赤身か白身か −好きにならずにいられてよかった〈1〉

完全にノーマークな男子が崎陽軒のシウマイ弁当について語り始めたときだった。

「シウマイ弁当っていったら俺、シウマイじゃなくてアレが好きだな〜」

なになに?  “特別な嗜好を持つ俺”アピールかしら、聞きましょう。

「なんだっけなアレ……」

わかってる。キミだけじゃないよ、皆んな好きだよ。アレでしょどうせ、杏(あんず)!

「なんていうんだっけ〜」

だから杏で……

白身魚!

しょ!?!?!?

「なんか入ってるじゃん〜魚を焼いたか煮たかの、切り身。アレ好きなんだよね〜俺」

そこ? 回答さえノーマークだった男子の魚好きな一面。してやられた。しかもなんか、悔し嬉しい。だってそれ、私もシウマイ弁当の中で一番好きな具だよ!

好感しか湧かなかった。完全ノーマーク男子が、食の好みが合う完全”好感触”男子に変わった瞬間だった。

でもそれ……マグロの照り焼きだから正確には、赤身魚なんだよね。

そういうところってどうなんだろう…… 豚肉とマグロ肉を間違えたり、トリュフを焦げたローストポテトだと思って皿の端っこに残しちゃったりしない?

や、ホントはそんなことどーでもいいの。あなたがおいしいなら私もうれしい。でも……引き返すなら今、だろか。好きにならずにいられるなら、今?

だって、食に関しての意識差はいずれ、二人の関係に大きなひずみを生むに違いないんだもの。(「ガストでいい?」男子発言ノート18参照)

これは……シウマイ弁当だけに、ここでオシ(ウ)マイ!

そんなふうにいつも、好きにならずにいられる理由を探してホッとしている。
好きになってもらえるはずがないから、と傷つく前に早々に退散。
ホントはどーでもいい理由にかこつけて。

好きにならずにいられてよかった、恋に落ちてもよかった瞬間―。



マジですか(男子発言ノート8より)
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大島智衣

好きにならずにいられてよかった

【連載エッセイ】好きにならずにいられる理由を探してホッとしている。好きにならずにいられてよかった、恋に落ちてもよかった瞬間―。
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