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アップルパイ

  アップルパイは高校生ぐらいから、年に一度はつくる。それは、作りたてが一番美味しいからだ。ケーキ屋さんでたまに買ってみたけどイマイチだった。どんな名店のものも、焼き立てにはまけるので、もう探すのがめんどくさくなった。もちろん、作りたてを食べさせてくれるのなら別だけど。いわゆるアメリカのホームメイド系のお菓子って、そういうものが多い。レモンパイもそうで、フルーティな酸味が半日もするとにぶくなる。元々酸味をきわだせるために砂糖をたくさん使うので、時間がたつと甘ったるくて食べられない。今、レモンパイが日本でほとんど売られていないのは、そのためだと思う。これも好きだったので、田舎で住んでいる今、新鮮なゆずが簡単に手に入るので、アレンジして結構作るようになった。ただ、カルフォルニアで発展した、レモン風味のカスタードクリームをのせたパイなので、冬はいまいちだ。だから、やっぱり熱々のアップルパイがいい。新鮮なくだものとそして手間をかけ、できたてなら、しろうとでもそこそこおいしくできる。昔はリンゴの砂糖煮をつくり、練り込み式のパイ生地を作っていたが、長い経験で簡単に作れるようになった。まず、デパートの系列スーパーで買った上等めの冷凍パイシートを冷蔵庫でゆるめ、その上に小さく切ったフレッシュなリンゴの薄切りとおさとうとたっぷりのシナモンとコーンスターチを混ぜたものを載せ、パイシートで蓋をして、高温のオープントースターで焼く。コーンスターチの量が大切で、とろっと、リンゴから出た果汁をでんぷんで閉じ込めるのだ。レモンパイもそうだけど、ブログで知った「カルフォルニアばあさん」と名乗るアメリカ人と結婚した日本女性のレシピを参考にしている。日常的なおやつ作りがしぶいのだ。

 もともと、大学生のころ寮に住んでいた友人たちに喜んでもらい、毎年あてにされたのがうれしかったのが、作り続けるきっかけだった。狭いまないたで、やっとこさ作ったパイ皮でよく喜んでもらったと感謝だ。東京の某パン屋さんで、手作りで何十回もおったパイ皮だけにお砂糖をかけた焼いたのが八百円ほどするのに驚いたが、パイ皮はむずかしい。機械でおりこんだ皮がよくできている。しかし、なぜ、そんなにアップルパイにこだわるのかと思うと、私が小さい時、母が作ってくれた焼き林檎が原点だと思い出した。それを母に言ったことがあるが、あんな貧乏くさいものがよかったのかと、きょとんとされた。私も人に言われて、そういったことがあった。人にしてもらってうれしいことって、さりげなくて、そのひとにとっては大したことではなかったりする。それが愛の醍醐味なのだろうか。

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