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私が好きな映画 時代の気分

まだ、若い頃はお金がなくてめったに映画は見れなかった。しかし、好奇心が強いからだろう、話題の映画はけっこう映画館で見ていたのに驚く。

その一つで大好きなのが市川崑の「犬神家の人々」。斬新で面白かった。美しい湖のほとりにたたずむ美女と怪奇な下男。そして、心のねじくれた美人姉妹。そして、おどろおどろしい老人の呪いの遺言書。なにより、フォントの美術的なセンス。市川崑がアニメ監督出身なのが分かるレタリングの美しさ。のちに庵野秀明が真似したのがわかる。そして、何より切れの良い編集。映画の美のすべてがある。

 それが豊かな時代ののんきさで作られたのがいい。あの時代は日本はどこまでもいけるんじゃないかって錯覚できた。その物見遊山なホラーも楽しみたいっていう多くの人を引き付けたんだろう。あの映画をリピートするとその気分がよみがえってくる。だから、皆覚えていてスケキヨはギャグになっているんじゃないかな。

原作の金田一耕助シリーズは娯楽に飢えた戦後すぐに量産されていて、希望を底に戦争のむごさを秘めていた。野火、ビルマの竪琴といった作品を描いた市川崑の戦前の社会への怒りと戦後への混乱への思いと一致していて、楽しい娯楽だけではない憂愁をひめてるのがよいのだな。

しばらく、好きな映画について書いてみます。


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