値するよね、と思って、巻物をトロタクからノドグロにアップグレード。美味しい。

ここから宿屋としてオープンするまで2年近く(あるいはもっと?)かかってしまうと思うのだけど、一つずつのステップを楽しもうと思う。特に建築家のRさんとこんなに濃厚な議論や意思決定を一緒にしていけるのかと思うと、それが貴重すぎて、出会えてよかったと小躍りしてしまう。

最後にこれは自分への宣言で。

このプロジェクトは家族や関わる人に迷惑をかけないようお金に破綻がないようにするつもりだけど、これから思いがけない障壁みたいなものが出てきてもつまらない判断をしないようにしたい。(お金だけで合理性を追求するとか)突き詰めていくと、私が何のためにやるのかって言ったら、これは美しいものを発掘するという探検であり、壮大な遊びだからね!


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